第十三話 黒い影と黒い心
〜〜注意事項(ちゅうさんじこう)〜〜
・この小説は探検隊のギャグ主体のまったりほのぼの系のお話とは違い若干シリアスメインです。
・特定のポケモン種族の扱いが悪いですが、それはあくまでも冗談なので真に受けないようにお願いします。
・この小説ではポケモンの単位を"人"と換算してます。なんで
"二人のポケモンが--" みたいな表現が飛び出したりするのでご了承をば。
・ツタージャかわいい
以下本編どうぞ。
「ったくあいつ等め……無茶なことを……」
--グラスとリンがあのマンムー達を止めると言ってきかない。だから俺は仕方なく一人で依頼主を探すことになった。フラインゴとドンファンはともかくあのマンムーはただものじゃねぇ感じだしな……。不安ではあるが……。
「うぅぅッ……」
この呻き声……間違いねぇ。依頼主だろうよきっと……。俺はその声のする方に草をかき分けながら進んでいく。そこにはキモリの進化系--ジュプトルが倒れていた。ここでキモリの進化系とは一体なんの因果だろうねぇ。
「おいお前さん、大丈夫かい?」
「ぐっ……あ、あなたは……?」
「俺はミズゴロウのラックさ。お前さんの依頼を受けて来てやったぜ」
「そ、そうですか……」
ジュプトルは俺のことを知って一安心といったところか、ほっと胸を撫でおろす。だが負った傷は酷ぇもんだ。待ってな今から治療してやっからな。
---五分後---
「よっと!もう大丈夫だろう。動いてみな」
「は、はい……」
まさかこんな短時間であの傷がなおるとはおもってまいて。ジュプトルは半信半疑で体を動かす。その動きはジュプトルらしい機敏な動きだ。いいねぇ……ちっとはその敏捷性を分けてもらいてぇもんだぜ。
「助かりました。本当にありがとうございます」
「いいってことよ。俺は救助隊なんだからな。かっかっか……」
笑い声を上げ、ふっと煙草にかかった俺の手にバシンと音を立てて蔓の鞭が飛んだ。ったく……。
「全く!怪我人や病人の前で煙草やめてって言ってるでしょ!」
「ヘーヘーワッカリヤシタデゴゼーヤスヨーダ」
こんなことするのはあいつしかいねぇな。リンとグラスが戻ってきた。案の定あいつらの体中には傷がついてる。だから言わんこっちゃねぇ……。
「全く……それに"俺は救助隊"……じゃないでしょ!俺"達"でしょーが!」
何をそんなことまで怒る必要があるかね!?とにかく俺はこのメンドーなオンナをあしらっているさなか、グラスの奴は依頼主のジュプトルをこれでもかというくらい見つめてる。恋か?あいつらそういう関係なのか?
「……少しよいか……?」
「なんですか?」
真剣な眼差しのグラスにジュプトルはきょとんとした様子だ。やっぱりあいつらデキてるのか?
「お前は……以前私と出会ったことはないのか?」
「……、いえ、知りませんね……」
いやいや、そりゃそーだろーよ。大体人間のグラスがこの世界に知り合いなんて山ほどいるわけあるめぇしよ……。しかしなんでだ?その割にジュプトルの返答にどーも違和感を覚えるんだがな……。
「とにかく今回はありがとうございました。これはその報酬です」
と、、ジュプトルは巾着袋を地べたに置き、早々に去っていった。
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〜〜小さな森〜〜
「なんだと……?失敗しやがった……?」
「へい……申し訳ごぜぇやせん……」
失敗報告をしているさなかのマンムー--ゴラス。グラス達の邪魔をしろと命じた張本人ヒトカゲのオビトは眉間にシワを寄せていることから怒っていることは容易に見て取れる。
「しかしオビト殿……」
「なんだ!?」
普段オビトには従順なゴラスが珍しく自分から口を開いた。相変わらず機嫌の悪いオビトは声を荒らげ、彼の隣にいるチコリータ--ハーブは彼の様子を見てビクリと体を震わせる。
「……もうやめにしやせんか?もうこんなことは……」
「……なに?」
「これ以上悪事をするのはやめやしょうって言ってるんでごぜぇやすよ」
--ゴラスにオビトの"火炎放射"が降り注いだ。グラス達との戦闘の傷がいえていない体に炎技を食らい、ゴラスは音を立てて崩れ落ちた。
「おれの役に立てねぇばかりか口答えか。もうてめぇのようなクズは用はねぇ。二度とその姿を表すな」
と、倒れているゴラスを放置し、その場を去っていった。彼のあとをおうハーブに彼はにらみながら口を開ける。
「おれは少し出かける」
「そ、それじゃわたしも……」
苛立ちから落ち着けない口調に対してハーブはつとめて明るく言う。
「お前には関係のねーことだ。付いてくるんじゃねぇよ」
「えっ……でも……」
「っせーな。あっちいってろよ……」
自分に引っ付いてくるハーブを乱暴に突き放した。
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〜〜小さな森 深部〜〜
「ずいぶんと遅かったな」
深部でオビトを待っていたのは真っ黒の体毛に覆われていて、耳や腕などに黄色いわっか模様のついているポケモン--ブラッキーであった。
「仕方ねーだろーが、てめぇのよこしたあのデブとゴミ二体が失敗しやがったんだからよ」
「ん?あのゴミ共はともかく、ゴラスがあの程度の奴にやられるとは思えんがなぁ……」
デブはゴラス、ゴミ共はドンファンとフラインゴのことを示しているのだろう。苛立ちを隠せないオビトとは対照的にブラッキーは嘲るようなうすら笑いを浮かべる。
「知るかよ。大方あの取り巻きが足でも引っ張ったんだろーな。特にあのフラインゴがよ」
「ははっ!出しゃばりのあのカスな大いにありえそうだな!」
笑うんじゃねぇとオビトが怒声混じりに言い放った。
--が、それを聞いた先ほどまで笑いこけていたブラッキーが唐突に表情を変えてオビトを睨む
「誰が落ちぶれた救助隊様をこうやって助けてやってると思ってんだ?あぁ?」
「……チッ」
立場からはブラッキーのほうが上なのだろうか、オビトは渋々口を閉じる。
「もう一回言ってみな、お前は何をすればいい?」
「……他の救助隊の邪魔をして、救助隊をやめさせ、街の治安を悪くさせればいい……だろ……」
「……せいかいッ☆」
さっきの態度から一変、猫撫で声に近い声質でブラッキーが口を開いた。
「おれ達お尋ねものも昨今の救助隊の急増で、いちいち隠れて生活してなきゃならねーだろ?
だからお前のような裏で悪事をするような奴に声を書けたって訳さ。
治安が悪くなれば御尋ね者が辺りをうろついてたってそんな大事にはならねーだろ?」
「シャドー……その説明は聞き飽きたって言ってんだろーが……」
コロコロを態度を入れ替えるブラッキー--シャドーにオビトもうんざりとした様子だ。そんな彼らを草陰で眺めている一つの影が--
「なんてこった……まさかオビトがあのシャドーと組んでたなんて……」
オビトのチームメイト、ゼニガメの--ヤマトだ。リーダーにパシられた彼はたまたまこの場でオビトの姿を発見。彼をびこうしようと決めていたのだ。
「まさかゴラスさんもあいつ等の差し金だったなんて……。
とにかく……!一刻もはやくハーブに知らせないと--!」
--ガサッ!
草を揺らした音。当然シャドーにもオビトの耳にもその音が入らない訳がない。
「誰だッ!そこにいるのは!」
(やべっ……!)