ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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第一章 英雄祭編
第十一話 二児の父親から……
英雄際の見どころでもあるバトル大会。リーダーの身勝手で参加させられたターマンマンズも4人もそれなりに順調に勝ち進んでいっていた。その頃--




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「多分あいつ等のことだ”バトル大会でるぞ〜!!”な〜んて馬鹿なノリでバトル大会に参加しているかもな」

少なくなるということを知らない群衆の中を歩いている2人のピカチュウ。そのうちビール缶を片手に所持しているピカチュウ、私はあの大食い馬鹿リーダー(リーフ)の声真似をしながら唐突に呟いた。

こんなことを言いだしたために私とスバルはリーフ達がいる大会会場に向かっていた。そんな時何のことはない雑談が繰り広げられていた。

「ほぉ……スバルも探検隊だったのか……」
「もってことはスパークさんも!?」
「あぁ……。そうだオクタン焼き食うか?」

既に食うかと言い切る直前でスバルが”やった!!”とバンザイの如く喜んでいた。私はその姿を昔の息子(ファイア)に重ねて見守りふっ自然と笑みがこぼれたのが自分でもわかった。

でも例によってオクタン焼きの店にもさっきの綿あめのように行列があった。仕方なしに待つことにしていた私達だが不意にスバルが口を開けてきた。

「スパークさんとはぐれたのってさっきの探検隊の……」
「あぁ、仲間であって----家族なんだ」

”家族”そのワードの時だけ不自然に力が入ってしまった。それがスバルにも見て取れたのか彼女は首をひねった。

「で、でもメガニウムもマグマラシもズルズキンも種族が違うんじゃ……」
「まっ、そう思うよな」

このヒト酔ったの?って視線をスバルから投げかけられた。--笑いながら言ったことがそんなに不自然だったのか?おっともう列の前のヒト等はいなくて既に眼前には店主のオクタンがせわしそうに八本の足を動かしていた。

「オクタン焼き二つ頼む」
「へいまいど〜!!」

私は店主にポケを払ってオクタン焼きを2つ受け取り、1つをスバルに手渡した。スバルはお礼を言いながら嬉しそうに口にする。よほどこの祭りが楽しみだったんだろうな……。

「--家族の定義って……一体なんだろうな」
「えっ?」
「一般的には血がつながっているのが家族の条件みたいなことがあるんだが……それはおかしいと思うんだ」

唐突にこんなこと喋り出したもんだからスバルもついていけない様子だ。でも私の口は止まらずに開け続ける。--そのうち酔ってるって言われそうだな。

「今の私の子供はあのマグマラシとカメールの2人だ。無論血のつながりなんてないがあいつらは2人共私を父だと呼び、認めてくれている。そんな子供達を精いっぱい愛して守ってそして育てていく他に親として何がいるのだ?血のつながりは必須条件なのか?」
「す、すいません……よくわからないです……」

柄にもなくペラペラと喋る私にスバルは戸惑いというか狼狽というか……。とにかく言った通り訳のわからない様子だった。

「私は以前に見たんだ。血こそは繋がっているのにまるで他人のような……いや、そんなもんじゃないな、敵対している関係の者たちをな……。私はそんな奴を家族とは呼びたくない……」

ファイアとあのバクフーン。私の脳裏には脅えるファイアとそんな彼を本気で攻撃しようとするバクフーンのことが浮かんだ。--くっ……。

缶ビールを持つ左手に力が入り押しつぶされ、あやうく中身が漏れそうになった。

「ど……どうして?」
「簡単なことさ。子供たちは私を本気で父として認めているからな。たとえ誰に血がつながっていないとかいわれても私は父親をやめる気は毛頭ない。もしやめる時といったらそうだな……




あいつ等の方が”このヒトが本当の父親だ”って言った時だけだな」
「よっぽど信頼しているんですね……」

--バクフーン。お前にいずれはファイアの”家族”を名乗る資格がないことを……。いずれ分からせねばな……。

「うぅっ……!!」

な、なんだ!?いきなりスバルが頭を抱えてよろけそうになったが……。

「お、お母さん……」
「--ん?」

お母さん?も、もしかして知らず知らずのうちに踏み込んではいけないテリトリーに入ってしまったのでしょうかワタクスは?

----ってなんか慌てのあまり妙なことを思ってしまった。しかしワタクスってなんだよワタクスってよ。

「いや、違うんだ!!別にそんなつもりでいったわけじゃなくてだな!!」
「えっ……?」
「ととととと……とにかくだ!!一旦泣きやんでくれないか……。ここじゃ人目が激しい……」

気がついたらスバルはボロボロを涙を流していた。これって完全に傍から見れば私が泣かせたように見えるよな。うっ……!!周りからの視線が痛い……!!

「うっ……、どうして……!!止まって……!!」
「とりあえずこっから離れようか……」

嗚咽のせいかうまく言葉が紡げられないスバルを私は半ば無理やり引っ張るように連れていった。あぁ!!見るな!!ワタシは何も悪くない!!そんな非難を込めたまなざしで見るんじゃない!!


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「だ、大丈夫か……?」

祭りのヒトざかりから少し離れた私とスバルは屋外用のテーブルに腰かけていた。今気がついたんだがずっとスバルに顔を埋められていた私の体は涙やらでぐしょぐしょになっていた……がそれも気にしていられなかった。

「はっ……はい」

どうやら落ち着いたのか今度はしっかりとした返事を聞くことができた。

「さっきは済まなかったな。いきなり変なこと言ってしまって--」
「いえ、!!違うんです!!決してスパークさんのせいじゃ--」
「ど、どゆことだ?」

ん?私が変なこと言ってからトラウマでも思いだして泣き崩れたんかと思ったが……。

「わ、わたし……実は記憶喪失なんです」
「あぁ、成程。記憶喪失……





ってはいいいいぃ!?」

驚きのテンプレともとれる反応を反射的にとってしまった。そう言えばリーフが元人間だと聞いた時もそんな反応とっていたな。

「さっきのスパークさんの話を聞いていたら記憶が一瞬だけよみがえってきて……それで……」
「涙が出てきたのか……」

スバルが言うには何も書かれてない墓標にて泣く女の子に誰かが肩寄せをしている光景だったとのこと。それで泣き崩れたのか……。

「そう言えばさっきスバルは”おかあさん”って言っていたんだが……覚えていないのか?」
「わ、わたしが……?」

う〜む、その様子だとたぶん無意識のうちに呟いたんだろうな。ひょっとして私の話が引き金になって突発的に思いだされたのかもしれん。

「私……もしかしたらお母さんが死んだ時って、こんなに悲しかったのかなぁ」
「…………」

----私は無言で飲み終えたビール缶を近くのくず入れにポイっと投げ捨てた。うっし入った。ビール缶を投げ捨てた後しばらく沈黙が続いたが……。

「よっしスバルよ!!







--私を”お父さん”と呼んでみなさい!!」
「え、ええええええええええええぇっ!!」

スバルが出会って一番の大声で叫んだ。そのあと”酔ってます?”って聞かれた。失礼な!!ワタシはいつも真面目だぞ!!

「あと敬語もダメだ!!いいか!!今のスバルにいっちばん足りないもの--それは家族のぬくもりだ!!」
「お、おとうさん?」
「まだぎこちないな……もっかい!!」
「お父さん……?」
「う〜む……まぁいいだろう」

よしよし。ファイアやウォーターに比べたら早くなじめたな。私は自然にほっこりとした笑みを浮かべた。

「お、お父さん?」
「ん?なんだ?」
「あっ、答えてくれた!」
「何を当たり前のことを……」
「お父さん、私ちゃんと”お父さん”って呼べてます……?」

あぁ違う!!親子に敬語なんていらん!!

「違う!!まだ敬語が抜けきっていない!!」
「お父さん!私次はオニゴーリのかき氷食べたい!!」
「おぉ!そうかそうか……ってコラ、なに便乗してかき氷を買わせようとしている!?」
「あ……バレちゃった」

スバルがそう言い頭を書いていると、二人で一緒に声を出して笑った。

「この様子なら大丈夫そうだな。じゃあ、バトル大会の会場にでも行くか」


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「----ダブルバトルの優勝は正義のヒーローズとなった!!優勝した2人に惜しみない拍手を頼むぜ!!」
「ん?もう終わったのか?」

フラッグがあるバトル大会のテントにたどりついた私達だが既に決勝戦が終わったらしく優勝者のすごい格好をしているコマタナとマニューラが手を振りながら(といってもマニューラはかなりいやいやだけど)ステージから降りていった。

「ふむ……どうやらあいつ等ダブルには出ていないようだな」
「ど、どうしてそう言い切れるの?」

すっかりぎこちなさのない口調でスバルが訪ねてきた。いや、多分あのバカリーダーのことだバトルは強いからこのほどの大会なら恐らく優勝するだろう……。

「--長らく続いたバトル大会もついにシングルバトルの決勝戦のみとなった。決勝戦出場者は前へ!!」

よかった。まだシングルは終わっていないようだな。司会のポケモンがそうマイク越しに叫ぶとバトルフィールドから2人のポケモンが上がってきた。ふむふむ……メガニウムとリオル……。


ん!?


「リーフ!?」
「カイ!?」

やっぱりいたか!?しかしスバルも相手のリオルを知ってる風に叫んでみたあたりひょっとして……。

ノコタロウ ( 2012/10/11(木) 18:52 )