友だち
ギラティナのシャドーボールを、ハルモニアはアイアンテールで打ち返す。小さな黒いそれは霧散消失して消え去った。次に飛んできたのは黒ではなく光りの細い線であった。
「これは……っ」
正体を掴みかねた攻撃だが、数瞬の間にそれが目覚めるパワーであると看破し、とっさにジャンプでかわした。目覚めるパワーは個体ごとにタイプが異なり、初見の相手ではその技を直に食らうことでしか技タイプを判断できない。仮にこれが地面タイプであれば、すぐさま致命傷となりうる。
ギラティナでもこんなカジュアルな技を使うのか、と思いながらエレキボールを放つと、それはギラティナの足に当たり四方八方に飛び散った。次に頭に向かってエレキボールを放つとそれはかわされた。
ところで、ギラティナの特性はプレッシャーという。これは実際に敵に圧をかけているのではなく、技を使うエネルギーをより多く消費させるというものだが、そのときに受ける感覚が圧力をかけられているようだということから名をつけられた比喩である。
本来であれば、プレッシャーの発動からハルモニアは重圧を感じなくてはならないが、ハルモニアにそういった感覚は一切感じられない。
ただ、それでは戦いやすいのかと問われればそんなことは一切ない。例えば地面に落ちた石ころをけん制のために投げつけたが、簡単にはじかれてしまう。ダメージが入っていないというわけではない。当たる前にギラティナのオーラがそれを弾き返すのだ。
――――おそらく、このギラティナの特性はプレッシャーではない別の何か……なんだ? エレキボールはちゃんと当たったということは、この特性は……でも、無理やりポケモンの特性をいじくりまわすなんてできるのかしら。
考えあぐね、集中が欠けたハルモニアを、ギラティナがドラゴンクローで薙ごうとした。
「!!」反応が遅れ、あわや八つ裂きとなるところをまた後ろに飛んでかわす。緩やかな風圧がハルモニアの頬を撫でた。
やられてばかりのハルモニアではない。姿勢を直し、手を唇に当てキッスを投げつける。天使のキッスは当たれば敵の意識を酩酊させられる。所謂混乱状態に陥るわけだ。彼女の飛ばした天使のキッスはギラティナの首に直撃。
やった、これで味方を攻撃すれば……! ハルモニアは、ヒトモシを相手にするフリストたちにドラゴンクローやシャドーボールの流れ弾が飛んでくるかもしれないから気をつけろと告げようとした。が、それは一切叶わなかった。
混乱していないのである。頭ほどではないが、首に直撃すれば混乱状態は必至のはずの天使のキッスが通っていない。
酩酊している様子もなくしっかり立っているギラティナに、逆に混乱させられそうなハルモニアである。
次に、また目覚めるパワーが飛んできた。判断を誤ったハルモニアは雷パンチでその攻撃を弾いてしまった。拳が技に当たる瞬間、地面がうねっているような轟音が頭の中で炸裂した。目覚めるパワーは地面タイプだった。手の甲がチリチリと痛むハルモニア。拳を抑えて蹲るがギラティナはとどめの攻撃を待ってはくれない。
フリストは二人のヒトモシを相手にしていた。当然ながら、相手は弾ける炎を多用してくるので、それらをグラスミキサーで消し去ると、後には黒焦げの葉っぱが残っている。また、鬼火にだけは当たってはならないと心に留めておいた。
『ヒトモシの技で一番厄介なのは、鬼火で火傷させられたあとに祟目を使われることよ。祟目は怪我や病気にかかっているポケモンの体力を奪っていく技だから――――』とハルモニアが戦闘開始の直前に言っていたためだ。幸い、鬼火はそう速くなく、スピードが一番遅いマイルが目視でかわせるほどである。
だが、それでも敵の二人の攻撃が生易しいわけではない。フリストは蔓の鞭を振るい、グラスミキサーで炎をかき消してゆくのがやっとなのである。
「フフフ、苦戦しているようですねぇ……段々と後ろに下がってるの、分かってるんですよぉ?」
「今ならまだギラティナ様は貴方たちのことを許すと仰いましょう……どうか、立ち去るのです」
敵のヒトモシは煽ってくるが、フリストはそれには答えず、ただ一つの間隙のみを与えた。
「さっき言ったでしょう。あの二人は私の友だちなんだ。見捨てられるわけがないんだよ。傍目から見て、仲良くは見えないかもしれないし、私の言ってることなんて青臭いかもしれない。ただ……」フリストの蔓の鞭の動きが止まる。それを見逃すまいと蝋燭の炎を燃えあげるヒトモシたち。しかし、ただ一人だけがそれより早く反応した。「青臭いなら青臭いなりに、私は動くんだ……せめて、自分の言ったことは、実行に移すんだ……っ!」
フリストは横に身をかわす。彼女に弾ける炎を当てようとしたヒトモシが見たのは、ニャスパーの少女。彼女が放つサイケ光線だった。
「ぐあっ!」フリストが相手取っていたヒトモシが一人、サイケ光線で飛ばされる。
クラリスが不意打ちでサイケ光線を放ったことで、彼女と戦っているヒトモシ三人に対して隙ができる。しかし、フリストが一人をリーフブレードで斬り、一人を蔓の鞭でたたく。残った一人は、クラリスのサイコショックを喰らった。
「……強いですねぇ、どうしたものか」
古の骨導に侵入してきた者達に対し、早くも五人のヒトモシが音をあげ始める。しかし、そこに救世主が現れる。すなわちフリストたちにとっては悪魔である。
「フリスト! マイルが、鬼火を……」
「えっ!?」
レイラの悲鳴のような声が劈く。レイラとマイルは二人でヒトモシ三人の相手をしていたが、そのマイルは尻尾を火傷し、苦悶の表情を浮かべていた。彼に手足があればうずくまっていただろう。
――――まずい! フリストの表情が凍る彼に降り注ぐ祟目はゴーストタイプの技なので、ノーマルタイプを持つレイラが庇ってやれる。しかし、そこでヒトモシたちが弾ける炎に技を変え彼女が集中砲火を浴びてしまえばひとたまりもない。自分が助けに行くべきか?
気の迷いが生まれた。今度は作る予定のなかった間隙である。その瞬間に、ヒトモシが後ろに回り込んでいた。気づいたときにはもう遅かった――――弾ける炎の会心の一撃が走る。
その瞬間だった。ヒトモシとフリストの間に割って入ってきたハルモニアは、まず右手で雷パンチを使い弾ける炎を文字通り弾けさせた。割って入った、と言ってもハルモニアとヒトモシの間はほぼ距離がなく、密着しているようなものだ。そこに、先程ギラティナが刺そうとした止めのシャドーボールが、ハルモニアの代わりにヒトモシに刺さる。ハルモニアは倒れてくるヒトモシを押しのけた。
「ハルっ!?」「フリスト、身を構えて!」「えっ、うん!」ハルモニアの言葉に、フリストはほとんど何も考えずに腕を立てて防御の体勢を取る。ハルモニアはそこにアイアンテールをあて、フリストを吹き飛ばす。
「うわっ!?」「きゃあ!」
玉突きの要領で、フリストが吹き飛ばされレイラに当たり、結果的にマイルを庇うようにレイラは彼の前に躍り出た。ヒトモシ三人の止めは、二人が黒い針のような技の祟目で、もう一人は弾ける炎である。祟目はレイラが弾き、弾ける炎はフリストがグラスミキサーでかき消した。
「あ、危なかった……」ハルモニアは今も敵の攻撃をいなしていくクラリスを尻目にオレンの身を一つ取り出し口で齧ると果汁を目覚めるパワーで負傷した左手に塗りつけた。すると、ギラティナの攻撃を受けて倒れたと思っていたヒトモシが何事も無かったかのように起き上がってきた。「オラァッ!」彼を雷パンチで殴り倒し、その次にサイケ光線を受けて伸びていたヒトモシが立ち上がってきたので同じく殴り倒し、次にギラティナにエレキボールを放った。頭に当たりそうなその攻撃を見た、ギラティナは屈んでよけた。
「幸運ね、ギラティナの技を直撃で受けたのに手が吹っ飛ぶどころか不自由なく動かせるんだもの。それにあなたの急所も分かったわ。頭ね?」「……」
答はない。そもそも帰ってこないと思っていたが、それでもハルモニアは沈黙を是ととった。ハルモニアはギラティナの巨体に飛び乗り、頭にアイアンテールを当てようとした。ギラティナがドラゴンクローでそこを薙いだ途端、彼女は身を翻す。別の場所から登ろうとすると、またドラゴンクローがそこを通る。ハルモニアは今度はかわして登り、ついにアイアンテールを当てようとした瞬間、またかわされる。頭を傾けたギラティナがシャドーボールを放つので、ハルモニアはエレキボールで相殺した。反動で吹き飛ぶハルモニアは咄嗟に天使のキッスを放ち、それは見事、ギラティナの頭に命中した!
「う……うごががが!」
混乱状態で変なうめき声をあげるギラティナは、まずドラゴンクローで自分の胸を貫く。そして引っこ抜いたが、おかしなことに画鋲で刺したような穴すら見当たらない。その後、ドラゴンクローを振り回すが、遅く、精度もめちゃくちゃでハルモニアには当たらない。
そのうちにギラティナの巨体が倒れ込み、ずずと音が鳴った。
「あっ……えと、ギラティナ様っ!」クラリスと戦っていたヒトモシ二人のうち一人が叫ぶ。もう一人は癒しの種を彼の口に投げ込んだ。もしギラティナが倒れこまなければ、届かなかっただろう。ともかく、ギラティナはなんとか混乱状態から目覚めたが、癒しの種を投げ込んだヒトモシはクラリスのサイコショックに倒された。
「ふーぅ、これでやっと一対一ね」「くっ……」次第にヒトモシたちは、焦りの色を見せ始めた。だが、彼らは負けることに対して意外とか衝撃的とは微塵も思ってないようである。寧ろ、ハルモニアたちの行動を読めていない、という表情だった。何が起こったか分かっていない、ともいうのだろうか。表情から疑問ばかりが溢れている。
ハルモニアは、なんとか起き上がろうとするギラティナにエレキボールをぶつけ、その上でこのような文句を述べた。
「はぁ、一体全体、どんなに強いかと思っていたのにがっかりだわ。これじゃあ神様の名前が泣くわ。まぁ当然かもしれないけど」
ハルモニアは、それを聞いたギラティナが起き上がるまで待ってやった。
「……私を侮辱しているつもりか?」「そうよ」「……神に相応しい技を出せ、と?」「そうよ。できないでしょ」「……」
数秒の沈黙を横たえた後に、ギラティナの声が響いた。その声は酷く恐ろしく、暗く低く、この世の全てに怒り狂っているようだった。
「ならば、この場で貴様ら全員を吹き飛ばしてやろう」
そう言ってギラティナは立ち消えた。
「あ、あなた……なんてことを言ったの! 神を怒らせるなんて」珍しく、本当に珍しく、クラリスが動揺している。「大丈夫よ。神様は私たちを殺せない。どんなに強く見えても、見えないものは誤魔化せないもの」「どういうことよ……とっ、とにかく! 逃げるわよ、フリストたちも!」クラリスの声と同時に、ハルモニアの頭上に大きな影が落ちる。しかしどこからその影はきているのだろう。
「は、ハル?」フリストがつい目を逸らしてしまった。この隙にヒトモシたちの攻撃を受けるかと思いきや、ヒトモシも状況を飲み込めずに口をぽかんと開けている。
やがて大きな地響きが起こり、それとともに影から黒いオーラを纏ったギラティナが飛び出した。
「ひっ!?」「何あれ!?」とフリストとレイラ。レイラは、マイルをどうやって連れて逃げようかと思案していた。ギラティナの怒号があたりをつんざき、その巨体を落としてきた。
「もっ、もうダメっ!!」思わず頭を抱え蹲るフリスト。クラリスはなにもかも諦めたかのようにその場に立ちすくんでいた。
ただ、ハルモニアだけがその攻撃に対し悠々と構えている。
「……シャドーダイブのつもりかしら?」
ハルモニアは右手だけを頭上に掲げた。傍から見れば、二メートルを超える巨体をピカチュウの小さな腕一本で抑えようとしているようにしか見えない。誰もが、次の瞬間には彼女が粉みじんになると思っていた。ごおお、とギラティナの巨体が彼女に降り注ぐ!
――――私、死んだかな?
クラリスは目を固く閉じ、耳を塞いでいた。あんな轟音が響いていたのに、今は何も聞こえない。恐らく死んだんだろう。死後の世界ってどんななんだろう。ちょっと見てみようかな。父さんと母さんに会えるかもしれない。
恐る恐る、目を開いたクラリス。彼女が真っ先に見たのは彼岸花咲き誇る川辺でも、彼女の両親でもなかった。
なんと、ハルモニアがギラティナの巨体を難なく受け止めその場に立っている。
「嘘っ……どうして? 聖人の奇跡でも起こしたの?」
神に攻撃したのに聖人に列せられることもないかと思い、目を擦ってもう一度見る。やはり、ハルモニアが、ギラティナの頭に手を当てている。
「……気づいてんのよ。その躰、ボロボロに揺らいでるわ。あなたはギラティナではなくギラティナの皮をかぶった普通のポケモンでしょう」そう言った瞬間、ハルモニアは雷パンチを六回叩き込み、最後に雷パンチのアッパーを繰り出す。
「ぎゃああ!」
ギラティナの頭から何か飛び出たかと思うと、その巨体は一瞬のうちに立ち消えた。
頭から出てきたもの、というかポケモンはユニランであった。小さい体を緑色のスライムで守っている。
「ユニラン? ……ああ、マジックガードの特性ね。道理で技以外の攻撃が通じないわけだわ」
ハルモニアはそう言うと、その場に座り込んだ。立ち上がろうにも立ち上がれない。戦闘で疲弊したのと、緊張が抜けたのと、両方である。
「……私たち、幻覚を見せられてたんだ」とフリスト。
「そーよ。正しくは幻覚をサイコパワーで実体化したもの、かしら」
「いつから気づいてたの?」
「うーん……いつっていうか、途中で幻覚が揺らいでたから、それかしら。思い返したら変だったことは沢山あったけどね」
例えば特性が違っていたこととか、ギラティナのくせに目覚めるパワーなんて使っていたこととか。「魔の国からやってきたと言っていたことも引っかかったわ。ギラティナが住んでいるのは敗れた世界のはず。魔の国なんて言葉、聞いたこともないわ。それにギラティナはここまで移動してくるのに鏡が必要なはずなのに、何くれとなく現れるから……」鏡に映る反転世界とこの世界を行き来するには鏡が必要でどうたら、とハルモニアの知識は語るのだが、疲弊したその体はそれを許さない。
呼吸を整えて、なんとか上体のみを起こすハルモニア。ふと、最後の二人になって奮闘していたヒトモシを見ると、彼らは随分萎縮してペコペコと頭を下げ始めた。
「とっとりあえず……どういうことか説明してよ。それとリールとシンは?」
「おっ、お返ししますぅ……」
「私たちヒトモシ一族はですね……というかゴーストタイプのポケモン全般に言えることなんですが、他のポケモンの恐怖を主食としているんです」
気絶しているリールとシンの前でヒトモシ二人が語る。
「恐怖?」
「はい。元々ゴーストタイプのポケモンは人間支配の時代に一人の男性が見た亡霊を始祖としていまして……とりあえず、私たちには恐怖する心というものが必要なんですよ」
「それは分かるけど、ちょっとやりすぎじゃない?」と眉を顰めて言うレイラ。
「重々承知しております……ただ、チンケな脅かし方では皆さん怖がってくれなくなりまして。
私たち『別れの歌』は大陸の西を旅して回っているんです。この村も数年に一度訪れます。昔は夜、道端に佇んでいるだけで怖がっていただけたものですが、今年は誰も目をくれず……」
「それでユニランに協力してもらってたってわけね」
「はい……ユニランさんは学校を中心に怪異の噂を流したり、ギラティナの幻覚を作ればよいとアドバイスをくださったんです。それで、この古の骨導を利用して皆さんを怖がらせようと思ったんですけど、まさか戦うはめになるとは思わなくて……」
「……」
気まずい沈黙が場を支配する。ハルモニアはあくまで誰も殺さないで良かった、と思っていた。ユニランは傷だらけで卒倒しているが命に別状はない。
「……いきなり攻撃して悪かったわね。でも元はと言えば……」「いいよ、ハル」事態の紛糾を省みずあくまでヒトモシたちに対し口撃を試みるハルモニアを、フリストは制する。
「何よ、フリスト……」「私は許すよ。みんなのこと。村のポケモンたちにも保安官にも黙っててあげる。だって、悪いやつじゃないもの。私たちだってご飯を食べないと死んじゃう。勿論今回みたいなのはやりすぎだと思うけどね。私はヒトモシたちを許そうと思う」「あなた、そんな勝手に……」「勝手でもいいよ。ハルやみんなやじっちゃんが何を言っても、私は許すんだ。でも、一つ条件があるの。みんなを驚かせたのと同じくらい親切なこともやって」
レイラは少し不満げにみんなを煽っていく。
「勝手でもいいって言っても、私は納得しないわ。ねぇ、クラリス、マイル」
「えっ? うーん……まぁ私はこれはしょうがないと思うし、どうでもいいわ」
「ぼくも、そんなに気にしてないよ。それにフリストがいいって言うんだし」案外あっさり許した二人に、レイラはため息をついた
「ふー……しょうがないなぁ。ハルモニアはどうせ許すんでしょ? フリストがこう言ってるんだから」「何よ、関係ないでしょ。まぁ許すけど」「じゃあ私もいいよ。今回、ハルモニアとフリストが一番怖がっていたものね」「なっ!?」「だって肝試しのとき一番に逃げ出していたじゃない」「うん。それにずっと顔も引き攣ってたし、足も震えてた。格好つけた言動で誤魔化してたのがバレバレよ」レイラとクラリスにそれぞれ指摘されハルモニアは鼻じらんだ。
「わ、私は怖がってないよ? ……まぁいいや。とりあえず、私たち今回のことは黙っておくよ」そうフリストが言うとヒトモシたちはめいめいに頭を下げた。
数十分後。ハルモニアたちは目を覚ましたリールとシンを連れて古の骨導から出てきた。二人は口を開けば礼の言葉を出し、こんなにいがみ合っている自分たちを友だちと認めてくれたことに感激さえしていた。それから村の子どもたちはそれぞれの家に帰っていく。
しかし、ハルモニアとフリストはまたもそうはいかなかった。
「ばかもん! 二度もこんな時間にふらつきおって! どこで何をしておったんじゃ!」
ウェルクライム老人の怒鳴り声が夜の穏和村をつんざいていった。
「いや、その……」「(古の骨導でギラティナと戦ってましたなんて言えないわよね……)」
そして案の定、フリストは説教途中で眠り初め、ハルモニアは夜明けまでガミガミと雷を落とされ続けることに相成ったのである。