ポケモン不思議のダンジョン 葉炎の物語 〜深緑の葉と業火の炎〜









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序章
第三話 弟子……?
「チームパワフルズ?」

聞いたことないねそんなチーム名は。ぼくらもそれなりに探検隊は続けているけどそんなチームは知らないなぁ……。

「まぁ知らないのも無理ないですね。わたし達一週間前にチームを結成したんです」
「なるほどね……。それで君達の名前は?」

確かにバッジがノーマルランクだったからね。っとチコリータが名のろうとしたんだけど……



〜〜♪

「ちょっとごめん」

こんな時に携帯か……。一体誰だろうね。

「もしもし、こちらルッグですが……





--っはい!!申し訳ありません!!今すぐに向かいます!!」

携帯の相手に謝罪の言葉を述べる僕。そんな僕を見てあの二人はきょとんと棒立ち状態で見ていたことには気がつかなかったけどね。

「ごめん!!悪いけど僕急いでいるからこの辺で--!!」
「待ってください!!もしかしてあのキュウコンの屋敷へ向かっているんですか!!」

--!?なんであの子たちがそれを!?目的をピシャリと言い当てられて思わず僕は足を止めた。

「実はわたし達もあの屋敷に用があってここへ来たんです」
「だから屋敷につかえていたルッグさんに連れて行ってほしいんでやんす!!」

う〜ん、なんか話がうまいこと行きすぎているようだけど……仕方ないか。

「わかりました。その代わり急いでいるんで、ちょっと走っていきますよ!!」
『はい!!』





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やっと着いた……。もういい加減にザンドさんの思いつきに付き合わされるのはまっぴらなんだよね。

「だ……大丈夫?」
「ぜぇ……な……なんとか……でやんす……」

リオルのことを心配するチコリータだけど、そう言う彼女も結構疲れていることが見て取れた。

「おぉ、ルッグか!!久しいな!!」

っと屋敷の門に差し掛かったころに僕はあるポケモンに話しかけられた……。この声は恐らく--

「おいっす」
「ビルですか!久し振りですね!!」

あのワルビアルのビルだった。彼は破顔一笑(はがんいっしょう)とも形容できる笑顔で僕を迎えてくれた。--尤も後ろの2人は完全に彼のことを怖がっていたけどね。

「お嬢様に呼ばれたのか?」
「うん、ってもきっとザンドさんの思いつきだと思いますけどね……。


っと急いでるからまた後でね!!行きますよ!!」

と言い残してぼく達は屋敷に飛びこむように入っていった。







「ったくあの臆病なルッグがまさかあんなかわいい弟子を2人持つなんてね〜♪」

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「さて、ここがお嬢様の部屋だよ」

ぼくに案内された2人は屋敷の最上階、即ち屋敷の主のいる部屋の前だ。--やっぱいつきても緊張するなぁ〜。

「わかってると思うけど、粗相のないようにね」

空気を呼んでくれたのか2人共真剣な表情で頷いた。--でもなんかリオルの方はなんか必要以上に怖がっているような気がするのは気のせいかな?

「お嬢様!!ルッグです!!失礼します!!」

そしてぼく達は扉に手をかけて部屋入っていった。



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「--ねぇねぇ……」
「--な、何よ?」
「--ルッグさんと言いさっきのワルビアルと言いこの屋敷悪タイプのポケモンしかいないんでやんすか!?」
「--えぇっ!?」

しばらく僕の後ろでそんな会話がなされた。でも僕はよく聞こえなかったから何も言えなかったけど。

「--きっとそのお嬢様も悪タイプでものすんごく怖くて、きっとルッグさんも何かミスしたら指も削ぎ落される。きっとそんなところでやんすよ〜!!」
「--そ、そうなの?」

リオルの妙な妄想……というか空想というべきかは分からないが彼のイメージでは”お嬢様”が相当に恐ろしいポケモンだと思ったとか。どこのや○ざかと突っ込みたくなるような妄想だが、彼がそんな妄想をしているとも露とも知らない僕はお嬢様に話かける。

「お嬢様。今回は一体どういった要件でしょうか?ってアレ?」

部屋に入っていった僕はお嬢様に恐る恐る用件を尋ねた。しかし何で今日に限って……と思っていたら!!

「どうしたのですかルッグ」
「そりゃあなたの姿が見えない…………ってうわあああああああぁっ!!」

び、びっくりした〜!!と言うのもお嬢様(この方)、まるで僕達を驚かすように真後ろにいたんだよ。ったく心臓に悪い……!!

「ふふふ、ごめんなさいね。あまりに来るのが遅いから少し驚かしてみようかと思いましてね」
「…………」

まさかお嬢様までこんな子供じみたことするなんて思いもよらなかった……。ザンドさんと言い最近なんだかキャラが変わっているような気がする。

「ところでお嬢様。今日はどういった要件です?」
「簡単なことですわ。ちょっとばかしある方をダンジョンへ連れて行ってほしいのですわ」

…………へ?どゆこと?ダンジョンへ連れて行けって……。しかもどこへ誰を連れていくか何にも言ってないし……話がよく飲み込めないんですけど?

「お嬢様……聞きたいことが二つほど、まずどなたを連れていけばいいんですか」
「どなたって……、もうあなたの真後ろにいるお二人に決まってますわ」
「あぁ……僕の真後ろのこの2人……ってはい!?」

いやいやいや!!ますます意味がわからないんですけど!!?お嬢様この2人と何か関係があるってんですか!!?

「つかぬことを伺いますが、この2人はお嬢様のお知り合いで?」
「いいえ。今日が初対面ですわ」

……もう何が何だか。なんでお嬢様は見ず知らずのポケモンを連れて行けと命令するのか。

「そっからはオイラが説明するでやんす!!」

と、僕の頭がパンクしそうになった時に後ろにいたあのメガネをかけたリオルがしゃしゃり出て……って言ったら言い方悪いね。あのリオルが出てきた。

「実はオイラ達、ルッグさんが元々はこのお屋敷で仕事していると聞いて頼みこんでみたんでやんす!!”一緒に探検できませんか”って!!」
「ルッグさんと一緒に……でしょ?それだとお嬢様と一緒になっちゃうじゃないの」
「そ、そうでやんす!!」

リオルの説明にチコリータが若干ジト目になって付け加えた。なんでも彼らの話では僕達リーファイを尊敬して、一度一緒に探検してみたいそうだけどリーファイ基地の場所が分からないからこのお屋敷に尋ねてみたんだとか。

「そう言えば……!!ダンジョンに連れていくって言ってもどのダンジョンへ連れて行けばいいんです?」
「それはわたくしが決めることではないですわね」

…………いま思うと何で僕こんな忙しい時に見ず知らずのポケモンのことで呼ばれてるんだろ?なんか頭痛くなってきた……。

「と言うわけですわね」
「却下」
「????」
「却下と言っているんです。いくらお嬢様の命でも僕も忙しいんですよ」

言っちゃった……。でもやっぱり我慢できなかった。でもお嬢様はなぜか怒るどころか笑みをつくって僕のところへ近づいてきた。

「これが正式な”依頼”だとしても断るつもりですか?勿論その子達からもわたくしからもそれ相応の報酬は準備していますわよね?」
『はい!!』
「うっ……!!」

痛いところを突かれた……!!探検隊にとって依頼を、それも直接頼まれた依頼を蹴るのはご法度に等しい。僕の独断でそんなことしてはリーファイの評判が……!!

「……分かりました!!」
『やったあああぁ!!』
「はぁ……」

僕が承諾した途端に2人はハイタッチをした。あの三人、前もってあって打ち合わせしてたんじゃないの?都合があちらにいいように言ってるような気がしないこともないこともないこともないことも……。

「そう言えばさっきから聞きそびれたけど君達って名前はあるの?」
「勿論でやんす!!オイラはリオルのリオって名前でやんす!!」
「わたしはチコリータのリツキです。よろしくお願いします」

リオルのリオ君にチコリータのリツキちゃんね。


ってちょっと待って。この2人が探検の準備するのは納得がいく。でもなんか心なしかお嬢様まで探検の準備をしているのは気のせいですか?

「あの〜、お嬢様。一体何の準備をしてらっしゃるのです?」
「そりゃ決まってますわよ。あなたが一体どれくらい成長したかをこの目で確かめないと。と言うわけですから、早く依頼を決めにいきますわよ」
「はいいいいいいいいいいいいいいいぃ!!!?」

なんてこったい……。

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と言うわけで今僕達はとある依頼をこなすためにダンジョンへ入っていった。

しかし、まさか依頼人を三人も連れてダンジョンへ行くことになりましたよ。こんなとこザンドさんに見つかったら流星群の制裁どころかほんとに殺されるんじゃないかな?たぶんあのヒトのことだから”キサマお嬢様を何危険な目にあわせようとしてんだああああああああああぁ!!”ってブチ切れて攻撃してきそうで怖い……。

それを言ってもお嬢様は聞く耳を持たずに、”見つからないようにしたから大丈夫ですわ”しか喋らないし。そしてあのヒトは同行するだけで様子見しかしないんだとか。

「ったく!!ドレインパンチ!!」

イライラも込めたドレインパンチでダンジョンにいるツボツボを攻撃した。んでもツボツボって種族は無茶苦茶に防御が高いからそう簡単に倒れないでまだ立っている。

「こんのっ!!いい加減倒れなさいっての!!」

えぇい!!鬱陶しい!!まるで人間のスポーツでいう”ごるふ”のようにツボツボを棒で弾き飛ばした。偶然にも飛ばされたツボツボはリングマにぶつかった。当たり所が悪かったのかリングマもツボツボもダウンした。

『おぉ〜!!』

そのバトルの様子を見たパワフルズの面々(っても2人だけど)は驚嘆の声をあげた。

「そう言えばルッグさん。今回の依頼ってなんですか?」
「依頼?それじゃ逆に質問するけど、このダンジョンの名前は?」
「えっ?」

質問を質問で返されてリツキちゃんは少々困惑していた。そんな彼女に助け舟をだすようにリオ君が代弁する。

「ここは確かエレキ平原ってところでやんすね。でも何か電気タイプのポケモンが少ないような……」
「おっ、いいところに目をつけたね」

さながら親がクイズを出して子供がその受け答えしているように見て取れるこの光景。その雰囲気にお嬢様も笑みを浮かべていた。

「電気タイプのポケモンが減ったからその原因を調査する仕事?」
「半分正解」

半分。そのワードを聞いてパワフルズは頭をひねった。--あと半分何が違うんですかと言いたげな顔で見てきた。

「電気タイプのポケモンがいなくなったまではよかった。んでもその原因はもうわかってるんだよ」
「どうしてです?」
「電気タイプのポケモンがね……









誘拐されたのですよ」


 
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「ねぇねぇ、こんだけ捕まえればいいかなぁ?」
「何言ってんだおまえはぁ、あと二十体程捕まえなきゃいけないんだぞ」
「いや違いますよ。たしかノルマはあと三十体は捕まえなきゃいけないんじゃないですか〜?」

会話から察して恐らくこの電気タイプのポケモンの誘拐犯だろう。これらのポケモンは斧に似た牙をもつポケモン、オノノクスに四つの翼をもつポケモン、クロバット、そして敬語で話していたポケモンはドラピオンと呼ばれる種族だ。

「しょうがないな〜、んじゃ無線でジェットさんに聞いてみる?」
「何言ってんだおめぇは。ジェットさんは電気タイプのポケモンを捕まえろっていった理由忘れたのかよ」
「無線が使えないほど電気足りないから電気タイプを誘拐しろって言われたんじゃないですか〜!!」

クロバットが”あっそうか〜”と舌を出しながら頭を翼でぽりぽりとかいていた。

「しっかしこの”もんすた〜ぼ〜る”ですか?便利ですねこれ」

ドラピオンは赤色と白色の入り混じった球体を眺めながら呟く。かつて人間がポケモンを捕まえるために用いた”モンスターボール”と呼ばれる道具。察するにこの道具で電気タイプのポケモンを誘拐したのだろうか。

「全くだよ。これだけポケモンを楽に誘拐できるようになったんだもんな〜」
「いい時代になったもんだぜ……ってなんだ?」

クロバットもオノノクスもドラピオンに同調していた……。だが彼らの体に突如として異変が生じた。体がさながら金縛りにあったようにピクリとも動かなくなっていたのだ。だが仲間同士の彼らでそんなことをできるポケモン、ましてやそんなことをする必要のないことは火を見ることより明らかである。

「だ……だれだ!!」

彼らにもこの原因はまた別の誰かによるものだと察し、声を荒らげる。

「あ……あんたは!!」

ドラピオンが自分達の動きを止めたと思われるポケモンの姿を見て声をあげた。そこには彼らもよく知る同盟を組んだあのズルズキンの姿がいたのだから。

「ちょいとあんた達。こんなところで何をしているんですか?事情を話すまでは縛りを解いてはあげませんよ」

三人を縛り状態にした張本人。チンピラと呼ばれたルッグが武器である棒を手にオノノクス達を威嚇していた。後ろには彼が連れているリオルとチコリータにキュウコンの姿も。

「リーファイのチンピラ!!そんなことお前なんかに教えてるか!」
「そうだそうだ!!ジェット様の命令で電気タイプのポケモンを誘拐しているなんて口が裂けてもいえないからな!!」
「わかったらさっさとこの縛り状態を解け!!」
「バカッ!!」
『あっ……』

オノノクスが制するも時すでに遅し、クロバットとドラピオンがべらべらと喋ったためにルッグに全て知られてしまった。

「はぁ……いくら同盟が続いているといっても、これは討伐しても仕方ないですね……」

少々どころかかなりのため息をつきながらルッグは宣言通り”討伐”の準備をとった。いくらリーファイとジェット達が同盟を組んでいるとはいってもお尋ね者に等しい行為は見過ごせないのだろう。

「と……思ったんですが」

そう言いながらルッグは後ろにいたリオとリツキ達パワフルズの面々に視線を向ける。視線を向けられた2人は思わず背筋を強張らせる。だが次に放ったルッグの言葉で2人共さらにどん底に突き落とされるような感覚に襲われることになる。

「2人共。こいつらは君達の手で討伐してください」

ノコタロウ ( 2012/07/16(月) 22:41 )