第二十四話 宝玉の正体
--トノを脅迫し宝玉を奪い取ろうとしたライトだったが、宝玉に触れた瞬間から叫び声を上げて崩れ落ちた。彼の身に一体何があったのだろうか……。
~~ カエル屋敷 隠し部屋 ~~
「グアアアアアアアアアアアアアァァッ!う……腕が……腕があああああああああぁぁぁッ!!」
「ライト!?おいバカトノ!!てめぇ一体何しやがった!!」
味方の異変に戸惑ったガマが倒れ込んだトノに詰め寄った。トノは弱々しく立ち上がりガマを睨みつける。首謀者のライトの様子が変わってからかトノの表情は若干の余裕が生まれている。
「はっ、ガマよ……お前わしの従者だった癖に何も知らんのじゃな?」
「なんだとぉ!?」
さっきまでの冷徹な態度から一変、またもトノ相手に激昂するガマ。二人の立場が裏切り発覚直後とは正反対となりガマがトノの胸ぐらをつかみにかかっている。クラッシャだけは状況が飲み込めずに当たりをキョロキョロと見回す。
「おまえもバカじゃのぉ。あの宝玉は確かに触れた者に新たな特性を付加させる力が宿っている……」
「--!!そういえば確か……」
「そうじゃ。あの宝玉は邪な心を持った者が触ると体に長い期間激痛が走る……。それが以前わしの身にも起こったから宝玉を封印した……そう話さなかったか?」
全てを思い出したかのような態度でガマはハッとすると同時に多大な屈辱感を植え付けられた。自分が見下していたこのニョロトノにしてやられた自分に対しての悔しさが立ち込める。
「こんの……糞蛙があぁッ!よくも……おれの腕をおおぉッ!!」
腕の激痛に耐えながらライトが吠え、トノに殴りかかろうとするも腕の激痛に耐えかねて崩れ落ちる。そのままライトの体はガマに指示されたクラッシャの背中に乗せられた。あわてふためいたガマはバッグから不思議珠を取り出すも不思議珠は機能しない。
ダンジョンでないカエル屋敷では不思議珠は機能しない。しかし慌てていたガマもトノもこの時は全く気がついていなかった。
「逃げろッ!!」
ガマとライトを背負ったクラッシャは自分たちの退路を防ぐように立っていたトノを突き飛ばして隠し通路を逃げていく。待てと叫びながらトノもガマの後を追おうとするも体力に限界がきたのかバタリと音をたてて倒れ込んだ。
~~Side グラス カエル屋敷 入口 ~~
「よし……!!もうちょっとだな……!!」
先ほどから屋敷の中からあのピカチュウの叫び声が延々と続いている一体何故奴が叫んでいるのかは分からないがそこに奴がいるとは容易に想像できる。私とリンは案の定声のしたほうに行ってみるとあのガマゲロゲとピカチュウを背負ったフライゴンが慌てて屋敷から出ようとしていた姿があった。
「見つけたぞ……」
「な、何故ここがバレた……!!」
ここは屋敷の者しか知り得ない裏口とのことだがそんなことは関係なかった。
「いや……そのあれだけアンタ達に仲間が大声で叫んでたら誰でも気がつくでしょ……」
隣のリンもあきれ果てている。あのフライゴンの背に乗っていたピカチュウが延々と耳を塞ぎたくなるような呻き声をあげつづけていたからだ。そんな声なをあげていたら"私はここにいる"と敵に知らせるようなものだろう。
「ガマよ……私はここのポケモンを裏切ったお前を許すことは出来ない……。覚悟してもらう……」
「--今更アンタ等に許してもらおうなんて思ってない!!」
ガマが波状で紫色のヘドロ--"ヘドロウェーブ"で攻撃を放ってきた。さっきは不意を打たれて攻撃を食らったが今度は正面だ。パワーこそあれどスピードはそれほどだったから私もリンも簡単に攻撃をよけていく。
『"リーフブレード"!!』
驚くほど簡単に決着がついた。まぁさすがにガマゲロゲが二体分の草技を食らったらひとたまりもないだろう。二回の斬撃を食らったガマは音もなく倒れ込む。味方が倒れてあのフライゴンはそれは情けない表情で辺りをキョロキョロと見回した。
「さぁ……アンタもこのままボコボコにしてあげようかしら?」
今まで邪魔してきた恨みからだろう。リンはフライゴンに指をボキボキとならしながら詰め寄った。言うまでもなくアイツはガタガタと震えている。そしてアイツがとった行動は--
「すいませんっしたああああああああああああああああああああああッ!!」
土下座だった。大人しく捕まるからボコボコにはしないでくれと懇願してきたのだ。それでも殴ろうとせんばかりのリンを制止する。向こうから降参したのだからこれ以上の戦闘は無意味だろう。それでもリンは不服そうだったのだが……。
「おい、教えろ。屋敷の者はどこに監禁した?」
倒れているガマをたたき起こし、見かけなくなった屋敷のポケモン達の居場所を尋ねる。ガマは答えたくはなさそうだが首に剣を突きつけてから怯えて口を開けた。
「あ、あいつ等なら……偽物の宝玉が隠されてる部屋に……」
「そうか、リン。私はこいつらを見張るから保安官に連絡と屋敷の者を助けてやってくれ」
「う、うん!!」
従者の者達を助けにいったリンを見送った私は一息ついていた。そのときに私に耳にはスクっと起き上がる動作の際に発せられる音が入った。--奴だな。
「くたばれやああああああああああああああああああああああああああッ!!」
あの姑息なフライゴンだ。大方油断している隙に不意を打って逃げようとでも考えているのだろう。フン、あんな奴の考えてることなんて想定済みだ。奴の攻撃を軽くいなそうと振り向いた先には私の想定していない光景が眼前に広がっていた。その先には--
「全く……、みっともないにも程がありますね……」
あのフライゴンを"りゅうのいぶき"で倒していた見知らぬサザンドラの姿があった。奴は一体何者だ……。
「お前は一体誰だ?」
「ご心配なく……ワタシはあなたと戦いにきたのではございません。この方たちを引き取りにきた者です」
「引き取りにきた……。ということはアンタは保安官ということか……」
そう問い詰めるとサザンドラはニッコリ"えぇ"と一言。凶暴ポケモンらしからぬその笑顔の裏がありそうでどこか恐怖を感じたが……まぁ大丈夫だろう。
「この御三方はあとはワタシが面倒を見ます。それでは……」
それだけ言い残してあのサザンドラはフライゴン達三人を連れていってその場から去っていった。