プロローグ
ここはポケモンだけの世界。かつてこの世界が崩壊の危機に陥っていたが英雄と呼ばれた探検家によって滅亡の危機は救われたのだ。
その探検家のチーム名はリーファイと呼ばれていた。リーファイのリーダーであったチコリータのリーフはその代償として消滅を一度は余儀なくされ、リーダーもルッグと呼ばれてるズルズキンへと交代された。だがそんな彼女だがディアルガの意思でよみがえることができ現在でも無事に探検活動を続け、またリーファイをリーダーとして引っ張っていっている。
ここはリーフがよみがえってから一年と少しのお話である--
--ボーマンダの城--
「あった!!ここがボーマンダの残したお宝!!」
ボーマンダの城。ここで一人の探検家と思われるポケモンが散策をしていた。そのポケモンは大きな赤い瞳と頭の大きな葉っぱが特徴的なポケモン、チコリータだ。だが見たところによるとこのチコリータは別のポケモンと行動していた。後ろには青色を基調としたはもんポケモンリオルが立っている。なぜかそのリオルには他人からみたら瞳が見えないほど濃いメガネがかけられていた
「探検家始めたばっかりだけどこのお宝があれば……」
「オイラ達!!大金持ちでやんす!!」
語尾にやんすをつけたのはメガネをかけたリオルの方だ。宝箱には黄金の種というかなり珍しい道具が入っていた。喜ぶリオルを背後にチコリータはその宝箱に手を伸ばそうとする
「---ッ!!」
が、とっさになんらかの気配を感じ反射的に宝箱の正面から飛び退いた。寸前までチコリータがいた場所には大量の小さなとがった岩が突き刺さっていた。
「おっとそこのガキ、その宝箱はオレ様に渡してもらうぜぇ」
尖った岩、ステルスロックを放ったと思われる巨大な黄色と灰色を基調としたカバのような風体のじゅうりょうポケモン、カバルドンだ。カバルドンはドシンと前足で地面を踏みながらチコリータを脅す。
「いきなり攻撃してくるなんて随分とごあいさつじゃないの。どうしてあんたなんかに渡さなきゃいけない?名前でも書いてあるわけ?」
脅えてチコリータを盾にして隠れて震えるリオルとは対照的にそんな脅しには屈する様子もなくチコリータはカバルドンにわざと挑発的な口調で言い返した。先ほどのよゆうの態度を見せていたカバルドンは徐々に眉間にしわを寄せる。
「言ってくれるなガキ……、後悔すんなよ!!」
カバルドンが叫ぶとシュッと音を立てて数体のポケモンがチコリータ達をかこった。全てキノコのようなポケモンキノココであり恐らくカバルドンの手下であろう。一瞬にして追い込まれたチコリータは苦虫をかみつぶした表情を浮かべた。
「かかれいぃ!!」
カバルドンの号令でキノココが一斉に襲いかかってきた。チコリータは蔓の鞭でキノココと応戦し攻撃をしのぐ。
「っく!!」
キノココの触れた瞬間チコリータの表情が囲まれた時のそれと同じようになっていった。チコリータの体の周りにはキノココの”ほうし”が散乱しておりそれを吸い込んだために体が麻痺したのだろう。
「ひいいいいいいいぃっ!!」
一方のリオルはガタガタと震えた様子でチコリータを置いていくかのようにその場をそそくさと立ち去ろうとしていたが--
「こんばんわ〜」
「んぎゃああああああああぁ!!」
満面の笑みを浮かべたカバルドンが道をふさぐようにおよそ十メートル間隔で立ちふさがっていた。リオルは思わず絶叫し顔を伏せてしまう。
「ガハハハ!!覚悟せいやぁ!!」
「蔓の鞭!!」
----!!?突如として技の名前を叫ぶ高い声が城内に響いた。しかしその声はチコリータの声の質とは違っていた。思わず顔をあげたリオルの視界に入ったのは蔓の鞭がカバルドンの顔面を捉え力強く殴り飛ばしていた光景だった。体重300キロのカバルドンの巨大が容易く吹き飛ばされていったのだ。
「大丈夫だった?」
「だ…だれでやんすか!?」
蔓の鞭を放った先に視線を向けるとそこにはカバルドンと大して変わらない大柄な体格に首周りに花をつけ黄緑の体を基調とした恐竜のようなポケモン、メガニウムが立っていたのだ。リオルは驚いた様子でメガニウムを凝視する--もしかしてさっきオイラを助けたのはこのポケモン!?
「誰って……見ての通り探検家よ。とりあえずここはわたしに任せておいて♪」
「いってててて……よくもこのカバルドン様の邪魔を……」
攻撃を食らった部位を押さえながらメガニウムを睨むカバルドンだったが……
『あぁっ!!?』
「おめぇは!!」
驚きのあまりかメガニウムもカバルドンも互いに指をさしながら大声をあげる。まるでお互いのことを知っているような口ぶりだった。特にカバルドンはその様子が顕著に表れている。
「し、知っているんでやんすか!?」
「ん?全然」
「だああああああぁっ!!?」
リオルはあたかもカバルドンのことを知っている口ぶりのメガニウムの答えに期待はしていたが、思っていた答えを正反対の答えが返ってきた。カバルドンも思わずひっくり返ってしまう。
「俺だよ!!俺!!前作の第五十三話を思い出してみろ!!」
「あぁ!!あの時のバカルドン!!」
このメガニウムはカバルドンのことをはっきりと”バカ”と称した。それを聞いたリオルは今までカバルドンに対して抱いていた恐れがすぅっと抜けていくように消えていった。
「バカルドン……でやんすか?」
「そっ♪名前の通り馬鹿。こんなのにビビっちゃ探検家なんてやってられないわよ」
大馬鹿と称された挙句こんなのと呼ばれたバカルドン激昂する。
「ってごらぁっ!!バカルドン呼ぶんじゃねぇ!!」
バカルドン……もといカバル丼はメガニウムに大声でさけぶ……
「そうそうそう。俺ってご飯にのせて、たれをかけたら…………っておい!!オレは丼ぶり飯のメニューじゃねぇよ!!」
「……じゅるり」
丼に反応したメガニウムはよだれを垂らす。ちなみにバカルドンやカバル丼はあくまでネタとして弄ってるだけなので、カバルドンがお好きな方はネタとしてとってくださいませ(by ノコタロウ
「こんにゃろおおおおおおおおおおぉ!!大体てめぇがキノガッサ様をポリスにつきだしやがっから、俺達の居場所がなくなったんだぞ!!責任とれ!!」
「へっ?」
カバルドンが言うには彼の城主のキノガッサが悪さをして捕まったことによって住み場所を失い放浪していたという。逆恨みも甚だしい始末だ。
「こうなったら……全員!!しゅ〜ご〜!!」
カバルドンは大声で集合の合図を出した。今までチコリータを攻撃していたキノココはカバルドンの指示通りに動く----
ことはなかった、指示があったにも関わらずキノココ達は全く集まる様子もない。そのことを確認したメガニウムは口元をつりあがらせる。
「ファイア〜。そっちはもう終わったの〜?」
「勿論だよリーフ」
『えぇっ!!?』
既に戦闘不能になっていたキノココ達の影から一体のファイアと呼ばれたマグマラシはこたえる。ファイアとリーフというワードを聞いたリオルとチコリータは驚きの顔つきへと変わる。
「あ…あの!!もしかして、チームリーファイですか?」
やや控えめな口調でチコリータはファイアと呼ばれたマグマラシに尋ねる。
「うん。僕はファイア。あっちはパートナーのリーフだよ」
「ほ…本物!?」
チコリータが驚きの声をあげた。リオルも同じような顔つきで驚いていることが見て取れる。しだいにリオルの表情が驚きからあこがれに近いそれのものとへ変わっていく。このメガニウムとマグマラシこそがチームリーファイのリーフとファイアなのだ。
「オ、オイラ!!リーファイのファンでやんす!!サインを!!」
リオルはどこから取り出したのか分からないサイン色紙とペンを取り出しリーフのもとへ差し出す。
「う〜ん、わたし数学は得意じゃないから……」
「いやリーフ……誰も三角関数のこと聞いてないから……」
「えっ?だってサインっていったらsin cos tanのことじゃないの?」
まるで本気で間違えてるのかと思うほどリーフは自らの間違いを認めようとしなかった。そんなやり取りもチコリータとリオルの2人は目を輝かせて見ている。
「これがあのリーファイのコントなのかな?」
「オイラ、こんどはリーフさんのエピソードを聞きたいでやんす!!」
「ん?別にいいけど、それじゃここじゃアレだからどっかご飯でも食べながら話そうか?」
『わ〜い!!』
憧れの相手に会え、話まで聞けるのだからこの2人の嬉しさはかなりのものだろう。ただファイアだけは自分がご飯食べたいんじゃないのと突っ込んでいたが……。
「よっし、それじゃ早速穴抜けの玉で……」
「お〜い!!!」
リーフ達四人がダンジョンから抜け出そうとしたら今まで黙っていたカバルドンが口を開けた。
「ワシほったらかしかい」
「あっ……」
声を詰まらせながら答えるリーフ。その言い方だと完全に忘れていたようだ。
「も〜許さん!!キレた!!絶対お前らぶっ潰す!!」
激昂したカバルドンは自慢の口を大きく開けて怒りをあらわにした。だが無論リーフもファイアも慌てる様子は微塵もなくどちらかと言えば呆れた様子であった。
「はぁ〜、仕方ないわね。ファイア」
「おっけ〜」
ファイアもリーフもめんどくさそうな口調でやり取りをしていた。
「任せたわよファイア!!くさのちかい!!」
リーフがあまり聞くことの少ない技名を叫ぶとカバルドンの足元から小さな草のトゲがのびてきた。草のトゲはカバルドンの足に刺さり彼の体に痛みが走る。
「ぐぬっ……!!こんなもんで俺を止めれるとおもうなぁ!!」
「止めてみせるさ!!ほのおのちかい!!」
今まで草のトゲがあったカバルドンの足元が前触れなく炎へと豹変した。草のトゲがまたたく間に引火していきカバルドンの足元は一気に火の海へと変化していく。
「--っつ!!熱い!!熱い!!あぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ!!!」
地面の火の海がカバルドンの足の裏を焦がして火傷をおっていた。カバルドンはさながら陸に上がったコイキングのように跳ねまわっている。だが重さのあまり辺りに地響きが轟いていたが。
「これで決める!!メタルブレード!!」
リーフのメガニウムの体格からは想像もできないような跳躍力でカバルドンの頭上をとり、両手には十八番の技、鋼鉄の葉(メタルブレード)でカバルドンを切りつけた。物理攻撃には強いカバルドンも流石に弱点の技には持ちこたえられずにそのまま火の海に突っ伏したように倒れこむ。
「よっし♪しゅうりょ〜」
「やっぱりあいつはバカルドンだったね」
普段は温和なファイアでさえもこのカバにはほとほとあきれていたようだ。まぁ自分の特性も知らずにヌケニンとパーティを組むような奴だから無理もないだろう。
「リ、リーフさん!?炎の中に入って大丈夫なんですか!?」
ほのおのちかいによって生じた火の海に平然と立っていたリーフを見るに見かねたチコリータが口を開けた。同じ草タイプとして炎を苦とするからきかずにはいられなかったのだろう。
「ん?大丈夫大丈夫♪」
そんなチコリータの心配とは裏腹にリーフは火の海にいるにもかかわらず苦にする様子は微塵もない。それでもチコリータ達2人の疑心は解かれない。
「癒しのオーブだよ。身につけた草タイプのポケモンは炎タイプでダメージを受けないんだ。こんなふうにねっ!!」
説明するファイアはいきなりリーフに向かって火炎放射を放った。2人共驚きを見せ特にチコリータは思わず目をふさいでしまう。それも杞憂に終わったのだが--
「まっこんな感じでね」
火炎放射を直接受けたリーフだが傷や火傷の跡一つない状態で立っていた。今まで目を覆っていたチコリータも目を丸くしてその様子を凝視していた。
「それじゃわたし達はこのカバのことを調理……じゃなくて調査しようと思うから」
「こいつがお尋ね者かまだわからないからね」
そう言いながらリーフは軽々とカバルドンを担いでその場を後にしようとした。っておい!!そいつそんな軽々持てるような奴じゃないだろ!!
「じゃあね〜♪」
のびているカバルドンを連れて行ってリーフとファイアは穴抜けの玉を使い去っていった。
「……………」
「--?どうしたの?」
ぼーっとした様子でリオルは突っ立っていた。心配になったチコリータはリオルの顔を覗き込むが--
「ふふふふっ、リーフさん……可愛いでやんす……。オイラのタイプでやんす……」
ボカッ!!
リオルの脳天にチコリータの蔓の鞭が炸裂。リオルは頭を押さえる。
「痛いでやんすううぅっ!!」