01 過去からの手紙
「クダリさんにお届け物です。」
そう言って配達員から渡されたのは随分と年季の入った小包だった。差出人の名前はノボリ。ヒスイ地方のコトブキ村から送られてきたもののようだ。
「聞いたことのない名前の地方ですね。」
受取のサインを書きながら呟くと配達員も苦笑する。
「そりゃそうでしょうね。だってこの荷物はかなり昔から本部預りになってたらしいですから。ヒスイって言うのは今のシンオウ地方のことらしいですし・・・はい、okです。では!」
受領書を確認した配達員はそれだけ伝えると笑顔で去っていった。大昔のシンオウ地方。当然身に覚えなどクダリにあるわけがない。
「とりあえず、開けてみますか。」
ビリビリと古びた包紙を破ると中からは自分が普段被っている帽子とよく似たボロボロの黒い帽子と一通の手紙が出てきた。
帽子を眺めつつ手紙を手に取ったクダリはその封を愛用のペーパーナイフで開いていく。中には帽子と同様に古びた写真と何故か自分に宛てた手紙が入っていた。
「何ですかこの手紙は・・・そしてなぜぼくは泣いているんでしょうか・・・」
同封されていた写真には自分そっくりの顔の無愛想な男が、ぎこちない笑顔で自分と色違いの帽子とジャケットを身につけて写っていた。
----------
クダリへ
この手紙が貴方に届いたと言うことは私はやはり元の時代に戻れないまま生涯を終えたのでしょう。
もしかしたら貴方にはノボリという双子の兄弟は存在しない事になっているかもしれません。もしかしたらクダリという人物も存在しないかも知れませんがそこはご愛嬌ということにして貰えると助かります。
遠い昔のあの日。貴方にとってはこの手紙を受け取った前日の話ですが私は突然意識を失い、気付いた時にはこのヒスイと呼ばれる地方荒野にいました。
私には記憶がなく、見知らぬ土地で困っていたところシンジュ団と呼ばれる方々に救われ、一命を取り留めました。
その後、紆余曲折がありとある方の出会いから少しずつ記憶が戻り、ようやく全てを思い出したのでこの手紙を残させていただいた次第です。
その方も私と同じく未来からやってきたそうです。私と違ってアルセウスに導かれたそうですが・・・
この手紙を受け取った貴方が私の知る、私を知るクダリという者ではないかもしれませんが、これだけを伝えたくこの手紙を送らせていただきます。
私は元気です。未来と違いこちらのポケモンたちは野生みが溢れていますがなんとかやっています。
帰る事を諦めていませんが心配は不要です。
それでは、また会う日まで運転再開はお預けに。
ノボリ