ポケダン救助隊 〜最強と呼ばれた所以〜 - 救助1 救助活動開始!
第十話 天国と地獄のショッピング
〜〜トラッピングモール〜〜

「へー、ここもダンジョンなのね〜」

救助依頼を受けたブラザーズであったが彼らの眼前にはダンジョンというよりか、人間世界のショッピングモールが眼前に展開された。そんな彼らを出迎えるようにエスカレータが起動している。

「ホントにここなのか?どう見ても町と雰囲気が変わらぬように見えるが」

人間世界のことは記憶から消えているグラスさえこの雰囲気には首をひねる。

「いいや、間違いはねぇ。地図に示されているとーりだし、ダンジョンに見えないのも噂には聞いている。ここで間違いはないだろうよ」

くわえ煙草で地図を眺めながら口を開くのはラックだ。彼の隣でリンが"どさくさにタバコ吸わないで"と注意するも彼は知らんぷり。このやり取りもグラスが来てから何度もしていたそうでグラスは特に気にもとめずに一人リンが頬を膨らませる。

「雰囲気はともかくここに依頼主がいるのだ。皆、気を抜くなよ」
「へいへい……」
「わかってるわよ」






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「けっ!やっと進んだな」
「ったくグダグダ言ってねぇでさっさと進みやがれってんだ」

ブラザーズを影で眺めて、理不尽な悪態を吐くドンファンとフライゴン。彼らとその頭のマンムーはブラザーズを邪魔するためだけに彼らのあとをおっていた。

「お前たちも口ばかり動かさねぇで、ちっとは働いてごぜぇやすぜ」
「わかってますぜ」
「へへっ」

-----怪しげな笑みを浮かべながらマンムー--ゴラス達はブラザーズの後を追っていった。


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「ふむ……思いの外ダンジョンの敵ポケモンも大したことはなさそうだな……」
「あぁ、しかし気になる……」
「お前さんもかい?」

襲いかかった野生ポケモンを軽くいなしながら首を縦にふるグラス。それなりに難易度は高いと聞いていたダンジョンであった。しかし実際には話をしながらでも容易く倒せる程度のレベルしか持ち合わせていない様子。

「それで……リンはどこに?」
「あぁ、あいつかい?あいつはあそこさ」

ラックが指さした先には、楽しそーにカクレオンの店で買い物しながらカクレオンと話をしているリンの姿が。

「…………」
「まっ、あのマイペースなとこがあいつらしーっちゃらしーんだけどね」

と言いながら自分も能天気にタバコに手をかける。似た者同士かとグラスははぁとため息をついた。

「まったく……油断は禁物だぞ。リンを連れてさっさと行くぞ」
「あいよ。おーいリン、さっさと目的地へ向かうぞ」

ラック達もカクレオンのダンジョン内の店のシートに入ってリンを連れ戻しにかかった。それに気がついたリンは(渋々)
彼らのもとにもどっていく。

「--!!」

唐突にグラスが燕返しに似たような飛び込みでリンに突貫。

「きゃ……ッ!」

--ドサッ!

いきなり飛び込むキモリの突進に反応できずにそのままリンはグラスに押し倒される。これに黙っていられるリンではなく、すぐに起き上がる。

「いきなり何すんのよ!」
「よく見てみろ!」

烈火の如く怒るリンをそれと同音量の声でグラスが制する。あまり大声を出さない彼に思わずリンも黙りこくる。彼女が黙ったことを確認し、グラスはリンが進もうとしたルートの地面を剣でパタパタとはたく。

「こ、これって……!」

地面から出てきたのはマルマインが描かれたスイッチ、爆破スイッチだ。踏んでしまうと自分と周りに爆発が生じて大ダメージを受けてしまうギミック。

「それだけじゃねぇんだな。この周りで爆破が起こったらどうなるよ?」
「--!!」

カクレオンの店で爆破。下手しなくても爆発で商品が吹き飛ばされることは間違いはない。つまり--

「もしグラスが助けなかったら……あたし……カクレオンに襲われてた……?」
「そういうこったな。まぁ令はオレじゃなくてあいつに言うこったな」

--朝方あんな扱いをしたのに助けてくれるなんて……。リンの心中にグラスに大しての申し訳ない気持ちがこみ上げてきた。当の本人はそんなことは気にもとめずに次へと進んでいこうとしていく。

「行くぞ。時間もあまりない」


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「ずいぶんと店が多いな。やっぱショッピングモールだからか?」
「だろうな。そして……」

今度は店内の地面を剣でパタパタとはたいた。そこには突風スイッチが現れる。

「大体分かったな」
「わかったって……何が?」
「この罠は、ここを居住としているポケモンが作ったものだってな」
「ど、どうして!?」

罠を壊したグラスが淡々と口を開く。驚きを隠せないリンと対照的に顔色一つ変えずにグラスは続ける。

「ここの野生ポケモンはレベルの割にかなり賢い。そして先ほどから不自然なこのトラップの配置と数」
「大かたここの野生ポケがオレら外部の奴らをおっぱらう為にカクレオンを利用して罠にハメてるとみただけさ。トラップでうまいことカクレオンに救助隊を襲わせて追っ払おうとな」

この二人の説明を聞いて初めてリンは合点がいった。商品を爆破させたり、不意の突風スイッチで商品を持ち逃げさせたりと。罠の配置からしてもそう考えられる。

「な、なるほど……」
「んで、おそらくだが今回の依頼者も例に漏れずにそのトラップに引っかかり、カクレオンに問答無用で襲われていたと」
「じゃあ、それさ気をつければ大きな事故は起きないってこと?」
「多分な、んじゃ頂上まであとちょっとだ。気合いれていこーぜ」
(お前の声は気合が入っているかわかりづらいのだが……)

よっこらせと重い腰を上げながらラックがいつもの声質で言うもグラスには小声で突っ込まれた。







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「……なかなか先に進めやせんな。困りやしたぜ……」
「あいつら……やたらと警戒しやがって全然進めませんよ」
「はええぇとか先回りしとかねぇとまじぃんじゃねぇか?」

ブラザーズを追うゴラス一行。しかし(原因は他にあるが)警戒されており距離を詰めての追跡がうまくいかない。追跡に飽き始めたフライゴン--クラッシャがその減らず口を開ける。

「それにしてもずいぶんとカクレオンの店がありますね。ちょいとかっぱらってやりますかい?」
「へへっ、面白そうだな!いっちょやってやるか!」

頭のゴラスの言うことも聞かずに手下の二人は走り去っていった。

「全くあいつらときたら……下らないことばかりに力を入れる……」

役目を放棄した手下を止める為に仕方なく彼らの後を追うゴラスであった。だがその直後。


--ゾクッ!


(な……なんでごぜぇやすか……このとんでもなく嫌な予感は……!)

今までに感じたことのない背筋の悪寒。氷タイプであるマンムーの自分が凍てついてしまいそうな感覚にゴラスはとてつもなく嫌な予感を感じていた。さっきまで問題なく動いていた足に重りがついているのかと感じるほど体が動かなかった。

「か、階段を探しやしょう……。とてもここにはいられやせん……」

幸いにもすぐ近くに階段を見つけ、階段を登ろうとした。その時であった。

--ドドドドドドドドドド!!!


「ま、まさかあいつら……!」

恐れていた、彼の尤も嫌な予感が的中した瞬間であった。彼の部下のドンファン、フライゴンが大量の緑色の生き物--カクレオンに追われている、傍から見る分には"地獄絵図"の四文字がふさわしい光景がゴラスの眼前に広がっていた。カクレオン達はクラッシャ達を生きては返さないのではないかと思われるほどの形相で彼らを追い続ける。

「アニキイイイイイイイイイイイイイィ!助けてくださあああああああああああぁい!」
「こ、殺されるるううううううううううううううううううぅぅぅぅッ!」
「さ、さっさと登ってくだせぇ!」

ゴラスもこの光景には狼狽えを隠せずいそいで彼らを階段へ誘導した。階段を登られたのを確認したカクレオン達は口惜しい様子で階段を眺めていた。





間一髪(?)カクレオンからまぬがれた三匹であるが、当然ゴラスが黙って黙認する筈もなく、手下達を詰問する。

「お前たち……やっぱりやらかしたんでごぜぇやすな?」
「ち、違います!オレらはやってません!」
「やろうとしただけです!」
「バカッ!」

余計なことを滑らせるクラッシャの頭がドンファン--グランガの鼻でドつかれた。相当堅い鼻なのかクラッシャは頭を抑える。

「俺達、カクレオンの店にはいろうとしたんですが……」

〜〜〜〜


「いらっしゃ〜い♫」
(けっ、バカ面しやがって。今にその面を涙目にしてやっかんな!)
(さすがアニキ!悪いことには努力値を惜しみませんね!)
(あたぼーよ!)

本当にカクレオンの店に入って商品を手にとった瞬間なんです。


-ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

「--!!?」

俺達の体が急な爆風で吹き飛ばされました。そしたら商品をもったまま店の外に放り投げられて、あっあとついでに商品も大分爆破されて……

「ドロボーだー!誰か捕まえてくれーッ!」

地獄のコールが始まってオレらは瞬間的に御尋ね者になりました……


〜〜〜〜

「ってことです……」
「…………全くお前たちは……」

■筆者メッセージ
※(ちなみにこの物語ではカクレオンの店はシートではなく、地べたで商売している設定です)
ノコタロウ ( 2013/06/23(日) 21:27 )