ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第一章 英雄祭編
第十四話 襲来……?
自らの計らいによってシャインズの2人を我が子として受け入れたスパーク。いまなおも続いている英雄祭のお祭りを堪能させるために子供達に食べ物をおごっている。無論それはスパークにとっても望んでいたこと--の筈だった……。

「ん〜次はあれとそれとこれかな〜」

数え切れないほどの食べ物を抱えているのは現状ではスパークの子供かどうかきわどいラインのリーフだ。

「す、すごい……」

その底知れぬ彼女の大食いに初めてみたシャインズの2人は驚きのあまり口を開け--

「ったくよくそんなに食えるもんだぜ……」

そしてなんのことはないファイア、ウォーター、ルッグの3人はあきれ果てた様子で--

「…………」

彼女の父親(?)のスパークは最早涙目でそれぞれリーフを傍観していた。そんなスパーク以外にとっては極めて平和に英雄祭を堪能していたスパーク一家。--だが

「た、たいへんだああああああぁっ!!」
「--!?」

その平穏な空気を台無しにしようとせんばかりの悲鳴と共に見ず知らずのポケモンが周りのポケモンに伝えるように走っていった。その瞬間カイ達シャインズの2人はピクリと眉を潜めた。まるでこの騒動の主を知っているかのように。

「どうしたんですか?」

到底嫌な予感しかしていないメンバーだがルッグはつとめて冷静に状況を知ろうと尋ねた。しかしその冷静さとは対照的に走り回っていたポケモンは慌てる様子を隠すことはない。

「どうしたもこうしたもんじゃねぇ!!あんたらも命が惜しくなかったら早くここから離れろ!!


うわあああああああぁっ!!」

慌てふためくばかりにハッキリと説明はせずにそのポケモンは逃げていった。

「--イ、イーブル……」
「な、なに!?」

若干震えたような至近距離でも聞き取れないような声でカイの声が発せられた。リーファイにとっては聞いたことのないワードに首をひねる。

「何?進化ポケモンがどうしたの?」
「リーフ……そりゃイーブイだろ……」

不穏な空気でもお構いなしにリーフのボケが発動。何度目か分からないあきれ顔と共にウォーターが突っ込みを入れた。

「とにかく行ってみよう。敵襲なら放っておけはできない」

スパークの一言で彼以外の面々が頷いた。客たちの騒ぎ声からその騒ぎの元がどの方角にあるかを想定するのは難しくはなかった。全員がスパークの一言で動き出す。

「行くぞ!!」
「あっ!!でもリンゴ飴が〜!!」

訂正しよう。ただ一人リーフは駄々っ子のように食べ物を欲し、その場から微動だにしなかった。こうなってた彼女は言って聞く程質はよくない。スパーク質6人は総出で彼女を腕づくで連れて行こうとするが……。

「うぐぐぐぐぐっ……!全然動かねぇ……」
「メ、メガニウムってここまで重かったっけ……」

テコでも動かないリーフに彼女の扱いに手慣れてる筈のウォーターと反対に全くの初対面であるスバルも苦悶の声をあげた。6人がかりでも引っ張っても微動だにしない。

--だがききなれた声が彼女を突き動かした。



「ガハハハハ!!相変わらずの間抜けっぷりだな!!リーフよ!!」

きいただけで本人が悪者と感じられる声に一同が振り向いた。そこにいたのは濃い青色と白色を基調としたサメのような風体のポケモン、サメハダーとその背後には手下らしきポケモンが大勢でスタンバイしていた。

「よぉ……久し振りじゃねぇか……」

ギロリとサメハダーらしい獰猛な目つきでリーフ達を睨んだサメハダー。そんなサメハダーを見て恐れているお祭りの客人達の様子から騒動の仕掛け人はこのポケモンと見ても間違いはない。しばらく真剣な顔つきの後リーフは--

「な〜んだジェットか〜!!おどかさないでよ〜!!」

リーフのとった言動は周りの客人、そして驚き恐れていたシャインズの2人からは想像もできない行動をとった。満面の笑みでジェットと呼ばれたサメハダーに近づき彼の頭をなれなれしく蔓でなでていた。これもリーフのボケかと危惧したスバルはファイア達の方に視線を移す。

「も〜、脅かさないでよジェット〜」
「僕なんかてっきり本当にお尋ね者が来襲したのかと思いましたよ〜」

彼女にとっては、否カイにとっても想像もできない光景を目の当たりにしてしまった。周りが恐れているこのサメハダーにリーフと同じようになれなれしくする始末だ。

「ちょ……ちょっと待ってお父さん!!」
「ん?どうした?」

すっかりお父さんと呼ぶのに手慣れたことはさておき、慌てふためくスバルとは対照的にスパークはなんのことはない様子で返した。

「なんでお尋ね者なんかと仲好くしているの!?」
「お尋ね者!?あいつが!?」

そのスパークの反応は信じられないの一言であった。リーファイにとって今のジェットは協力関係にある割には彼らはジェットのことをよく知ってはいない様子である。

「カイ!!お尋ね者ポスターを!!」
「う、うん!!」

スバルに促され、カイは自身にかけていた探検隊バッグから大量のポスターを取り出した。彼が”あった!”と一枚のポスターを掲げるとスバルがひったくりそれをスパークに手渡す。

「な、なにぃ!?」
「マジかよ!!」

--お尋ね者ジェット 大型悪の組織の重鎮で凶悪。逮捕の際はお気をつけて

ランク ☆5--

「う……うそ……!!」

それなりに関係が深いリーフは彼の(本人にとっては意外な面)を垣間見、ポスターを凝視していた。

「けっ!!そんなことはどうでもいいんだよ。おいそこのリオルとピカチュウのガキ共。ききたいことがある」
「むっ……」

ジェットのそのふてぶてしい態度、そしてお尋ね者という点からスバルの表情が一気に曇った。

「悪いけど私、そんなお尋ね者なんかに強力するほど臆病じゃないから」
「ほぉ……、だったら--」

プイとそっぽを向くスバルにジェットを口元を釣り上げた。そして--



「--こうしたらどないするんじゃおらぁっ!!!」



ドンガラガッシャーン!!



ジェットが力任せに近くにあった屋台を手当たり次第に壊し始めた。周りの傍観していたポケモン達はひいぃ、と恐れの声をあげるまたその場から逃げだすなどジェットのことを一層恐れていったのは目に見えていた。だがスバルは恐れることはなく既に得意技”十万ボルト”を打つ構えをとっていたのだ。

「やろうってのか?あぁ!?いっとくがこんどはさっきみたいにはいかねぇからな。御前らもそのうちあのガレキのようにな………




--あ、あれぇ?」

ジェットの脅すような口調が一瞬にしてお尋ね者とは程遠い間の抜けた口調へと豹変した。なぜか。その答えはリーファイもシャインズにも見て取れた。その原因は--






--ジェットの部下達が彼によって壊された屋台を修復していたからであった。ジェットは慌てて部下を呼びもどす。

「なにしとるんじゃお前らは……!!」
「えっ?だってジェット様いつも来た時よりも美しくと言っていたじゃないですか?」

問い詰められたジェットの部下の一人、ドラピオンのラオンがそうジェットと同じような小声言い放ったのだ。しかし残念なことにそれらはすべてリーフ達にはまるきこえ。

「アホか!!それはトイレ掃除の話だろうが!!いま我輩はあいつ等をビビらせようとしているんだろうが!!」
「えっ!?そうだったんすか?」

小声で話していた筈がすっかり大声となってしまい周りには丸聞こえである。ジェットにとっては狙ったとしか思えないが部下達、少なくともラオンは真剣に片づけなければならないと思ったようだ。”あぁ……”と頭を抱えるジェットを見てリーファイ一行はケラケラと笑っていた。あからさまに馬鹿にされたジェットとその部下達はというと--

「全くどこまでも役に立たない奴らめ!!ひっこんどけ!!」
「じゃあお祭り楽しんで来ていいっすか?」

このありさまであった。"勝手にしろ!!"と許可され(怒鳴られ)た部下達はイトマルを散らしたかのごとく走っていった。この場に居合わせているお尋ね者はジェット一人だけ。

「で、何しに来たの?お祭り楽しみに来たの?」
「んな訳あるかバカタレ!!」

あいつ等と一緒にするなといわんばかりの猛反論。観光とか旅行とか好き勝手に言い続けるリーファイにジェットは--

「これを聞いてもお前らはそんな口が叩けるのか……。







あのバクフーンの情報でも……!!」
「--!!」

散々ジェットを馬鹿にしていたリーファイの面々、特にファイアの顔つきが一瞬にして硬直した。話について行けないシャインズは困惑している。

「ど、どうして兄さんのことが!!」
「フン!!んなもん知るか!!あの野郎が幸せ岬に逃げ込んだって情報が入ったんだよ」
「ちょっと待ってください!!ファイアさんのお兄さんって……ウォーターさん以外にもいるんですか!?

これまで置いてけぼりにされていたカイも黙っていられずに口を開いた。そんな彼にリーフが憂いさえをも込めた表情で答える。

「ファイアにはね……、血のつながったお兄さんがいるの……。でもそいつはジェットと組んでいたお尋ね者、わたしとファイアはあいつに殺されかけたこともあったわ……」
「そ、そんな!!」

つい先ほどまでスパークに家族のぬくもりを説かれたカイにとってはあまりにもショッキングなことであった。血のつながった兄弟に訳も分からずに狙われている。それが信じられなかった。

「そしてあいつは仲間のジェットさえも裏切った……。だから今わたし達はジェット達と同盟を組んであのバクフーンを追いかけてるのよ」
「…………」

あまりに悪逆非道なバクフーンの行いに絶句するカイに対してスバルの脳裏にはスパークの言葉が一瞬脳裏に浮かぶ。




--血こそは繋がっているのにまるで他人のような……いや、そんなもんじゃない。敵対している関係の者たちを……な……。私はそんな奴を家族とは呼びたくない……--




(あの時お父さんが言っていたこと……。あれってファイアさんとそのバクフーンのことだったんだ……)



きいた時は訳が分からなかったがなぜスパークがあれほど真剣な顔で話していたのかそれがようやく気がついた。

「兄さんは組んでいたジェットまでも裏切っていったんだ……。どうして……」
「…………」
「……言うな」

実兄のことを告げられて泣きそうな顔でファイアが口を開いた。到底誰も口を開けられない状況で小さくジェットがそう告げた。だがファイアの涙と口が止まることはなかった。

「あれだけ優しかった兄さんが……どうし」
「もう言うんじゃねぇ!!」

言いきる前にジェットに怒鳴られてビクリと体を震わせたファイア。彼の言うとおりファイアはそれ以上は何も言わなかった。眉間にしわをよせてチッと舌打ちをしたジェットを見てスパークは視線を彼の子供、カイとスバルへと戻した。

「お前達がお尋ね者と知ってジェットに協力するのは不本意かもしれない。だが今ファイアが、わたし達の家族がこれだけ苦しんでいるんだ。だから頼む、こいつに協力をしてやってはくれないか?」

頼みこむスパークの表情は真剣そのものであった。今までジェットを睨んでいたスバルもお尋ね者の襲来に警戒していたカイもリーフに抱きかかえられて泣いているファイアを目の当たりにし決心した。

「うん……お父さんにそこまで頼まれたら断れないからね」
「弟をそんなに痛めつけるなんて!!そのバクフーン許せないよ!!」
「本当か……」

快く承諾をされスパークの顔が少しだけ晴れやかになった。だがここまで快く承諾したのも父親に頼まれたこともあるが2人にはジェットに対する警戒心が少しずつ薄れてきたのが目に見えていたこともあった。

(あのジェットってヒト……そんな酷いポケモンには見えないなぁ……)

ファイアがとても辛そうな顔をして実兄のことを話した時もそれを制した。その時からどうにもカイにとっては疑問に感じていた。このヒトは本当にお尋ね者なのかと--

「よし!!なら決まりだ!!お前達!!さっさと幸せ岬に案内しろ!!」

--と思っていた瞬間このふてぶてしい口調であった。またスバルの表情が曇り頬袋からバチバチと電気を溜めていた。しかし今度はじゃれあいに近い、どちらかと言えば和やかな雰囲気であった

「ウォーター、ルッグさん」
「な、なんだ?」
「わたし達、バクフーンを捕まえてくるからファイアを見てあげて」

今の今まで彼女の胸元で泣きじゃくっていたファイアがぐしょぐしょな顔でリーフを見上げていた。

「リーフ……僕も行く……!!」
「ダメ。ファイアはここで残っていて」

口調こそは穏やかであるがそう口にしたリーフにはどこか今までめったに表さない厳しさが目にとれた。遠まわしではあるが彼女は”足手まとい”と伝えていた。

だが行くといっていたファイアは留守番に反論はしなかった。否、反論できなかった。自分が言っても足手まといになることは十二分に自覚していたからだ。渋々彼は首を縦に振った。

「心配すんなファイア。あの野郎は我輩がキッチリフン捕まえて落とし前をつけてやっからよ」
「なんだ、ジェットにしては妙にやさしいじゃねぇか」
「だまってろ水亀。斬り伏せるぞ」

凶悪なお尋ね者という名目から想像もできない優しい声でファイアを慰めたかと思えばウォーターに対しては辛辣な言葉を吐いた。”んだとぉ!?”と怒るウォーターをスルーしてジェットは悪態を吐いて後ろを向いた。

「もたもたすんな!!とっとと行くぞ!!」
「あぁ!ジェットさん!!」

カイが呼びとめるもジェットはお構いなしに先に進んでいった。すると一瞬にして彼の姿が消えた。


「そっち崖なのに……」


勢い余って崖から落ちていったジェットの悲鳴と共に水しぶきが上がっていった。リーフ、スパーク、ジェット、そしてカイとスバルがバクフーンを捕まえるために幸せ岬に向かったのはあれから30分かかったとか

ノコタロウ ( 2012/10/28(日) 20:01 )