第四十一話 出陣
~~ ???? ~~
--サザンドラ率いる謎の組織。しばし動きを見せなかった彼等がここにきて動きだす--?
アジトの一室でうめき声をあげているのは黄色の体をしたピカチュウ--ライト。未だ宝玉の呪いが解けずにいる彼は、本来黄色い筈の彼のその両腕は紅く染めて苦しんでいる。休養こそもらえたものの明確な呪いの解き方が見えずに苦しんでいたときに--
--ガチャリ
「……チッ、誰だ」
ノックもなしに自室の扉が開けられてライトは苛立ちを交えながら発する。扉を開けた正体はライトよりも身の丈数倍もある橙色の体のドラゴンのような風体のポケモン--リザードンであった。リザードンのその不機嫌な様子はどう見てもライトの呪いの解除方を教えにきたようには見えずに、ライトのほうも額にしわを寄せる。
「テメェか……何しにきやがったんだよ」
「……貴様の醜い呻き声が耳障りだ」
「あぁ!?」
入ってきて早々に文句を言われ、挙句"醜い"と称されてはライトでなくても怒るに決まっている。自分も好き好んで五月蝿くしているわけではない。
「早々にその"呪い"とやらをとっとと解け。貴様のせいでこちらまで迷惑だ」
「んなこたぁわかってんだよ!!いちいち偉そうに命令するな!!」
大声で啖呵を切るも腕に痛みが走り膝をつく。リザードンからすればその醜態を見てフンと鼻でライトのことを笑う。
体格差からライトはリザードンを見上げるように睨み、俗に言う"ガンを飛ばす"ことをした。普通のポケモンなら間違いなく竦み上がるほどの恐ろしいい形相だがリザードンは素知らぬ顔。
「いちいち喚くなマヌケめ、貴様のほうが目障りだ。消えろ」
「テメェと意見が合うのは珍しいな。俺もテメェが目障りだから消してやろうと思ったところだよ」
本来同じ組織に身を置くもの同士のはずが挑発的なリザードンの言葉の数々で一触即発のこの空気。ライトもリザードンもお互いを睨みあう--
リザードンの口から勢いよく炎が発せられた。その火力から本気でライトを始末しようとしていることはライトにも見受けられる。自分に向かってくる火炎放射を避けながら"十万ボルト"を撃つ構えを取る。
ライトも本気だ、リザードンには効果の大きい電気技--それも高威力の"十万ボルト"。これをリザードンが喰らえばひとたまりもないはずだがリザードンは真っ向から食らわぬように腕でガード。さしたるダメージは入っていない。
一通りお互いの技を出し終えてにらみ合っていたときであった--
--ドタドタドタ!!
「こんなとこにいたんすか!アドンの兄貴!」
けたたましい足音と共にルカリオ--サスケが部屋に、それもライトとリザードン--アドンの間に割って入るように飛びいる。止められたことにライトはサスケを苛立ちを込めた眼差しで睨む。
それはアドンも同じく、ライトほどではないが彼も機嫌を損ねていた。そんな二人の目つきに一瞬怯えつつもサスケはアドンに向かった話かける。
「兄貴!兄貴!!」
「何のようだ、騒々しい」
「ボスからの通達っす!!」
--普通に通達すればいいものを。そうアドンは思いつつもサスケの話に耳を傾ける。大げさともとれる彼のリアクションにアドンは鬱陶しくさえ思っている。
始めは鬱陶しく思っていただけであったが話を耳にしていうくうちにアドンの表情に変化が訪れる。徐々に興味深いといった様子に変わっていった。
「なるほど……サスケ、お前は先に"ほのおのやま"へ向かっていろ。私もコトが済めば合流する」
「了解っす!!」
それだけ言い残してサスケは矢のように走り去っていった。
「フン、心底鬱陶しいが通達が入ったからな。貴様は見逃しておいてやる」
「うぜぇ。さっさと消えろクソが」
未だ険悪な空気は残っていたもののアドンに通達が入ったことでやむなく戦闘はお流れに。お互いに捨て台詞をぶつけ合いながらアドンはその場を去っていった。
チッと舌打ちをしながらライトは痛む腕をかばいながら置かれていたベッドに飛び込んだ。