ポケダン救助隊 〜最強と呼ばれた所以〜 - 救助2 引き出された特性
第二十五話 コトの顛末
--宝玉を奪いに来たライト達を辛くも追い払うことができたグラス達。しかしトノが重傷を負ったことによりしばしカエル屋敷に住み、彼の治療を続けていたが……






~~ カエル屋敷 裏庭 ~~


「トノさまーッ!バナさーん!」

屋敷内にて大声でトノ達の名を呼びかけているのはリンだ。まだ治療が残っているにも関わらずトノは部屋を抜け出したので彼女がドクの案内で呼び戻しにかかっている。

「全く……!一体どこに行ったのかしら……」
「まぁ、あの二人なら多分裏庭にいるかと……」












「おいバナよ。準備はできたぞ!」
「嗚呼、じゃあはじめようか!!」

包帯を巻いているトノが裏庭のバトルフィールドにバナと対峙する形で立っている。それが見えたリンは慌ててトノのもとに駆け寄る。

「ちょっとトノ様!!一体何やってるの!!」
「おぉリンか!ちょうどよいところに来たのじゃ!よーく見ておれよ!バナ!!」
「ちょ……!!」

リンが止める前にトノとバナがどういう訳かバトルの構えに入った。仕方ないと思ったリンは力尽でトノを止めようと強行策に出ようとした--







「な、なに!?」

その瞬間--バトルフィールド一帯が豪雨に見舞われた。リンだけが状況が飲み込めずキョロキョロと辺りを見回す。大体の事象を察したのかドクは黙ってコトを見届けている。

「よーし行くぞい!"ふぶき"!」

トノが口から強力な冷気が雨雲に向かって発せられた。"ふぶき"は降りしきる豪雨を瞬く間に氷の塊へと豹変させる。コトが成功したのかバナとトノは満足げな表情を浮かべる--







「いだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」









--まではよかった。しかし氷の塊はバトルフィールド一帯に降りしきりトノとバナに容赦なく降り注いだ。氷の塊はフィールド外にいるリンやドクにまで飛び火し、降り注ぐ。

「おいバカトノ!"吹雪"が強すぎるぞ!!--あいだッ!」
「うーむ……、少し調整の余地がありそうじゃな」

周りが氷の塊の被害を被っているにも関わらず能天気なこのバカトノ。バナも悪態こそついているものの全く周りを気にも留めていない。そんな二人の制裁の準備をせんばかりにリンとドクが準備を始める。

「いい加減に……」
「それじゃ次はさっきの"吹雪"の7割の力で--」












『しなさいッ!"リーフブレード"!("冷凍パンチ")!』










二つの弱点攻撃が直撃。トノとバナは地に落ちた--











-- カエル屋敷 トノの部屋 --

「今後は勝手に外に出たりしないように。わかったわね?」
「ずびばべんべびば(すいませんでした)!!」
「べじだ(でした)!!」

リン達に制裁を食らったトノ、バナは顔を腫れさせて謝っていた。コトをし終えたことで一つ気になったことを思い返す。

--そういえばさっきのトノサマ……なんで"あまごい"を使った様子もないのに雨を降らすことができたのかしら……?

「ところでトノサマ。ちょっと聞きたいんだけど--」
「ん?なんじゃ?」








「なーるほどな……どうやって雨を降らしたのか気になるってことか」

ニヤニヤしながら答えをはぐらかしたトノにブラザーズの面々はイライラを募らせる。屋敷の面々はいつものことながらと呆れ果てた様子で見守っている。

「お前たちに守ってもらったわしの家宝の宝玉があるじゃろ?





--あれを触ったんじゃよ」
「家宝の宝玉って確か隠れ特性が任意で使えるようになる代物だろ?ならお前の特性ということか?」

グラスに"そうじゃ"と返答。ニョロトノには"あめふらし"と呼ばれる隠れ特性が存在する。バトルが始まると大雨を降らせる伝説ポケモンにしか存在しなかった強力な特性だ。それを先ほどは用いたのであった。

「どーじゃ!!これはわし等ニョロトノ一族の専売特許じゃ!!」
「特性強くても頭がバカじゃ意味ないがな」

ナチュラルにトノをバカにするバナにトノ以外の面々も首を縦にふって賛同する。

「そうだ。私も一つ気になっていたんだが--」
「気になったこと?」
「宝玉を奪いに来たあのピカチュウのことなんだが、何故か唐突に苦しみ出したんだ。お前は何か知らないか?」

なんでこいつはこんなに態度がでかいのか、と思いながらもトノは思索を遡らせた。こんなことが思い当たるのはたった一つしかない。トノは秘密の部屋での経緯を話した。









「そ、そんな恐ろしい効果があったのか……」

宝玉の全てを耳にしたグラスは落胆を露にする。露骨に宝玉に触れたそうにしている彼にリンが軽くひじ打ちを食らわせる。

「あれを表に出したら多くのポケモンが屋敷に来て、そして苦しむことになるじゃろて。そうなったらこの屋敷の存続が危うくなるじゃろう--」

おふざけばかりしているトノもいつになく神妙な面持ち。辺りの空気も重苦しいものとなる。そんな空気を打破するかのごとくラックが前に出る。

「さて、俺達の仕事も終わったことだし……そろそろ御暇するとしますか」
「おっ!待ってくれ報酬を渡したいんじゃ!!ボン!ドク!」
「は〜い」
「……わかりました」

トノに命じられて従者の二人は部屋を出る。

「長いこと住まわせてもらってるのにいいって……」
「遠慮するでない!わし等はもう同士ではないか!!ハッハッハ!!」
(おい、バカトノ……)
(わ、わかっとるわい……)

明らかに無理をした馬鹿笑いを浮かべるトノにこっそりとバナが蔓の鞭で小突いた。トノの顔にはわずかながらシワが寄っている。その表情には緊張の2文字が伺える。


「トノさまー、持ってきましたよー」

ボンとドクが持ってきたのは数多の道具袋。二人も使わせた辺り結構な数になっている。

「おおおおおおう!!ごくろうじゃったな……。さぁさぁ受け取ってくれ」
「こんなに沢山と済まないな。ありがたくいただくぜ。グラス、持てや」
「って、何で私だけにもたせるんだ……」
(リンにもたせると"オンナにもたせるとか"云々うるせーんだよ……)

ラックがグラスに耳打ち。リンに"何話しているの?"と聞かれたがうまいことはぐらかす。こうしている間にもトノは深呼吸をするも動きを見せない。

「それじゃあたし達はこれで--」
(何やってんだバカトノ!とうとう帰っちゃうぞ!)
(わ、わかったわい!)
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」

意を決したトノの制止にブラザーズは帰路につこうとした足を止める。緊張をしながらも真剣さを含めた顔つきの真意はトノとバナ以外は知る由もない。極度の緊張でポタポタと汗を垂らしたトノの身を案じたボンはというと--

「どうしたんですかトノサマ?そんなに汗をかいて……」
(……なるほど)










「そんな暖房ききすぎたかな?」






【そんな訳ないだろうがッ!!】

--ドテッ!!

素っ頓狂なボンにバナとドクは大げさに転ぶ。事情を察したドクがこっそりとボンに耳打ちをして教えた。

「お前たちブラザーズにもう一つわしからの頼みがある--」
『頼み?』
「そうじゃ……わしを--














ブラザーズの仲間に入れてくれッ!!!」
『……へ?』

いきなり何を言い出すのかと思えば仲間にして欲しいとの頼み。予想だにしていなかった彼の頼みに三人は素っ頓狂な声を出す。何故かボンまで似たような声を上げるが"わかってるだろ"と言わんばかりにバナにドつかれた。

「お、俺達の仲間になるって……一体どういう風の吹き回しだぁ?」
「突拍子もないことを言ってすまぬ。だがわしは冗談じゃなく本気で言っている!頼む!」
「----わかった」
『グラス!?』

意外にもすんなり受け入れたことにラックもリンも驚きを隠せない。それもそのはずこんな素っ頓狂な頼みを受け入れるほうが普通ではない。

「--まぁリーダーのお前がいいというなら俺は何も言わん」
「--仕方ないわね。でも、やるからには途中で投げ出したりしたら承知しないからね!!」
「ありがとう!恩にきるぞ!!」
「--でもそのかわり」

"へっ?"と間の抜けた声のトノ。一体何を言われるのかと身構える。












「その体じゃ救助活動なんてできないからあと二週間は治療ね」
「そ、そんな〜」


■筆者メッセージ
Q、なんでトノが仲間に?
A、はっちゃけてバカやるキャラが欲しくなったから。次章からのカエル先生の次回作にご期待ください()
ノコタロウ ( 2013/12/25(水) 11:49 )