ポケダン救助隊 〜最強と呼ばれた所以〜 - 救助3 ゴールドランク
第二十七話 ゴールドランク!
--トノが仲間になりたいと頼み込んでからはやくも二週間の月日がたった。傷も癒えて屋敷を離れて救助活動に加わったのだが……。









~~ 電磁波の洞窟 ~~

「どわあああああああああああああああぁッ!!」

トノは吹っ飛ばされて壁に叩きつけられていた。しかし彼を吹き飛ばしたのはチームメイトではなくダンジョンに住むライボルトの攻撃を食らったものだった。

遭難した依頼主がこのライボルトに"すみかに侵入するやつはただではかえさん"とダンジョンを行く者達には耳にオクタンが出来るほど聞かされるお決まりの言い訳と共に襲われたためにブラザーズはこの依頼主の救助に向かっていたが……。

「全く……世話の焼けるやつだ……。ラック!援護を頼む!! リン!行くぞ!」
「あいよ」
「わかってるわ!!」

壁に叩きつけられて目を回しているトノをよそにグラスが二人に指示を出しリンと共にライボルトに向かっていく。ラックは"どろばくだん"を生成しライボルトに投げつけた。
"どろばくだん"はライボルトの目の前で音を立てて破裂--散乱した泥はライボルトの視界を奪っていった。そこにグラスとリンが迫る。


『"リーフブレード"!!』


上下から迫る草の刃がライボルトの体を切りつけた。二つの斬撃を真っ向から食らったライボルトは音もなく倒れふす。それを確認したラックは傷ついた依頼主のもとに駆け寄る。

「おぅ、大丈夫かい?」
「はい、おかげさまで助かりました」
「そりゃよかった。んじゃ俺は報告書を出さなきゃならんからお前たちは先にかえってな」

救助隊は本来依頼をこなせばその証明としてチームリーダーが報告書なるものを出さないといけない。たいそうな名はついているがほんの10分程度で終わるものであるが元々人間のグラスはポケモン世界の文字がかけない。なのでその役目をラックが代行している。

彼はひと足先に依頼主と共にダンジョンから脱出。少し遅れてグラス達三人も脱出した。




 ~~~~





「あぁ〜、痛い目にあったのじゃ〜」
「もぅ……無茶するからよ!!」

ひと足先に帰路につこうとするグラス達三人だがトノが怪我を負ったためにグラスとリンの肩を借りながら歩いている。キモリとツタージャの体躯ではニョロトノを支えながら歩くのは多少無理があるのかふらついている。
そんな彼らの足が止まった。決してトノが重い空ではなく広場がなにやらざわついているからだった。何があったのか。




「仲間を助けてくださいお願いします!!」

必死に頭を下げているのは青い体に三つの綿毛がついているポケモン--ワタッコだった。そんなワタッコの頼みを嘲笑うように拒否するのは二人組のポケモン--その二体を見てトノは声を張り上げ、グラスとリンはため息をつく。

「へっ!!オレらがそんなチンケな報酬で動けるかよバーカ」
「なぁリン、もしくはトノよ……」

--オイオイ ナンノサワギダ
--アノワタッコ マタイライヲコトワラレテルラシイゼ
--ナンデアイツラニタノムンカネ
--ソリャシカタネェダロ

ワタッコを足蹴にしているポケモンをゴミを見るような目付きで眺めながらグラスは口を開ける。周囲のポケモン達はその騒ぎを見てヒソヒソ話を始めるが誰一人として助けにはいろうとはしない。

「なんであんなゴミみたいな奴等に救助を頼むんだ?他にもっとまともな救助隊はいないのか?」
「そうね。救助隊がいればね」
「--??どういうことだ?」

--何でトノといいこのワタッコといいあんな救助隊の風上にも置けない奴にまで依頼を頼むポケモンが増えたのか。それが分からず私はリンに聞いた。元々このご時世救助隊の数が激減しているらしい。そのためか優秀な救助隊は一般のポケモンにはとても手が届かないような報酬と高難易度の依頼をこなすために忙しいとのことだ。
そのあとにトノが言っていた。"あんな奴らに一瞬でもすがってたのが恥ずかしい"だと……。


「げぇッ!お、おまえら……!!?」

ワタッコを足蹴にしていたポケモンがグラス達に気がつき声を上げる。トノも釣られて似たような声を上げる。


「お、おまえは……









  誰じゃ?」

その二人組--フライゴンとドンファンは大げさに音を立ててずっこける。慌てて起き上がり立ち直ったフライゴンは大声を上げる。

「お前らとはもう会ってるだろうが!!忘れんじゃねぇよ!!」
「えぇ、忘れたくても忘れられないわ。アンタ達みたいに弱い癖にに強いポケモンの影から威張り散らして、下らないことばかり企んでいるアンタ達のような害獣と害虫なんか忘れたくても忘れられないわね」
『そこまで言うか!!』

まるで悪口のマシンガンのごとくリンは罵詈雑言を並べる。相当恨んでいるのかあれだけ言っても全く悪びれる様子もなく済ました顔をしている。


「お前たち……連行されたんじゃなかったのか?」
「--……ッ!ケッ、俺らは救助隊なんだぜ?ちょっとくらいの悪さなんて許してもらえるもんさ」

一瞬であるが焦りを浮かべたドンファン--グランガ。しかしすぐに表情を切り替えて勝ち誇ったかのように言い張る。
さっきまではリンのこの上ないほどの毒にたじろいていたフライゴン--クラッシャがトノの姿を目視した瞬間に怪しげな笑みを浮かべる。

「おいカエル。なんでおまえがソイツ等と一緒にいるんだぁ?まさか救助隊になったって言うんじゃ--」
「そうじゃ!わしも彼らの仲間になって救助隊になったんじゃ!!」

クラッシャの問いかけを遮るようにトノが言うと--







『なにいいいいいいいいいいいいぃぃ!!?』

そりゃないだろうと言いたくなるほどのオーバリアクション。クラッシャとグランガは思い切り大げさに後ずさる。"なんじゃ"とトノは戸惑った表情。リンはこの上なく冷たい目でクラッシャ達を眺め、グラスに至っては刀に手をかけている。

「お前のような雑魚ガエルが救助隊だぁ!?こりゃ笑いもんだぜクラッシャ!!ハハハハハハ!!」
「おい、悪いことはいわねぇ。お前、救助隊なんか止めとけ。なんつったってよわっちぃからな。ヘヘヘッ」

グランガは地面を叩きながら大笑い。クラッシャはトノを指さして嘲笑う。表では気丈に言い返すも内心は悪口を気にして動揺する。そんなオドオドするトノを見かねてかリンが動いた。








「--ふごぉッ!?」
「あーらごめんなさいっ☆ トリカブトをいける花瓶かと思ったらクラッシャさんの汚らしい口でしたのね」

クラッシャの口に数本の花が投げ込まれた。強制的にその花をくわえさせられたクラッシャはそのまま仰向けに倒れる。"トリカブト"という物騒なワードを耳にしてクラッシャは慌てて口に入り込んだトリカブトを取り出す。その動作からみて誰が見ても怒り狂っていることは見て取れる。

「てめぇ……!!」
「何だ?お前たち、またボロ雑巾のようにみっともない姿になりたいのか?」

これまで黙っていたグラスも見に見かねて口を開いた。リンと同じように開口一番から毒づくあたりそうとうはらただしいのだろう。

「ううぅ……うるせぇ!あの時は兄貴や旦那がいなかったからだ!お前らなんて兄貴や旦那がいれば
お前らなんて一捻り--
「一々うるさいわね!誰も"兄貴やら旦那"のことなんて聞いてないわよ!アンタ達二人があたし達に挑むかどうかってきいてるのよ!!ホンッと頭の中まで害虫レベルになったんじゃないの!?」

ここまで言われればクラッシャだけでなくグランガも頭にこないわけがない。言い争いの空気が悪化して今にも戦闘が勃発しそうな一触即発の空気。クラッシャ達の攻撃が--












「お、おまえたちはッ!?」

--決まらなかった。動揺からクラッシャもグランガも目を見開く。彼らの攻撃を遮ったのはリン達ではなく別のポケモンらしい。周りのポケモン達のざわめきが一層大きくなる

--オイ アレッテ……
--ハジメテミタヨ……
--サイン モラオウカナ……

多くのものがあこがれや尊敬を込めた様子で次々に口を開ける。周囲のポケモン達の注目の的になっているポケモンは濃い青色の体と背中と両腕にヒレを持つ鮫のような風体のポケモン--ガブリアスだった。

「ねぇきみたち〜?また懲りずに弱いポケモンをいじめてるのかな〜?」

ゴツイ見た目に反してガブリアスの口から発せられたのは子供のように高い声と不相応な間延びした喋り口調であった。しかしその喋り方がクラッシャ達の恐怖を一層駆り立てる。
ガブリアスは"ダブルチョップ"でクラッシャ達の首元を両腕のヒレで叩きつけた。ガブリアスは不意に後ろを振り向く。

「ねぇ、リーダー?ちょっとはオシオキしてあげたほうがいいんじゃないかな〜?」
「…………」

周囲のポケモン達はすっと道を開けた。道を開けられた先に立っていたポケモン--バンギラスがガブリアスの元に近寄る。バンギラスが歩き、近寄るだけで辺りに地響きがひびきわたる。



「おい」
『は、はいぃッ!!?』

たった2文字のセリフだけでクラッシャ達は恐怖のあまり震え上がり声を裏返らせる。

「お前たち、そんなに暴れたいのなら俺達が相手になってやろう」
「言っとくけど僕たちは容赦しないよ〜?」

バンギラスは"れいとうパンチ"--ガブリアスは"ダブルチョップ"の構えをとった。技を出さずとも彼らの威圧に耐え切れずにクラッシャ達は裸足で逃げ出す。











『すいませんでしたあああああああああああああああああああああああぁぁぁッ!!!』











「なぁ……あいつ等は誰だ?」
「えぇ!?あの方たちを知らないのですか!?」

言うまでもなく元人間のグラスはバンギラス達を知らない。素っ頓狂なグラスにワタッコは大げさに驚く。

「あの方達はこの辺りでは一番有名なゴールドランクの救助隊です
あちらはガブリアスのキサメさん。そしてあちらがリーダーのバンギラスのバースさんです」

ワタッコが指した先にはガブリアス--キサメ達がポケモン達に囲まれてチヤホヤされていた。キサメは愛想良く接していたがバースは無愛想にそっぽをむいている。

「あっ……そうだ!!



あのッ!」
「--なんだ?」

人ごみならぬポケごみをかき分けてタイラント達の前に立つワタッコ。相変わらずタイラントに無愛想に返されワタッコはビクリと体を震えさせる。

「さっきはありがとうございました!!」
「なんのことはない。また困ったことがあったら俺達に言え。それではな」

彼らの邪魔になっていると察したのかワタッコはすぐさま道を開けた。そんないきさつを解せない様子で眺めているポケモン達--






(おいトノ……)
(な、なんじゃ……?)
(なんで私達はワタッコに礼を言われなかったんだ?)
(言われてみればおかしいのぉ……)





はたから見ればよからぬことを企んでいるようには見えない程真剣な表情。トノもグラスも神妙な顔をしてキサメ達に近寄る。そして--







「"リーフブレード"!!」

■筆者メッセージ
遅れましたが明けましておめでとう御座います。今年もよろしくお願いします!
のっけからどこぞやのドクローズのやり取りのオマージュを書き、リン嬢には悪口のオンパレードをやらせちゃいました;
そして元ネタがFLBのゴールドランク救助隊登場。原作じゃバンギさんが目立たないことにイラっときてバンギさんをリーダーにしちゃいました。後悔はしていない。

※追記(1/11) バンギの名前を変更しました
ノコタロウ ( 2014/01/05(日) 01:30 )