第二十一話 敵襲 リンvs????
~~ Side リン カエル屋敷 ~~
「はぁ〜あ……暇なのじゃい……」
翌日、トノ様が他の従者のポケモン達が出ていってから退屈そうな顔であくびをしつつ鼻をほじっている。他の従者の方達は仕事等があるからと屋敷を出ていったらしいけどこの殿様は他にやることないのかしら……?
「ったく……殿様なのに鼻をほじるんじぇねぇっっての……」
そのトノという名らしからぬ下品な姿にあの人--ラックも呆れ果てた様子で吐き捨てるように言い放つ。ちなみにグラスは外で剣のすぶりをやっているとかだって。
『--!!?』
唐突に屋敷の外で発せられた爆発音。それが予告状の主によるものであるとあたしとラックも察した。唯一トノ様だけは慌てた様子で辺りをキョロキョロと見回す。
「ようやくおでましのようね……」
「だな。リン、お前はトノ様の護衛だ。俺はグラスと首謀者を探しに行く」
「わかったわ」
それだけ言い残してラックは去っていく。
その後、そのタイミングを見計らったかのごとく敵ポケモン達があらわれる。
「よぉ殿様よ。あんたの宝玉を奪いにきたぜー」
集団であらわれるあたりこいつらは首謀者の手下なのか、一体一体は大したことなさそうだけど集団でこられると骨が折れるわね……。
「あれはワシの宝物じゃ!お前らなんぞには渡さぬ!!頼むぞリンよ!!」
~~ 数分後 ~~
「"火の粉"!!」
「クッ!!」
手下ポケモンを半分程度には減らしたものの後ろからのマグマッグの"火の粉"をまともに受けてしまった。火の粉を使う辺りレベルは低そうだから一発で大きなダメージを受けることはないけど流石にこの数を相手にすると何度も受けられないから蓄積ダメージをためるのは辛いわ……。
火の粉を受けたダメージから膝をついたあたしのもとにまた敵ポケモンが襲いかかる。デンチュラの"いとをはく"が飛んできて拘束される。
「くっ……動けない……!!」
糸に自由を奪われ容赦なく絞め上げられる。そんな隙だらけの状態を敵が見逃す訳もなく敵達が一斉に襲いかかってきた--
『ハイドロポンプ!!』
--筈の敵ポケモンをどこから飛んできたかわからないハイドロポンプが吹っ飛ばした。一瞬トノ様が手を出したのかと思って彼の方に振り向いたけど、その戸惑いを見せた様子から彼でないことはわかった。じゃああのハイドロポンプは一体誰が……?
「リンさん!トノ様!ご無事ですか?」
ガマさん!助太刀に入ってきたのはいつもの用事から外出していた筈の従者のガマゲロゲ--ガマさんだった。何で彼が今ここにいるかはわからないけど助かったわね。ガマさんの手で残った疲弊した手下達を容易く蹴散らしていく。
「ガマよ!何故お前がここに!!」
あたしも気になっていたことを先にトノ様が尋ねる。やっぱりトノ様の顔を見た瞬間にガマさんの表情が豹変したのはやっぱ気のせいじゃないのかな……。
「はい……、どうも嫌な胸騒ぎがしたので切り上げて戻ってきたんですが……。やはり敵襲でしたか……。」
倒れている敵ポケモンを見渡しながらガマさんが苦い顔をしてボソリと呟く。すると彼は何かを思い立ったように--
「奴等の狙いは宝玉なのは目に見えています。僕は宝玉の見回りをしてきますのでリンさんは引き続いて殿様の護衛を願えますか?」
「うーむ……そうじゃな。頼むぞいガマ!」
「はい……」
『ちょと待ったあぁ!!』
聞き覚えのあるこの腹立つ声質……、またあいつ等ね!!
「ケッ、てめぇらと合うのは数日ぶりかな?」
「あんたたち……!!」
表れたのは以前あたし達を妨害していたあのフライゴンとドンファン。トノ様もあいつ等のことは見覚えがあるのか指をさしてびっくりしている。
「お前はあの時の……
フライパンじゃな!?」
「誰がこんなので目玉焼きでも焼くってのよ……!」
突拍子もないトノ様のボケにあのフライゴン以外の面々が嘲笑を込めた笑いを浮かべる。それはあの兄貴分であるドンファンも同じだった
「兄貴ーッ!何とか言ってくだせぇ!!」
「あら?自分では何も言い返せないのかしら?」
馬鹿にされて苛立ったあのフライゴンが兄貴のドンファンに泣きついた。ったく……あいつは一人じゃ何もできないヘタレなの!?
「おぅオメェら!
おいしいホットケーキを焼くの忘れてねぇか?」
「兄貴まで!!」
「あのー、そろそろいいでしょーか?」
こいつらは茶番をしにここに来たのかしら?そろそろかかってきたらと挑発するとあいつ等は本来の目的を思い出したかのように"そうだった!"と言っていた。やっぱりこいつらバカなの?
「何をしておるガマよ!!さっさと宝玉の護衛につかんか!?」
「--!!?」
バッカトノッ!なんでわざわざ敵の前でそんなワード使うの!?案の定、ドンファン達は"宝玉"って言葉に反応して目の色を変えてきた。
「クラッシャ……おめぇは宝玉の居所を探せ。俺はこいつらの相手をする……」
「なんでですかい!?俺だってあいつ等にやりかえしたい--」
「俺の言うことが聞けねぇってのか!?あぁ!?」
「すいやせんしたーッ!!」
ドンファンに怒鳴られて情けない声を上げながらフライゴンの方は矢のようにこの場から去っていった。その後を追うようにガマさんがあのフライゴンを止めようと去っていった。それを一通り確認したドンファンがこちらを見てニヤリと口角を釣り上げる。
「"氷の礫"!!」
「ッ……!!」
ドンファンの"氷の礫"が襲いかかった。先制攻撃らしいはやさだけに防ぐのさえ精一杯だった。しかしドンファンは余裕があるのか連続で"氷の礫"を放ち続ける。連発しているだけに一発の氷の塊は小さいけどあれだけの数を攻撃なんか受けてらんないわね……。
「あの"氷の礫"の弾幕……リンはどうやって突破するんじゃ……?」
トノ様が危惧するのも無理はない。連続で放たれる氷の塊はドンファンへの攻撃は完全に遮られてるばかりか、こちらの方が防戦一方になっている。どうにかしてこの状況を打開しないと……!!
「トノ様!!」
「ん?なんj--」
「あたしのバッグから"ひでりの珠"とって使って!!」
「はい?なんで--」
「いいからッ!!」
「は、はいぃ!?」
アイツの氷の塊を防ぐので精一杯だからあたしじゃバッグをあさる暇さえない。だから後ろのトノ様に頼んで代わりに使ってもらった。
「あったぞい!ホレッ!!」
殿様が"日照りの珠"を掲げた刹那、辺り一体が真夏のような熱気に覆われ、水タイプの殿様が暑さで辛そうな顔をしているけど、コレなら……!!
「な、なんだぁ!?"氷の礫"がぁ!?」
決まった!ドンファンが戸惑いを見せたのは奴が出した"氷の礫"が全て水滴になって溶けていったから、その後も何度も氷を出すも、出した瞬間からあっという間に水滴と化して蒸発していったから。
「そうか!氷を溶かすためにあえてひざしを強くしたんじゃな!!これであのドンファンは氷技を使えまい!」
「これでしまいよ!"リーフブレード"!!」
「ぐおおおおぉぉわぁぁッ!!」
リーフブレードは直撃はしたもののドンファンは物理防御が高いポケモン。一発では倒れずにまだしつこく持ちこたえている。
「チッ……一旦引いてボスに報告--」
「逃がしゃしないわよ!!」
ガシッと音を立てて今度は蔓がドンファンを拘束。ジタバタともがいているもののそう簡単に放す筈もない。
「アンタ達……またあのマンムーに命令された訳?」
「はっ!お前らなんかにそんなこと言える訳……」
立場をわきまえていない不遜な態度。そんな奴にはもう少しキツク絞め上げておかないとね。
「わかった!言う!
あの豚野郎……俺達を見限って自分からポリスに自首しやがったんだ……」
「自首したの?あのマンムーが?」
「嗚呼……それで行き場を失った俺達をあるお方が拾ってくださった……その方がここの宝玉を狙ってたから俺達も--」
「ここを襲撃してたまたまあたし達と遭遇したと……。それで、あんたたちの新しい親玉はどこにいるの?」
「」
「リンよ……お前が強く絞め上げるからこやつ、のびておるようじゃぞ」
しまった……。これじゃ情報を収集できないじゃない……。