第四話 光と影の救助隊
「しっかし大したものだな」
「……そうか?」
あれから数時間、なんとか事なきを得たグラス達二人はキャタピー親子に感謝され、家路についた。
「それで……改めてお前さんに頼みがある……」
「嗚呼……わかってるさ。
--やろう!!救助隊を!!」
すっと手をだしたグラスにラックの表情はパァっと明るくなった。そして彼の手をガシっと力強く握る。
「恩にきるぞ!パートナー」
「フッ、お安いご用さ」
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「それで……もう寝ちゃったの?」
「嗚呼、救助隊やるのが決まった途端にオレ以上にはしゃぎすぎてな。んで疲れて寝ちまった」
「ふふっ、子供みたい」
横でそれはそれは気持ちよさそうに寝ているグラスを尻目にラックとリンは晩酌を交わしていた。ラックの方が結構な量が入っているからか若干顔が赤くなっている。
「失礼するぜ」
「--??」
唐突に外から声がかかった。二人は声のかかった方を見るとそこにはバッジを付けたヒトカゲ、チコリータ、そして三つの袋を所持しているゼニガメが立っていた。
「確かお前さん達は……」
この様子からしてラックもリンも知っている相手であろう。
「嗚呼、俺たちはチームガンバルズ。新たに救助隊を始めるポケモンがいるって聞いてな。こんな時間に済まねぇが……。ヤマト!」
「あっ……う、、うん!」
ヤマトと呼ばれたゼニガメは手にした袋を慌てて二人に手渡した。と残った袋を眠っているグラスの元にそっと置く。
「これは……?」
「これは救助隊のセット一式だ!これであんたたちも俺たちと同じ救助隊だぜ!」
びしっと親指を立てるヒトカゲ。唐突ではあったが救助隊を始められることに浮かれていたラックはさらに喜びを露にする。
「名前は確か、グラスにラックにリンだったな。俺はこのチームガンバルズリーダーのオビト!んでこいつらがチームメイトのハーブとヤマトだ。よろしくな!」
ラックも顔見知りからか、ヒトカゲ--オビトの握手に素直に応じた。
「それじゃあな!明日から頑張ろうぜ!」
「嗚呼、わざわざ済まないな」
と、オビト達ガンバルズは帰っていった……。
「……」
「--?どうしたの?」
眠っているグラスを凝視するゼニガメ--ヤマトに不信感を少し表しながらリンが尋ねる。
「い、いやね……」
「この大馬鹿野郎!」
ゴツンと大きな打撃音が響いた。戻ってきたオビトがヤマトの頭を殴っていたのだ。
「あぁ、済まない!こいついつもどん臭い奴でな……。あとできつく言っておく……」
「いや、そこまで気には……」
既にきつく言ってるじゃないと心中でリンは突っ込んではいるが当然聞こえる筈もない
。今度こそオビト達は去っていった。
「あのヒト達とはいい救助隊仲間になれそうね……」
「そうだといいがな……」
「--??どういうこと?」
ラックから飛び出した反語にリンは首をひねる。
「あのオビトって奴……、どうも好きになれないんだよな……」
「そ、それだけ?」
「まさかあいつ等が救助隊を始めやがるとはな」
場所は変わって夜道を歩くガンバルズ。だがそのリーダー、オビトの顔つきはラック達と話をしていたそれとはかけ離れたものであった。
「ねぇオビト……ひょっとして……またやるの……?」
おそるおそるという言葉がこの上なくピッタリな表情のハーブ。その対象はほかでもないリーダーであった。
「当たり前だ!俺の邪魔になるやつは放ってはおけねぇ……。それに、手下達を可愛がってもらった令もしなくちゃいけねぇからなぁ……」
邪悪な表情を浮かべるオビト。それはワルのそれにほかならなかった……。