第五話 待ち受けた依頼
--ブラザーズ基地--
「ぬっ……もう朝なのか……」
鳥ポケモンの鳴き声が彼の目覚まし代わりとなったのか、いち早く目を覚ましたグラス。彼はゆっくりと背伸びをし、ベッドから降りた。
「二人ともまだ寝ているな」
ラックとリン。二人とも寝息を立ててまだ寝ている様子から相当朝が早いのだろう。グラスは手にとった剣と共に外に出る。
「んあ……?」
「おはよう……。ちょっと、顔がすごいことになってるわよ……」
それから時間が立ち、ラックもリンも目を覚ました……。のはいいがラックの方はいつものクールな雰囲気がぶち壊しになるほどのひどい顔立ちとなっていた。
「顔……洗ってきたら?」
「嗚呼、そうさせてもらうよ……」
「……あれ?そういえばグラスは?」
まだ彼は寝ているかと思い、リンはベッドを見渡す。しかし彼の姿はなく彼女は外にいるのではと考える。
「おはようグラス。……何をしているの?」
「おぉリンか。ちょいと早起きしたんでちょっとな……」
ちょっとなと続ける前に何をしているのかは容易に読み取れた。彼は転生した時から所持していた剣で素振りをしていたのだ。
「その剣……。人間の時から持っていたの?」
「わからん」
「…………」
真顔で即答されるものだからリンもずっこけそうになっていた。と、これ以上話が続かなくなり話を切り替える。
「そういえばさ、グラスは知ってる?救助隊スターターセットのこととか?
って、知ってる訳ないよね」
「嗚呼、知っているぞ」
「ですよねー……
ってええええええええええええぇ!?」
救助隊の一式が届いたのはグラスが寝ていた時、彼が知っているとは到底考えにくいのだが……。
「それはオレが教えといた」
と、事件の真相を説明するような口ぶりでラックが答えた。既にいつもどおりの顔つきへと戻っていた。
「教えといたって……。グラスはあの時寝ていたんじゃ……」
「そうだ。だからオレはこいつを使ってグラスに睡眠学習をしておいたのさ」
ごそごそとカバンから取り出したのはいかにもいかがわしい装置であった。
「これを寝ているグラスに付けて救助隊スターターセットのことをわずか一時間たらずでバッチリ記憶に叩き込んでいたのであったー!イエイ☆」
「”イエイ☆”じゃないから!何この超展開!てかそんな凄まじい兵器持っていたら簡単に一生遊んで暮らせそうな大金が手に入りそうなんだけど!!」
あまりにぶっ飛んだ彼の説明にリンが大声で突っ込んだ。その声量は鳥ポケモンのさえずりを消すどころか、鳥ポケモンがしっぽを巻いて逃げ出すレベルである。
「で……本当にグラスは覚えているの?」
「もちろんだ。まず救助隊で一番大切な救助隊バッジ。これは主に依頼主の送還、依頼達成後の帰還、特定のダンジョンの脱出に必要不可欠な道具だ。あとは救助隊の証明である為ランクアップするごとに色合いが変わる。それから地図についてだが……」
「わかった……。十分理解してるみたいだから……」
このまま続けさせる意味もないし、リンはストップをかけた。
「さて、そろそろ……」
「おらよ!郵便ッ!!」
「ふごっ!?」
郵便配達であろうペリッパーから、お世辞にも丁寧とは言えない投げ方で手紙をグラスに向けて投げ飛ばした。幸か不幸かその先に待っていたのはグラスの口の中……。
「わーお☆」
「ないすこんとろーる……」
手紙を加えた状態でノックアウトしているグラスを見て2人共驚嘆の声を上げた。こころなしかラックのほうは喜んでいるようにさえ見える。
「くそっ!なんて奴だっ!あとで本社に講義の電話をかけてやろうか!」
「いやいや……抗議だから……。なんで大学の授業をsk●p●通話で行うみたいな言い回しになってんのよ……」
グラスにツッコミながらリンは彼の口に突っ込まれた手紙を取り出し、その内容を確認する。
「えっとなになに?
ふーん……」
「どうしたんだ?」
手紙を読んで一人頷くリンにラックが近寄る。そして……。
「なるほど。さっぱりわかんない!」
--ズデッ!
さっきまでツッコミだったリンがこの体らく。さじじゃなく手紙を投げ捨てたリンを見てグラス達はド派手にずっこけた。
「おい……」
「だって読みにくいんだもーん」
「ったく……。まぁたしかに読みにくいがなぁ……」
あきれ果てたラックはリンの捨てた手紙を拾い読み始める。たしかにその字は非常に乱雑であり、次第にリンが言った”読みにくい”に賛同する。
「どうしたのだ?」
「電磁波の洞窟とやらに変な奴らが紛れ込んだとのことだ。そこに依頼主のポケモンがとじこめられてるとのことだ」
「なるほど……救助と討伐の依頼って訳ね……」
「どうするよ。リーダー」
と、この瞬間までグラスは誰がリーダーがつとめることになっているか知らなかった。彼はキョロキョロと辺りを見回すが。チームの2人は明らかに自分をむいていた。
「あれ……?ひょっとして……リーダーって……私?」
「そう!!」
ピッタリと声を揃えてそう言われグラスはうなだれた--私に知らない間に勝手なマネをしおってからに……!
「仕方ない……行くか。電磁波の洞窟とやらに案内してくれ」
「あいよ」