七月七日
※ちゅうい
・この物語は七夕やからなんかしようと思ってパッパと半時間程度で作った話です。なんでクオリティはお察しください。
・物語の進行上、時系列がむちゃくちゃになってますがそこは番外編だからということでお許しを。
・七夕だからってアルタイル様は出ません()
~~ ブラザーズ きち ~~
今日は7/7、即ち七夕。この日は特別な行事を行うからか基地内には一体のニョロトノ--トノが嬉しそうに鼻歌を歌いながら何かを作っていた。しかしそれを差し引いても今までにもないほど上機嫌な彼の姿に彼の傍らにいたツタージャ--リンが不思議そうに彼の顔を覗き込む。
「あら?えらく上機嫌じゃないお殿様?」
「しししし。まぁなリン、こいつを見てくれよ」
ニヤニヤとしながらトノはリンに今まで自分が用意したものを見せつけてきた。ごちゃごちゃと汚らしく色々なものを無造作に見せてくるが、トノが一番得意気に見せてきたのはキモリの顔をしたお面--それもトノが作ったからか決してきれいでもなくどことなく不格好であった。あれだけ大量のものやあの珍妙なキモリの面を見てリンは首をかしげる。
「……何これ?」
「何って、今日は"たなばた"じゃろ?」
不可解の三文字が今のリンの様子を表しているのだがトノの得意気な表情は変わることはない。依然として彼が取り出した大量の何かを取り出した意図が見えていない。
「ホレ、七夕ってあれじゃろ?門松を飾って鯉のぼりを外に設置して悪鬼に豆をぶつけて願いを書く……」
「いやいや、何そのこの半年の総決算みたいイベント。七夕そんなごちゃごちゃとしたイベントじゃないからね?あとなんでキモリの面作ったの?」
リンの突っ込みと同時にトノが作ったと思われるキモリの面を指さした。トノのほうはそれを待ってましたと言わんばかりに含み笑いを見せた。トノが口にした"悪鬼に豆をぶつける"のフレーズでリンは途中で察してあえてそれ以上は口にしない。
「グラスって主人公の癖にプロローグから初対面のポケモンに偉そうに接するし、実際は敵とはいえであったばかりの奴を切り刻んで踏みつけまくる鬼畜じゃろ?だからあんな鬼みたいな奴を制裁しようと思ってな。だいたいアイツはクールキャラ装ってる割にはどうも中途半端でうんたらかたら--」
「ちょ……ちょっとトノサマ……?」
既にトノの背後には彼の悪口を言っている対象のキモリ--グラスは鬼面を浮かべながらトノの背後にたっていた。慌ててリンがトノを静止しようとするもトノの口は一切止まる素振りすら見せない。徐々に怒りを募らせているグラスはしまいには剣を取り出し--
「だれが偉そうで鬼畜で中途半端だって?」
「あ?んなもんお前しかおらん--うわああああああああああぁッ!!?」
グラスに背後から声をかけられて始めてトノもグラスの存在に気がついたがとき既に遅し。慌てて背を向けて逃げようとするもすぐさまグラスに追いつかれてしまい--
「ゲコォッ!?」
短い悲鳴を上げてトノはグラスに切りつけられてダウン。つまらぬものを切ってしまったと言わんばかりにグラスはため息をつきながら剣をしまう。
「全くこんな糞の役にも立たないもの作りおってあのバカが……」
倒れているトノの傍らに自分を模した珍妙な面が作られていたことに気がついたグラスはそう悪態をつく。制裁を含めたその光景をみていたリンは苦笑いを出さずにはいられなかったが、グラスはそんな彼女の様子は気に留めることもなく話かける。
「リン、そっちの準備はできてるか?」
「えぇ。でも他のヒト達はどうしたの?」
「嗚呼。なんでも笹が重くてそれを持ってくるのに手間がかかってるらしいから私は先のそれ以外のものを持って帰ることにした」
そう言いながらグラスは恐らく七夕に必要な雑品が入っているであろうビニール袋を地面に置いた。グラスが雑品を持って帰る役目になったのは彼が進化前故に非力だからだというらしく彼は少し落胆していた。気絶してのびているトノをほったらかしにしたリンとグラスは引き続き準備に取り掛かっていた。
「それでですねー、トノサマと僕が昼ご飯に一緒に言って僕がカレー食べてるのみてカレー食べたくなったのはいいんですけどその夜から三日にかけてカレー食べ続けてましたからね」
「マジで!?アホやろアイツ!」
「まぁある意味あのトノサマらしいっちゃらしいが」
「しかも初日にはカレー手にしたら狂喜のあまりウィニングランみたいに走ってましたからね。ネタでしょあれ」
会話をしながら基地に戻ってきたのは巨大な笹を涼しい顔で運んでいるニョロボン--ボン、フシギバナ--バナ、そしてミズゴロウのラックだ。トノのおかしなエピソードで盛り上がってる三人とも笑顔で戻ってきたあたり会話の内容がうけているのだろう。
「あらお帰りなさい。早かったわね」
ラック達が帰ってきたのを確認したリンは彼等を出迎えた。その夫婦のような(といっても本当に夫婦なのだが)やり取りをみてバナとボンが密かに妬んでいたのは二人しか知りえないお話。ラックは嬉しそうに"従者さん方が手伝ってくれたからな"と話す。そして従者二人を含めたブラザーズ一行は引き続いて準備を続けた。
~~ ~~
準備を続けているウチに日が暮れてきた。基地の外には野外用の机と人数分の椅子。そしてラック達が持ってきた大きな笹の葉が傍らに設置されていた。一行の手にはそれぞれに自分の短冊が手に取られている。
「しかしさっきから気になっていたんだがなぜ従者組のなかであのドクロッグだけいないのだ」
ここにきてグラスがフシギバナとニョロボンが来てあのドクロッグがいないことに疑問を抱いていたからかそうトノに尋ねる。聞かれることを予期していたトノはため息をつきながら返す。
「アイツ--ドクは集団で行動するのが嫌いなそうじゃ。オフではいつも一人で行動しているからな。この前も飲みに行こうと誘ったら断られたし」
(てか冷静に考えたら殿様が従者を飲み会に連れてくってなかなか珍しいわね)
少し寂しそうにトノがそう返した。彼も内心では屋敷のもの皆で行動したいと思っているのだろう。少し真剣な彼の表情に似つかわしくないことをひっそりとリンが考えてはいた様子。
「まぁそう辛気臭い顔すんなって!!んでバカトノ、お前短冊に何書いたんだよ?」
少し空気がしんみりとしたのを察してかバナがいつも以上に陽気な声質でトノの手に取っていた短冊をひったくった。突発的なバナの行動に驚きはするもすぐに怒ったトノは"返さんかバカモン!"とバナにむかって飛びかかる。
いつもの光景に戻ったことに他の面々には笑顔が浮かんでいた。なんとか中身を見られる前に取り返したトノだけが不機嫌な表情であったが。
「こんな飾る前に見られちゃ叶わん!さっさと飾り付けて飯にしようぞ!!」
「はいはい」
トノの号令(?)で彼にとってはメインイベントである食事会が始まった。途端に元気になるカエル三人衆とそんな彼等に酒なり(トノを筆頭としたカエルの面々は人間年齢に換算すると皆二十歳以上)料理なりを持ってくるリン。
その傍らでリンに見つからぬように笹の葉のかげでキセルをふかすラックにグラスが近づいていった。
「……俺の願いが何か気になるのかい?」
目線を変えることなくラックはそう口にした。グラスは図星だからかふっと含み笑いだけを浮かべた。
「以前私とであったばかりではたしか救助隊になるのが夢だっていったよな」
「だから今は何が望みか気になったと……。まぁたしかに俺の望みはお前さんのおかげで叶ったといっても過言じゃないからな」
今度はラックのほうが含み笑いを浮かべた。そのキセルをトントンと灰皿に叩いている彼の表情は心の底から現状に喜んでいるのが見受けられる。こうして彼が口を開けようとした時に--
「コラーッ!!」
『--!?』
聞き覚えのあるこの声、グラスもラックも驚いているがラックのほうは尋常ではないほど驚きを見せた。その証拠にラックの手に取っていたキセルがコトっと音をたてて地面に落ちる。声のした方向には不機嫌な表情を浮かべながら腕組みをして立っていたリンの姿が。
「あれだけ勝手に吸っちゃいけないっていったのにまた隠れて吸ってたわね!!」
「ったく……いいじゃねーか今日くらいよー」
「よくない!!」
隠れ煙草が見つかったラックはリンに説教を食らうハメに。依然としてバカ騒ぎしているカエル三人組とよそにグラスはラックが飾り付けた短冊に目を通した。その書かれた内容をみてグラスの表情が一瞬だけ曇っていった。