第二十三話 ニョロトノのトノ
※注意!!
・(ノコタロウにしては)ガチシリアス話でやや酷い描写有り(特に後半)です。
・ノコタロウはシリアスが特に下手くそです
・葉炎は構成に煮詰まってるので更新予定日はわかりません
これらが我慢できない方は早々にブラウザバックされることをおすすめします。
約束だおヾ(❀^ω^)ノ゙
~~ Side Out 屋敷のはずれの森 ~~
「大成功だな!旦那!!」
「はっ、お前の古株の兄貴を切り捨てて大成功とは良くいうぜ」
ドンファンのグランガを見捨てておきながら喜ぶクラッシャをガマがたしなめる。--が、その口ぶりとは裏腹にガマもクラッシャと同じようにニヤニヤとしている。
「おい」
彼らの前を歩いていたライトが不意に振り向く。その顔はピカチュウの本来のかわいらしい顔とはかけ離れた厳しい顔つきだ。
「なんですかい?兄貴--」
「チッ……なんだよ--」
「この役たたずが!!」
罵声と共にライトの強烈な腹パンチが飛んだ。あまりのパンチの強さにクラッシャもガマも腹をおさえながら膝をつきライトを見上げる。
「おいガマ。てめぇ何やらかしてやがる!!おれがさっき気がつかなかったらてめぇ等はこんな偽物(ガラス玉)をつかまされたところなんだぞ!!」
尋常ではない剣幕でライトがガマ達を怒鳴りつける。激昂したライトは偽物の宝玉を地面に叩きつけて勢い良くパリンと音を立てて砕かせる。偽物の破片が辺りの草むらに飛び散っていく。
「で、でもよ兄貴--」
「てめぇは黙ってろ虫ケラ!ガマ、何の為にお前をスパイに向かわせた?まさかお前、あの領主が気に入らなかったからって媚び諂うこともしなかったんじゃねぇだろうなぁ!?あぁ!?」
ガマは何も言い返すことができない。事実スパイであった彼はトノに気に入られるばかりか嫌われてしまい、その結果偽物をつかまされてしまった。このミスの原因は明らかにガマである。ライトは"くさむすび"でガマを拘束する。少しでも動けばその草でガマで絞殺する気であろう。
「時間がないから今すぐにでも本物を奪い返す!!今度宝玉を奪い取れなかったてめぇをその場でぶっ殺す!!わかったな!?」
「わ……わかったよ……」
「チッ……!愚図が……ッ!!」
そう吐き捨てるように言い放ち"草結び"を解いて乱暴にガマを地面に叩きつける。苦手の草に首やら体やらを締め付けられてガマは噎せ返る。同時にライトに対する激しい殺意の念に駆られる。所謂逆恨みってところだろうか、先立って屋敷に向かって歩くライトに向かって殺意を込めて睨めつける。
「だ……旦那?どうしたんですかい……?」
「なんでもねえ……」
~~ Side グラス カエル屋敷 トノの寝室 ~~
「まさかガマ君が裏切り者だったとはなぁ……」
毒に侵され、皮膚が紫色に変色したトノの身を案じたバナは苦い顔。無論ボンもドクも私達も同じだ。しかし肝心のトノは神妙とは程遠い面持ちで歯ぎしりの音を出す。相当裏切りに対して怒っているのだろうか……。
「以前からトノ様に恨みつらみを言っていたけど……本気だったんだね……」
「…………」
唐突にトノが勢い良く近くの机を叩いた。その右手は怒りで小刻みに震えていることは目に見えており彼の顔は厳しいものだった。
「あの裏切り者めッ!!わしを……いや、わし達に刃向かいおってッ!!」
「トノ……」
旧友のバナでさえ、普段は決して見せないトノの怒り顔に唖然としている。ニョロトノ特有のふっくらとした手が、さながら"てつのこぶし"でも持ち合わせてるかのごとくキツク握り締められている。
「どうするんだトノ?宝玉はガマく……ガマ達に奪われたんだぜ?」
「宝玉……そうじゃ!!」
ガマの裏切りで脳から飛んでいた一言"宝玉"。トノはそれを思い出しポンと音を立てて手をたたいた。本来の目的をあっさりと忘れる辺りが彼らしい。さっきまでに尋常ではない剣幕から一転ざまぁみろとでもいいたげなトノの顔は一体どうしたのかと思わざるをえない。
「トノさま……どうしたの?」
「皆の衆……聞いて驚くでないぞ……あのガマの野郎達に奪われた宝玉--
--あれはニセモノじゃ」
……はぁ?
『なんだってええええええええええええええええええええええええええッ!!?』
トノ以外全員から発せられた驚愕の声。ちょっと待て!ニセモノってどういうことだ!?
「おいバカトノ!!どういうことだよ!?」
私達が言いたいことを代弁するようにバナがトノに詰め寄る。トノはしたり顔で"ちっちっち"と片指を振る。
「お前たちよ。最近ガマの奴わしの命令に背いたじゃろ?」
「まぁ……確かに最近はガマに命令しても"そのうちする"としか言ってなかったですよね」
ボン曰く、最近のガマは明らかに仕事を放棄してたりと不真面目さが際立ってきたとのコト。そのためかトノの信用を著しく落としてしまったのだとか。
「だからアイツにはニセモノの宝玉をずっと守らせて置いたんじゃ!!いやー、裏切り者を見越してダミーを設置するとは流石はトノ様のわしじゃ!!」
「ほ、本当なのトノ様!?」
「まぁ、どーせこのバカトノのことだ。ガマに徒労をさせて影でコソコソ笑ってやろうって魂胆に決まってるよ」
……なんだろう。バナの言っている事の方が妙に説得力を感じさせられる。顔にざまぁみろと書いているトノの顔に呆れ果てたドクが口を開く。
「……またあいつ等が宝玉を奪いにくるのでは?」
「そうだな。チームブラザーズよ、また奴らを止めてはくれぬか?」
当然だな。無論ラックもリンも引き受ける気だ。
「ではブラザーズは屋敷の警備にあたってくれ。バナ、ボン、ドクは少し残ってもらう」
「はぁ……」
それだけ言い残してトノは私達を部屋から出した何故彼が従者の3人を残したのか……。
~~ Side Out ~~
「で、話ってなんですか?トノ様」
「…………」
呼び止められて若干めんどくさそうなボンとドク。トノ様相手というにも関わらず腕組みをしている辺りトノの威厳は地に落ちてるのだろうか。だが普段ならそんなことも気にしているトノだがまるで気にも留めておらずトノは3人を睨むように見渡している。
「--下手な小細工は見飽きた……。そろそろ正体を表してもらおうかのぉ」
「--!?な、何バカなこといってやがんだバカ殿?お前まさかガマに裏切られて疑心暗鬼になってんのかぁ?」
「そうですよトノ様!!こんなときに仲間割れなんてアイツ等の思うつぼですよ!?」
本来ならトノ相手に焦るなんてことは絶対にしないバナとボンがあわてふためく。ドクも口には出さないものの普段の冷静な態度からは想像もできないほどに取り乱している。
「果たして、そうかな……」
トノの口から"ハイドロポンプがバナ達に向けられて発せられた。バナ達は"ハイドロポンプ"をかわし文字通り化けの皮を自らはがして正体をあらわした。
「やれやれ……どうしてバレちまったんだろうな」
さぞつまらなさそうにしたのはドクに化けていたピカチュウ--ライトだ。その態度からトノを侮っていたのは目に見えている。
「姿だけ化けたところでわしは騙せん。あいつ等とは長い付き合いじゃからの。
まぁ仲間なんて切り捨てるようなお前たちには分からぬ問題じゃがな……」
「フン、おれ達はてめぇのウンチクを聞きにきたんじゃねぇんだよ」
化けの皮をはいでから不遜な態度を露骨に表すライトにトノはキッと睨めつける。
「バレたら仕方ありませんね、トノ様。取引をしませんか?」
「取引だと……?」
今までトノに対して感情を爆発させていたガマとは思えない程冷静かつ余裕を感じさせる彼の口ぶり。その余裕にトノは一筋の冷や汗をたらしていた。
「単刀直入に申し上げましょう。貴殿の宝玉を我々に渡して頂きたい」
「な……なんだとぉ!?」
今までのガマ達だと力尽でも奪い取ろうかとしていたのに自ら"交渉"と言い放ってきた。当然だがトノは"ありえない"と一蹴しようとする。
「もちろん断っていただいても構いませんよ。ただし、その場合貴殿の大切なお友達が少々危険な目にあいますが……」
「ど、どういうことじゃ!?」
ライトに顎で使われたクラッシャが取り出したのは縄で拘束され、ボロボロになっているボンの姿があった。そんな状態のボンをライトが足を踏みつぶす。その様子をニヤニヤと眺めるガマがトノに振り返る。
「ボンが人質だといいたいのか!?」
激昂するトノにガマは鼻であしらう。このまま奴らの要求を飲まない限りボンだけでなく他の屋敷の者達が襲われる。トノの脳裏に最悪のシュチュエーションがよぎった。ガマ達は"ククク……"と余裕の笑みを浮かべているのとは対照的にボンは苦しそうに呻き声をあげる。
「……わかった」
「物わかりがよくて助かりますよ。僕もこれ以上昔の仲間に手をかけたくないのでね……」
どの口がそんなことを言うのか。今すぐにでも奴らを殴ってやりたかったトノだが状況だけに逆らうことができない。彼の枕元に隠していたスイッチを取り出しそれを押す。
「……ほぅ」
腕組みをしていたライトが初めて興味深そうに見つめていた先はトノのベッドが音を立てて横に動いている状態だった。ベッドがあった先にあったのは隠し通路だった。
「ついてこい……」
トノがライト達を連れていった先は暗室に厳重に飾られていた宝玉であった。
「ここじゃ……」
「ふっ、ご苦労だったな……」
トノの体からバチッと音が発せられた。ライトの"雷パンチ"だった。電気技を背後から食らったトノは声を上げることもなく崩れ落ちる。
「宝玉を奪ったらこの屋敷をぶっ壊してとんずらだ。お前ら、準備しろ」
「ヘイ!」
「まて……約束が……違うぞ……ッ」
宝玉に手をかけようとしたライトに地面に這いつくばったトノがライトの足を掴む。足をつかまれたライトはまるでゴミを見るような目付きでトノを睨む。
「宝玉を渡せば……屋敷の皆は無事だと言ったじゃないか……」
「屋敷の奴ら……嗚呼そんなことも言ったっけなぁ……」
「何だとぉ!?」
変わらない目付きでトノを見下すライト。その非情な目付きにトノは絶望を植え付けられる。ライトの目付きはハナから約束なんて守る気のないものだ。
「バカかお前は?おれ達が約束なんて守る訳ないだろぅ?なぁお前ら!?」
『ハッハッハハッハッハ!!』
ライト達三人は高笑い。無力な自分にトノは思わず涙をこぼした。そんな姿を見たライト達はより一層彼をあざ笑う。それでもトノはライトの足を離さずにてこでも動かない。
「お、お願いだ……わしはどうなってもかまわん……。だから……!!あいつ等は……わしの仲間だけは……ッ!!」
声は涙声、姿はボロボロ。地に這いつくばった姿のトノは全てを捨てる覚悟でライトに懇願。しかししつこいとしか感じていないライトがしびれを切らしたトノの足を勢い良く踏み潰す。声にならない声を上げたトノにライトが勢い良く叫ぶ。
「正直虫酸が走るんだよ……!!仲間だとか友達だとか……!!おれはお前らみたいな言動を見るとムカツクんだよッ!!」
トノを"十万ボルト"で振り払ったライトはとうとう宝玉に手を近づけてた。そして彼が宝玉に触れたその瞬間であった。
「グアアアアアアアァァァァッッ!!!!?」
『--!!?』