ポケダン救助隊 〜最強と呼ばれた所以〜








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救助3 ゴールドランク
第三十四話 霰下の戦い
--サンダーと対峙したブラザーズだが早々とラックとリンが倒されて窮地に追いやられたグラス。だがトノの助太刀が入り予想外に善戦。しかしサンダーを操っているライトから発せられた指示は予想だにしていないものであった……。











「影分身だと!?」

自分たちの周りを取り囲むようにに表れたサンダー--否、サンダーの残像達を目の当たりにして動揺を見せた。今までの傾向から力でゴリ押ししてくると想定していた敵が搦手の指示を出してきたのはグラスは想定していなかった。

「鬱陶しい!"ハイドロポンプ"!」

一方でトノのほうはさぞ問題ないと言わんばかりに大技を放つ。数打ちゃ当たると言わんばかりに雑に放たれた大技はどれも本体に当たることはなくむなしく空を切る。
攻撃が当たらず地団太を踏みながらもう一度"ハイドロポンプ"を打とうと口を開ける。

「あ……あれ……?」

今まで勢いよく出ていた激流が今度は噴水のようなひ弱な水しか出せなかった。何事かと
首をかしげつつももう一度攻撃を出そうとするが同じような水勢の水しか出せない。攻撃が出せずにやけになったトノは機嫌を損ねる。

「なんで?なんで出せないんじゃ!?」

「……プレッシャーよ……」

『--!?』

聞き覚えのある高めの弱々しい声。声のした方に振り向いてみると体の所々を凍結させて、倒れていた筈のツタージャ--リンが立っていた。
リンの身を案じたグラスとは対照的にリンは何ともないと言わんばかりに続ける。

「アイツ--サンダーの特性"プレッシャー"よ。攻撃してきた技のPPを多めに削る特性なの」

「そういうことだ。これでテメェの頼みの綱が切れちまったか、おぃ?」

「くっ……」

再び状況が悪化した。特性を用いたライトのいやらしい戦法に見事にハマったかに思ったリンは険しい顔をしながら俯く。

(トノ……リン……。わたしに一つ策がある……)

(策……?一体何なの?)

(今は説明する余裕はない。とにかく少しの間でいいから二人でライトの気を引いてくれ。今のサンダーならダメージ的にも可能性はある!)

しかしサンダーの方も結構なダメージが入っている。策はまだ尽きていないとグラスが真剣な眼差しでトノ達に策を伝えた。

(フン、別にワシが倒してしまってもかまわんのだろ?)

策の意図こそは見えていないが"面白い"と言わんばかりにトノがニッと口角を釣り上げた。そのまま彼の第二の大技"ふぶき"を放った。

「バカが!どこ見て打ってやがる--っ!?」

しかしトノの"ふぶき"はサンダーには放たれずに上空--上空の雨雲に向かって放たれていた。あまりに見当違いに見えた攻撃にライトは馬鹿にする口を叩くも脳天に痛みが走り、その口は閉じられた。
脳天だけではない。体中が僅かではあるが何かがぶつかったように痛覚を刺激されている。

「いってぇ……なんだこりゃ!?」

今までの豪雨が嘘のように止んでいた。否、本当に止んでいた訳でない。今まで降っていた雨が霰へと変わっていたのだ。
トノの"ふぶき"は敵(サンダー)ではなく自ら雨を降らす根源となっている雨雲に向けて放たれていた。雨雲は"ふぶき"によって瞬間的に冷却され水滴が凍結--結果天候が雨から霰へと変わっていった。

「どうじゃ、ワシの霰の味は?傷ついた体にはなかなか堪えるじゃろうて」

今雷鳴の山山頂に立っているポケモンでトノ以外は全員満身創痍と言っても過言ではない。天候が霰状態になった今、霰の大したことのない天候ダメージもトノ以外には確実に辛いものがある。
尤も彼の脳裏にはグラスやリンのことは全く考慮などなかったのだが。

「小賢しい真似しやがって……!! "十万ボルト"!!」

「ゲロロォッ!?」

--こんなところにはもう長くはいられない。自らの体力を奪う霰ダメージに苛立つライトはより荒々しくサンダーに"十万ボルト"を指示。指示を受けたサンダーはまるで主の意思に呼応するように乱雑に電撃を放つ。
強力な弱点攻撃が一帯に放たれて先ほどとは打って変わって情けない声をあげるトノだが、攻撃の制度が落ちているからか辛くも攻撃が当たることはなかった。

「は……ははははッ!!伝説のポケモンとやらも大したことないな!こりゃワシ、ヒーローかな?」

「いい気になってんじゃねぇぞ。糞蛙が」

大笑いして油断しきっているトノに向けてライトが痛む右手を振り下ろすとサンダーが貯めていた一発電撃がトノ向けられた。ライトの右手が振り下ろされた瞬間に電撃はトノに向かって一直線におとを立てて向かってくる。










またも情けない声を上げながら目を瞑ったトノ。だがやはり身体中が電撃に見舞われることはなかった。それと同時に体が妙な浮遊感を感じている。
目を開けると本当に彼の体は浮いており、先刻まで自身の上にいたサンダーとその分身達が自分とほぼ同じ目線の高さにいる。

「あ……アレ?」

ふと自分の体を見ると腰に蔓が巻き付かれていた。これをみて初めて自分がこの蔓で宙にうかされていることに気づく。

「全く……調子にのらない……」

「ははははは……すまぬ……」

蔓を出したポケモン--リンにたしなめられながらトノはゆっくりと地面へとおろされた。締まりのない顔でおろされながらトノは半笑いで頭をかく。地面に足をつけ、蔓から解放された瞬間に彼の頭にリンの軽いパンチが入った。

一連のやり取りを終えた直後締まりのない顔から一変--ライトとサンダーを睨むかのような真剣な眼差しで見据える。
--もう少しだ、もう少し粘れば霰のダメージで奴の体力は尽きる。そう確信した瞬間であった。








「"はねやすめ"」
『--!!?』

ライトの口から発せられた五文字を耳にして二人は奈落に叩き落とされたかのような絶望が走る。サンダーとその分身は地面に降りることで体を休め、体中の傷を癒していた。
勝利を確信した瞬間からの相手の一手。既に打つ手がほぼなくなった二人は"そんな……"と声を漏らした。

「へっ!残念だったなぁ!!あとは自分でまいた霰で苦しんでな!!」

そんな絶望しきったトノ達の顔をみてライトが狂気さえも含んだ笑みを浮かべた。サンダーの体力が回復する以上霰をまいたのがかえって仇になってしまっている。


しかしここでライトは異変に気が付く。

--あのキモリがいない。

尤もこの時はあのキモリがどんなに情けない顔をしているか拝んでやろうという程度の考えではあったのだが。ライトの感じた違和感の正体が明かされるのはその直後であった。






「"聖なる剣"!!」





羽を休めて地面に降りているサンダーに一直線にあのキモリが剣を携えて向かっている。ライトも一瞬は驚くもどう見ても当てずっぽうの攻撃にしか見えずに安堵しグラスを"バカめ"と言わんばかりに鼻で笑った。










サンダーは音もなく倒れた。それと同時に分身のサンダーも一瞬のうちに姿を消した。あまりに突発的な出来事にリンもトノもライトも驚きのあまり目を見開いている。
しばしの間をおいてライトが"なにが……おこった……"と声を震わせていた。

「助かったぞ、リン……トノ……。なんとか上手くいったようだな……」

「おいグラスよ!一体どうやってアイツを……!!」

「簡単なこと。二人にアイツ等の気を引いてもらっている間に"剣の舞"を積ませてもらった」

簡単とは口にはするグラスだが、リンもトノもまだ納得が言っていない様子でグラスに詰め寄る。あれだけのサンダーの分身の中、どうして一撃で本物に攻撃を当てることができたのか。同じことをライトも考えていた。

「話すと長くなる。それよりも奴の身柄の確保だ」

「おっと!!そうはいかねぇな」

サンダーが倒れてもなお虚勢を張るライト。拘束に向かったグラス達はトノ以外はその真意を悟り足を止める。唯一トノだけが訳もわからず辺りをキョロキョロと見回しながら足を止めていたが。

「こっちには人質がいるんだぜ?下手な動きはよすんだな」

「ちっ……」

「この卑怯者……!!」

「なんだとぉ!?」

人質--あのワタッコは未だにライトの手のなか。人質の存在を思い出したライトは表情を一変させていつものような憎らしい笑みを浮かべる。またも訪れたこの窮地、しかしそれも長くは続かなかった。










「人質っていうのは、こちらのポケモンのことかな?」

聞き覚えのあるこの緊張感のない声。声のした方向へ全員が振り向くとそこには倒れていた筈のミズゴロウ--ラックが傷ついたワタッコを背に乗せている姿があった。
ラック自身も傷が残っていたが、その体に反して彼の表情は余裕の一言。ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべている。

「悪いねぇ。お前さんがあつくなってる間このワタッコは俺が救出させてもらったよ」

「……野郎ッ!!」

頼みの綱の人質とサンダーが使い物にならなくなった今、ライトの味方をするものは誰一人としていない。そんなライトに反してグラスは"これで終わりだ"とゆっくりと詰め寄った。
その間に大柄な黒いポケモン割って入った。






『--!!?』
「--お前は……!?」

グラスに背を向けて表れた黒いポケモン--サザンドラはグラスに答えることなくライトに"あくのはどう"で攻撃をする。サザンドラの攻撃は手加減こそはされているが手傷を負っているライトには十分だったのかそのまま声をあげることなく倒れる。

「いやはや、これはブラザーズの皆様……お久しぶりです」

「お久しぶりですじゃないだろう。お前、以前にこのピカチュウ達を拘束したんじゃないのか?なんでコイツ等がこんなところにいる?」

にこやかなサザンドラとは対照的にしかめっ面をしたグラスが問い詰める。以前このサザンドラはカエル屋敷にてライト達の拘束を頼んだ筈である。にも関わらず何故ライトやあのフライゴン達がのうのうと悪事を続けているのか。
当然その非はサザンドラに向けられる。

「それは申し訳ございません……。奴らの抵抗が思いのほか激しくてうっかり逃がしてしまいまして……」

「しっかりしろよ……」

凶暴ポケモンらしからぬ情けないサザンドラの表情にグラスもため息。サザンドラはライトとサンダーを拘束する。今度は大丈夫だと言わんばかりに"しばられのタネ"を口にさせる。
ライトもサンダーもこれで微動だにすることができなくなった。何もすることもできずにサザンドラに拘束される。

「ではでは、ご協力ありがとうございました……。それでは……」

最後までニコニコと笑顔を絶やさずにサザンドラはライト達を抱えて去っていった。ただグラスとラックは何か腑に落ちない様子でその後ろ姿を眺めていた。


■筆者メッセージ
(雨下とはいえ)ドロポン二発と
(はねやすめと剣の舞があったからとはいえ)タイプ不一致の聖なる剣一発とでぶっ倒れたサンダーさんが不憫でならない()
ノコタロウ ( 2014/03/16(日) 00:04 )