NEAR◆◇MISS















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最終章
-4- 救世主
 貴様、何者だ。

「えー。先に自分から名乗ってくんない?」

 私は……

「ウソウソ、ジョーク! よく知ってるよ。キミの頭の中、覗き放題だもん」

 この暗闇……意識だけの対話か。
 その光の姿……セレビィ、なのか。

「その呼び名はまだ“先代”のだから。あ、麹塵でどう? もう誰も使ってないんでしょ。ほら呼んでみて、き、く、じ、んっ!」
 
 何が望みだ。

「ちぇっ、ノリ悪ーい。まあいいや。質問攻めされるのもウザイし、とりあえず自己紹介してあげる。ぼきゅは“先代”の生まれ変わり。国際警察が負けたパターンの尻ぬぐい役で、今キミがピンチだから半分顕現した……『夢のはざま』の住民、的な? 精神世界と現実世界は『時渡り』の法則が違ってて、実体化が不完全でも干渉できちゃうんだよね。こんな風に。ねえ、国際警察なら『ウルトラホール』くらい知ってるよね」

 時空のゆがみで発生する、異世界へのワープポイントだ。
 観測例はきわめて少ない。

「そうそう。それが未来でいっぱい開いて、バカみたい強い侵略獣どもがこの世界を壊しまくるんだ。ハイリンクの森も襲撃されて、死を待つだけのムシャーナたちは絶望しちゃう。人間が滅亡してなけりゃ、やつらを科学の力で退治してくれたかも。そういうみんなの“夢”から生まれる森の護り神が、このぼきゅ。ぼきゅは“先代”の歴史改変を上書きして、人類を救ってほしいという願いを叶えなきゃいけない」

 蛮行を働いた愚かな人間が侵略獣という役者へ変わり、万物の秩序は守られる……か。

「ぼきゅと“先代”は“正史の残滓”で結ばれてる。けどぼきゅ、“先代”ほどマメじゃないんだよね。過去へ飛んでちまちま上書きとか、だーるーすーぎぃ。だからキミたちがこの時間軸で勝ってくれたら、ラクできていいんだ」

 怠惰を理由に、力を貸すというのか?
 しかしそれでは、その心が、命が、誕生する未来が失われる。
 自己犠牲を払うのか? 

「あはははは!」

 なにが可笑しい。

「だってぇ。賢いサーナイトだと思ってたのに、バカじゃん。正史のキミはロングたちの仲間、歴史改変後のキミは人間を信用しきれない人工の試作品。でも“分身”のクラウにほだされて、結局キミと国際警察の確執はチャラになった。自分が“操り人形”でもいいと受け入れて、敷かれたレールを歩くことに安らぎを感じたんでしょ? 犠牲って力のないヤツのやることだよ。下等生物にすがりつかれて願いを叶えてあげるのが神サマ、叶えた後のことを考えないのも神サマ。そこんとこ、低次元のキミたちと一緒にしないでくれる? 神サマを哀れむとかさあ、何サマのつもりぃ? で、どうなの。ぼきゅに救世主になってほしいの? ほしくないの?」

 ……加護を受けるには、どうすればいい。

「そうこなくっちゃ! キミの知ってる若い国際警察官、『シンクロ』でパワーアップできるんでしょ。それ、パクろうよ。とっておきの『トリックルーム』を見せてあげる。あと『手助け』も。ちなみに、ぼきゅが干渉できるのは魂だけ。肉体がギャップに耐えられなかったらキミは死ぬけど、弱者に“犠牲”はお似合いだから別にいいよね?」

 啓示に感謝いたします――森の護り神、麹塵様。 
 
「露骨な掌返し、キモーい! じゃあ決まり。せいぜい頑張りなよ、パラディン」

レイコ ( 2019/02/22(金) 19:34 )