ポケダン救助隊 〜最強と呼ばれた所以〜








小説トップ
救助3 ゴールドランク
第三十話 かいぶつ
ワタッコの仲間を救出するために"ちんもくの たに"へと向かったブラザーズ。ところがそこには怪物がいるとの噂を聞き、トノは早々に怖がる始末。







~~ ちんもくの たに ~~

「なんじゃー?"かいぶつ"とやらがいるダンジョンの割にはずいぶんと弱っちぃやつばかりじゃな」
「フン、それじゃその"よわっちぃやつ"をお前は何体倒した、バカトノ」
「だーれがバカトノだ!!このチビトカゲ!!」
「なに?」

中腹に差し掛かってからというもの、あれだけ怖がっていたトノが調子に乗りだしたのだ。自分が敵を倒したならまだしも大して動いていないにも関わらずこれだけの大口を叩くトノにグラスも我慢ができずに吐き捨てるように言い返す。

しかしトノが"はいそうですね"と黙って従う筈もなく"チビ"と言い返す。コレには普段は比較的冷静なグラスも"チビ"と言われた時は話が違う。彼の禁忌に触れられ血相を変えてトノに詰め寄った。

正直このダンジョンはこんなバカバカしいやり取りができるほどブラザーズには退屈なレベルであった(無論トノ以外のメンバーであるが)。どこまであのカエルはトラブルメーカーなのだろう。

「私がチビならお前はデブだな」
「誰がデブじゃあああああああああああああああああぁぁッ!!」

誰がどう見ても喧嘩が勃発しそうなこの空気。この空気を打破したのはやはり--












「いい加減にしなさいッ!!!」

リンだ。彼女の制止の声と共にダンジョン内には二つの鈍い打撃音が響いた。頭を殴られたグラスとトノは頭を押さえる。ちなみにラックは"我関せず"と言わんばかり。全く口を開けようとせずに敵ポケモンを蹴散らしていく。

「ちょっとは緊張感を持ったらどうなの?全くあんたたちときたら--」

頭をひっぱたいた次はグラスたちの頬を抓る。そうしてリンの説教が始まるかと思われた。









--耳を防ぎたくなるような轟音が聞こえるまでは。爆発音に近い轟音は一行の脳裏に"怪物"の2文字をよぎらせた。

「どーやら、怪物さんとやらはあながち噂だけの存在じゃなさそうだな……」

ここに来て初めてラックが口を開ける。口調こそいつものようにのんびりとしているが、他の三人にはそののんびりとした口調が逆に緊張感を与えた。トノに至ってはダンジョンに入るまえに逆戻り。ガタガタと震えている。

「急ぐぞ、ワタッコが危ない」









~~ ちんもくの たに 最下層 ~~

「……ここか」

疲弊しきった状態でただ一人、ダンジョン奥地に佇んでいるポケモン。そのポケモンは荒い息遣いで自分の両腕を眺める。ダンジョンの最下層は真っ暗といっても差し支えがないほどに光がなく、傍から見ればポケモンの正体はつかめない。

「……腕がいてぇのにヒトをこき使いやがってよ。あのクソ野郎が……」

悪態をつきながらそのポケモンは痛む両腕を使いながらカバンから黄色色の水晶玉を取り出す。
水晶玉を地面に置き、ポケモンはすぅっと息を吸い--









「"十万ボルト"!!」

水晶玉に"十万ボルト"を打ち込んだ。さながら命を吹き込まれたかのように水晶玉は黄色く光を発しはじめた。どんどん光は強くなりポケモンの正体が顕になるほどである。そのポケモン--ピカチュウはあまりの眩さに目を覆った。

ピカチュウは恐る恐るといった様子で目を開いた。すると水晶玉が尤も大きな岩へと閃光を出していた。
すると光を浴びた岩は徐々にひび割れて、そして音を立てて崩れ落ちた。







崩れた岩から表れたのは伝説と謳われるポケモン--サンダーであった。サンダーが表れたことを確認したピカチュウは酷く歪んだ笑みを浮かべる。思惑通りなのだろうか、サンダーは雄叫びを上げることすらせず、虚ろな目付きでピカチュウをじっと見据えていた。



--カラン

その時その背後で小さめの岩が落ちるような音が発せられた。無論その音がピカチュウが聞き逃す筈もない。

「誰だ」

冷たい声質でただその二言だけを発する。物音は岩場の隙間から発せられたようでピカチュウは腕の痛みをこらえながら音の発した場所に近寄る。

音の出したのはあのワタッコであった。依頼の通り岩場に挟まって動けないワタッコをこのピカチュウが見つけてしまった。とうてい自分を助けにきた様子でないこのピカチュウにワタッコは戦慄する。

「どうやら見られたらしいな。仕方ねぇ」

そう吐き捨てるように言い、ピカチュウはサンダーに向かって手をしゃくった。










「殺れ。ダンジョンが崩れねぇように手加減はしろ」

ワタッコからしてみれば予想だにしていなかった死刑宣告。サンダーはこくりと頷いて電撃を放つ準備をとった。そして無情にも電撃は、放たれた。






轟音をたててワタッコを拘束していた岩場は轟音をたてて崩れ落ちた。当のワタッコ自身はサンダーの電撃を耐えられずに微動だにしない。

「こいつはすげぇな……」

サンダーの様子から明らかに本気の攻撃ではない。にも関わらずこれほどの威力を見せつけられ、ピカチュウは驚嘆の声をあげた。

動かなくなったワタッコを見てピカチュウは止めを刺すと言わんばかりに近寄った。そして--













『リーフブレード!!!』
「--!!?」

背後から迫った二つの刃。ただならぬ予感がし、ギリギリのところで攻撃をかわす。攻撃の主の姿を見たピカチュウは鬱陶しそうに舌打ちをする。

「ま〜た、てめぇらか。ホンッとしつこい野郎共だな」

轟音を聞いてから来たのであろうこのキモリ、ツタージャ、ミズゴロウそしてその背後でガタガタと震えているニョロトノ。
ライトの傍らでボロボロになって倒れているワタッコを目視したリンがキッとライトを睨む。

「アンタ……そこのワタッコさんになにをしたのよ!!」
「何をって……ちょいと邪魔になりそうだったから痛めつけといただけさ」

怒りを露にするリンに対して今までと変わらずに鬱陶しそうに返すライト。生意気なその口ぶりは彼女の神経を大きく逆なでする。









(--あのピカチュウ……まだ宝玉の効力がきれていないようだな……息遣いが荒い……)

リンとは対照的に冷静にライトの状態を観察するのはラックだ。そこは医師の特技なのか表情だけで
彼の詳しい状態まで看破する。
ここでグラスも前へ踏み出す。

「さぁ大人しく捕まりなさい!!」
「お前には色々聞きたいことがあるのでな」

戦闘の構えをとるリンとグラス。明らかに弱っているライトであるが彼の表情からバカにしてるような余裕は消えない。

「けっ、バカかお前ら?コイツにかなうと思ってんのか?」

そう言い切った時であった。グラスたちが初めてその存在に気がついたのは。
ライトが指示してから気配を悟られぬように上空で音もなく飛び続けていたためにグラスたちはサンダーの存在に気が付いていなかった。

「あ、あれは……サンダー……!?」

震える声をあげてリンがサンダーを見上げる。声にこそは出さないがグラスもラックも目の前の伝説のポケモンにただならぬ様子を感じたのだ。

--明らかにこのサンダー敵(ライト)の手に堕ちている。言わばこのサンダーはヤツの下僕同然であると。

「どうした?さっきまでの威勢の良さは」

ニヤニヤと下卑な笑いを浮かべるライトは楽しげな声質で背後のサンダーの指示を出す。指示を受けたサンダーは倒れふしているワタッコをその嘴でつまんだ。そしてライトもサンダーの背中に乗り、グラスたちに--







「ライメイの山に来い」

一言こう言い放った。脈略のないライトの言葉にグラスが"どういうことだ"聞き返す。

「わからねぇようだな。こんな狭いところじゃコイツが存分に暴れられねぇ。だからもっと広い場所でオレの邪魔をしたお前等をぶっころしてやるのさ」
「--っく!!」
「おっと逃げようなんて考えるなよ。逃げ出したらコイツがどうなるかわからんぜ?」

--ワタッコが人質にとられた。かつて同じ手法をとられたトノはあの時の光景がフラッシュバックする。どこまでもコイツは卑怯な男なのか。









「--明日だ。明日ライメイの山の山頂まで来い。来なけりゃコイツは即座に殺す。わかったな?」

最後まで嘲るような口ぶりのままライトと彼の乗せたサンダーはその場を飛び去っていった。




「サンダー……アイツが噂の怪物……」

そんな強大なポケモンが敵の手に堕ちたことに気落ちしたリンが力なくそう口にする。他のメンバーもこの自体に明らかにモチベーションを落としている。

「皆、一旦戻ろう」

そんな中グラスがリーダーとしてかソレだけを言い残して脱出。他のメンバーも彼のあとを追うように脱出していった。


■筆者メッセージ
原作じゃ伝説ポケは縄張りはいっただけで襲う脳筋でしたがココでのサンダーさんは操られる設定でいきます。いや、アレは色々理不尽やなと思って。

そしてピカチュウのライトは安定のゲスっぷり。この野郎をどうグラス達が叩きのめすかを考えると今から楽しみで仕方ありません。
ノコタロウ ( 2014/02/02(日) 00:15 )