第十五話 三度目の再開……
私とリーフにシャインズのカイとスバル、そしてジェットと共に幸せ岬にあのバクフーンを捕まえに向かったわたし達なんだが……。
「だったらなんでさっさと言わないのだ!!」
「そっちが勝手に進んでいくから落ちるんでしょ!!」
さっきジェットが崖から落ちたことをまだ引きずってたのかスバルと不毛な口喧嘩を始める始末。まぁこの2人は性格からして会うことはないだろうと思ってはいたのだが……。
「2人共騒いでないで気をつけてよ。そんなに騒いで敵が来たら……」
といい争いの仲裁に入ったのはリーフだ。止めに入ったまではよかったがそう言い切る前に--
「あっ…………」
--いわんこっちゃない。私はお前が気をつけろと言いたくなった。なんとまぁ奴はモンスターハウスに足を踏み入れてしまったのだ。さっきまで喧嘩していたジェットもスバルも、そして喧嘩を傍観していた私もカイもため息を吐いた。
「リーフ……」
「ははははっ……。ごめんちゃい♪」
ごめんちゃいで済むか!!このバカモン!!ったく……。私はリーフにモンスターハウスの処理を一人だけで命じた。
「でもスパークさん、リーフさんでもあれだけの数を相手にするのは……」
そうフォローしたのはカイだ。リーフとは今日会ったばかりなだけに心配そうな目で彼女を見ていた。だが私は心配するなと一言だけ添えて敵の方に視線を移した。ナッシーにノクタスといった草ポケか……。
「さって、軽くもんでやりますか!」
「軽くって、これだけの数をどうやって?」
確かにメガニウムは普通なら同族に決定打を持たないうえに全体攻撃を持っているわけでない。スバルの疑問も普通ならそう感じてもおかしくはないだろう。普通ならな。と、そう思っているとリーフの口に赤いエネルギーが溜まっていった。
「めざめるパワー!!」
その叫び声と共にリーフの口から勢いよく灼熱の炎が発せられた。めざめるパワー!!の炎はあっという間に敵を飲み込んで一瞬にして全滅へと追い込んだ。
「よっし!!」
「ねぇお父さん。メガニウムって普通炎技は使えない筈じゃ……」
どうやらスバルはめざめるパワーを知らんらしいな。スバルの隣のカイもその理由が分からないのかどこか納得がいかない様子だ。
「めざめるパワーは使用者によってタイプと威力が変わる特殊な技だ。リーフが使うと炎タイプになり通常メガニウムがつかえない炎技をあいつはそれで操ることができるんだ」
成程といった様子で2人共納得がいった様子だ。
「もう解説は終わりでいいか!!さっさと向かうぞ!!」
全くせっかちな奴だな。私達はせかせかと進んでいくジェットの後を追った。
しばらく進んでいったが奥地にはまだたどりつかないようだ。はぁ……ちと疲れきたな……。
「大丈夫スパークさん?」
隣でいたリーフがそう気遣ってくれた。いや、ある程度はお前のせいでもあるからな?
「フン!!そんな年食ったネズミが粋がるからすぐにバテるんだろうが--
--隠れろ!!」
いつもの嫌みを愚痴たれるのかと思いきやジェットが唐突に私達を草陰に隠した。な、なんなんだいきなり!?
「ど、どうしたのジェットさ--」
「黙っていろ!!」
小さくも鋭い声がカイの問いかけを強引に制する。するとジェットは見ろといわんばかりに視線を変えた。
「あ、あいつは……!!」
私はリーフと同じようなことを心の中で口にした。まさか本当にバクフーンが潜伏しているとは……。
「もしかしてあいつが……」
「あぁ、散々言っていたあいつがあのバクフーンだ」
「そ、そんな……」
改めて目視してからかまた2人とも信じられないような顔をしていた。そのバクフーンの顔つきは見るからにお尋ね者のそれをなっていたからな。
「よし、奴はまだ気がついていない。今のうちに奇襲をかけるぞ」
いつの間にか指揮をとっていたジェットがこう提案。全員がジェットの提案に賛同し作戦を立てようとした時であった。
ガシッ!!
「うぐぅっ!!」
突然首を締めつける感覚と共に私の体が宙に浮いた。その正体を確認するとバクフーンが私の首根っこを掴んでいたのだった。
「……愚か者め。私がお前達の気配に気がついていないとでも思ったのか」
「……身代わりか」
なんてことだ……。まさか私達が確認していたのは身代わりだったとは……。気がついた時は時すでに遅くまんまと術中にはまってしまった。
「ぐっ!!」
首を掴まれたまま奴は私を地面に勢いよく叩きつけた。
「このっ!!」
「いいのか?こいつがどうなっても」
私を助けようと飛び込もうとしたリーフだが人質をとられてか足を止めた。くそっ!!こんな時に足手まといになってしまうとは!!
「探検隊め……悪いが邪魔をされる訳にはいかないのでな。そこで大人しくしていることだな」
「それは……おことわり--だッ!!!」
私は体から大粒の水滴を数発飛ばし奴の目に上手く当てることができた。ぐっと呻き声をあげたバクフーンは私を拘束した手を反射的に離し拘束から逃れられた。
「大丈夫お父さん!?」
「あぁ大丈夫だ。すまない」
私が解放されたこともあってかリーフ達はすぐにでもバクフーンに攻撃をする準備にはいっていた。対照的に焦った様子のバクフーンはさっきまでの冷静な態度を変え、焦った様子できょろきょろしていたがすぐにニヤリと口元を釣り上げた。
「--!!」
あいつっ!!今度はスバルを人質にとるつもりか!!どこまでも卑劣な奴めそうはさせんぞ!!
「リーフ!!」
「わかってる!!」
ガブリ!!
「ぐわあぁっ!!」
噛みつきの音とバクフーンの呻き声が耳に入った。狙われてか構えていたスバルもその光景を見て驚きを見せていた。
「貴様はジェット!!なぜ探検隊の味方をする!!」
さっきまでいがみ合っていた筈のスバルをジェットがかばうように立っていた。バクフーンの右手はジェットの牙にキッチリととられられていたからだ。
「ケッ、確かに俺は探検家は嫌いだが貴様のような姑息な悪党の方はもっと嫌いなんだよ」
「おのれ……!!」
必死にジェットの噛みつきから逃れようと腕を振り回すバクフーンだがジェットの方が力では上回ってるからか振りほどくことを許さなかった。
「そぉらよっと!!」
バクフーンをくわえた状態でジェットはそのまま体を振り回してその勢いでバクフーンを投げ飛ばし、壁に叩きつけた。投げられたバクフーンはぐぅっと声を漏らして上半身を起こす。
「小癪な真似を!!これでどうだ!!」
バクフーンが掲げたあの玉は不思議玉か!!その掲げた不思議玉は光を発し、私達は目を瞑った。そして光が止んだ時にはさっきのモンスターハウスさえも凌駕するほどの数のポケモンに囲まれてしまった。
「バクフーンめ!!手下のポケモンを呼びだすとは卑怯だぞ!!」
「けっ!!卑怯も妥協もあるものか!!お前らにかまってる暇などないのだ!!」
まずいこのままでは奴を取り逃がしてしまう!私もリーフも焦りを隠せないところに--
「何をしている!!さっさと行け!!ここは俺がカタをつける!!」
「えっ!でも……!!」
先ほどジェットに助けられたスバルはまたも驚いた様子だ。勿論私もだ。こんな大勢をジェット一人でまかせるなんていくらなんでも無茶だ!!
「行かなきゃあいつを取り逃がした無駄になるまでだ!雑魚共の気は俺が引くからその隙に行け!!」
…………。そうは言っても一人だけ置いていくのか……。特にスバルは前にもこんなことがあったのか複雑な表情を隠せなかった。
「わかった。ここはジェットに任せるわ」
リーフ!?だが確かにここで奴を逃がしたら元も子もない。一瞬は迷ったがジェットの考えに同意した。
「おらぁっ!!冷凍ビーム!!」
ジェットの放った冷凍ビームは手下のポケモン達を散り散りに分散させた。その隙をついた私達は逃げたバクフーンを追いかけていき、上手くその場にはジェットと手下たちだけとなった。
「さぁて……久々に暴れてやるか!!」