03 過去からの手紙(ウォロ編)
「ここ、ね。」
シンオウ地方のとある町のとある家。その前に彼女は立っていた。
元シンオウリーグチャンピオンのシロナ。その外見と強さからシンオウ地方で知らない人はほとんどいない彼女がなぜこんな片田舎の一軒家を訪れたのか。
周囲の人々の好奇の目に晒されながらも物怖じしない彼女は気にした様子もなくその戸を叩く。
彼女の手には色褪せた古臭い手紙が握られていた。
彼女がその手紙を見つけたのは偶然だった。長年のチャンピオンという重責から解放された彼女は、久々に里帰りをし、実家の蔵の片付けをしていた。
カンナギタウンは歴史の古い村でその祠に刻まれた壁画はシンオウの伝説ポケモンだと言われている。
長老である祖母の話ではここの住民はかつて古代シンオウ族と呼ばれる一族の末裔なのだそうだが眉唾ものだ。
しかし彼女がシンオウ伝説に興味を持ったのもそんな村で生まれ育ったからと言える。
それを見つけたのは本当に偶然だった。
ギンガ団によって起こされた一連の事件で伝説は事実であった事を知り、蔵の中を引っ掻き回した結果、ボロボロな民族衣装のようなものに包まれたその手紙を見つけたのだ。
古ぼけているが虫などに食われず原型を留めていたのは包んでいた民族衣装に守られていたからだろう。
新たな発見に心を躍らせながら手紙を開いた彼女はその手紙の内容に驚愕した。
『
この手紙を手にしたのが遥か未来のワタクシの子孫である事を願います。
ワタクシの名はウォロ。古代シンオウ族の末裔にしてこのヒスイ全土を混乱に陥れた大罪人です。
』
(ヒスイって確かシンオウ地方の昔の名前だったわね・・・)
『
これはワタクシの後悔と懺悔の記録です。
ワタクシは神との邂逅などという身勝手な目的によって1人の少女の運命を大きく狂わせました。
全てが終わった後になってワタクシが何故その猛執に囚われていたのかは自分でも理解できません。
今を思えばあのポケモンとのギラティナとの出会いがきっかけかもしれません。
ただ、時空の裂け目を通る際に彼女はアルセウスに出会ったと言います。
もしかするとギラティナがワタクシに接触した事すらアルセウスの掌の上であったかもしれません。
よしましょう。今更のことです。それを追求したところでワタクシが彼女にした罪は消えないのですから。
妄執に囚われたワタクシは彼女と袂を分かりましたのでその後に彼女がどうなったのかはわかりません。
しかし身勝手な話ですが彼女が元の時代に戻っている事を願っています。
もし、未来のワタクシの子孫がこの手紙を読んでいるのなら、彼女を探してこの手紙を彼女に届けてもらえませんでしょうか。
彼女の名前はショウ。○○年の△△という町から来たと伺っています。
どうか、よろしくお願いします。
ウォロ
』
なんとも荒唐無稽な話だが時を司ると言われるディアルガやセレヴィには時渡により過去に行く能力があると言う。
宇宙を創造したと言われるアルセウスに同様の能力があるとしてもおかしくない。
その手紙の内容は考古学者でもある彼女の興味を大いにそそった。
幸いチャンピオンでもなくなった彼女には時間もあった。
好奇心に満ちた笑顔で彼女は手紙をしまうと善は急げと飛び出していった。
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そして、今に至る。手紙に記載されていた町に実際にショウという名の人物は存在していたのだ。
彼女が立っている家がそのショウという人物が住む家の前である。
「はい。どちら・・・チャンピオンシロナ!?」
ショウの母親だろうか。呼びかけに応対した女性は彼女を見て大いに驚いていた。
「元ですけどね。突然の訪問すみません。1つお尋ねしたいのですが・・・」