ポケダン救助隊 〜最強と呼ばれた所以〜








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救助6 最後の使命--そして
第六十七話 闇に見出した光



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--何も……見えない……。

--何も……聞こえない……。

--身体もピクリとも動こうとしない……動く気力すらない。

--あぁ、このまま私は死ぬのだろうな……。



--まあそれも仕方あるまい……。

--私は結局……課せられた役目をまっとうする事など出来なかったのだからな……。

--いや……ただ一つだけ成し得た事は……そうだな……故郷と兄姉の仇を討ち取ったのみ……。

しかし、キーストーンを失くし、力を失った今の私になどもはやこの世に存在する価値などある筈もない……。






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グラスが元の世界に戻ってから数日後、あたし達チームブラザーズは事実上解散していた。あの後夫のラックが旅に出たいと言って来た。理由を尋ねても旨いことはぐらかされて聞くことができなかった。所謂傷心旅行に近いものだろうか、そんなパートナーを失った彼の気持ちを思うと止めることはできなかった。
 そしてトノサマのほうは”自分の屋敷に戻る”と言って来た。こちらの理由は領主として屋敷を守るほど強くなれた気がすると言っていた。



「リン殿、頼まれた木の実を持ってきやしたぜ」

 そんなチームの中で唯一この場を離れなかったあたしの元にはかつて敵対していたマンムーのゴラス……さんが足を洗って罪滅ぼしということであたしの元でしばらく協力してくれるとか。
 彼の元手下であるあのドンファンとフライゴンも同じように手伝ってくれることに


 --尤ものあの二人はリーダーに脅されて嫌々応じただけだけど……。


 そんなわけで良くも悪くも騒がしい環境のままあたしは救助隊として、そして医師としての生活を続けていた。あれからは特にこれといって大きな事件もなく平穏な日々が続いていた。

 そんな平穏に異変が起こったのは小さな森に木の実を採取しにいった時。ある傷ついたポケモンを介抱した時だった。





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 --視界は闇を占めていた。ほんの僅かだが声……なのだろうか、それらしき何かが聞こえた。視界はおろか聴覚すらほぼ失われているのだろうか本当に僅かにしか聞こえない。

 声の主は私に話しかけ、同時に私の体が何者かに持ち上げられた感覚に見舞われた。抗おうにも体も言うことを聞かずにその者の成すがままにされているのだろう。私に話しかけるその者の声は一向に聞こえない。

 しばし風を切る感覚を味わった後、私は肌に藁の上に寝かされた感覚を覚えた。どうやら私を助け、介抱しているのだろうか、この声の主は相当なお人よしだ。だがちょうどいい--今はこのお人よしの行為に乗じてやろうではないか。そして私をこんな目に合わせたあの忌まわしき--奴らを始末してやろうか。

「大丈夫。視覚や聴覚も直に回復する。それまで休んでいるといいわ」

 どうやら本当に私を助けたと見ていいだろう。それまでは回復に専念することにしよう。そんなつかの間の安堵の後私は強烈な睡魔に見舞われたちまち眠りについた。










 ~~ ~~

 夢を見ていた。それもこの夢を見るのは一度や二度ではなく、あの日から毎日見ていた忌まわしい記憶……。




 人間であること以外の記憶を失い、イーブイと化した私はとても小さな、でも平和な森の中で目を覚ました。どこの馬の骨かも分からない私を兄さんや姉さんが拾ってくれ、幸せな日々を暮らしていた。

 そんなある日、兄さんと姉さん達が私の目の前で殺された。首謀者であるあのサザンドラの配下のピカチュウとルカリオ、そして数え切れない程のポケモン達の攻撃--否、暴行を受け動かなくなった。あの時、亡骸を見た奴らの狂気じみた下劣な笑みとあの血生臭い臭い。あのときのことは忘れたくても忘れられない。

 私たち兄弟が大切にしていた宝をあのサザンドラは品定めするような目つきとともに手にとってこう口にする。



「キーストーン……これさえあればもうこんなところには用などありません。--サスケ」



 手下達に指示を出すサザンドラ。配下のルカリオ--サスケは下品な叫び声と共に森の木々に”ブレイズキック”を放った。炎を纏った蹴りにより木々に火が燃え移り辺り一帯は火の海と化した。あの幸せな日は一瞬にして奴らの手によって崩壊した。

 私はひたすら火の海と化した森の中を駆け巡り辛うじて火の手から逃れることができた。だがそれ以外には何も残らなかった兄弟の宝物、そしてこの世界でできた初めての”つながり”。
 それらを失った悲しみよりも先にあのときの下劣な笑みを浮かんでいたサザンドラの姿--それが私脳裏を支配した。






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「-----ッ!!!」


 声にならない悲鳴と共にまたあの悪夢にうなされた私は汗だくになりながら目覚めた。そんな私の心境を紛らわすかのように太陽の光は私を穏やかに暖めていた。
 けたたましく扉が開く音がした。目覚めたときの私の悲鳴に近い声を耳にしてか私を助けたものがかけつけたらしい。視界こそまだ完全ではないが気配で奴が私の顔を覗き込むようにしているのはわかった。

「大丈夫?悪い夢にうなされてたみたいね」

「……夢?夢などではない。忘れ去りたい過去の遺物だ」

 何の因果か徐々にであるが視界が晴れてきた。今まで寝かされていた部屋の光景がぼんやりと浮かんでくる。今までの悪夢とは程遠い光景だ。棚などに鎮座されてる私物を整理しながら私に安っぽい慰めの言葉をかけてきた。







 --貴様に何が分かるというのだ



 怒りの感情を抑えつつも睨む。視覚は完全ではないにしろ睨むことはできる。少しずつだが疑惑が確信に変わっていった。緑色の体にあの口調--そしてあの無駄にお人よしな性格。他者とかかわりを持つのが嫌いな私が覚えのあるポケモンの中でこれらの条件に該当する奴は限られている。










「----これは一体どういうことだ、チームブラザーズ……リンよ」

 覚えのあるツタージャの名を口にした。なぜ私を止めたあの救助隊の一員が、あろうことかそんな私を助けたのか--それは理解することはまだできなかった。

■筆者メッセージ
こっからはリンさんとベガ君がメインのお話でございやす。
ノコタロウ ( 2015/06/28(日) 20:03 )