04 私の1歩と君の1歩 By Girl
学校に行かなくなったのは高校に入学してすぐだった。
中学までは良くも悪くも顔見知りばかりだったけど高校はそうもいかない。他地方までは流石に少ないけど違う街から来ている子だっている。
私もブイちゃんも持ち前の明るさでクラスに溶け込もうとした。いつも笑顔で、楽しく。でもそれが気に入らない人がいたらしい。
「嘘くさい笑顔。馬鹿にしてない?」
誰が言ったかはわからなかった。そんなつもりはなかった。でも、確かに聞こえたその言葉が頭に焼き付いて、私は笑えなくなった。
笑えなくなると、周りが私をどう思っているか怖くなった。笑顔で話しかけてくれるあの子も、ただ隣にいるだけのあの子も本当は私を嫌ってるんじゃないか。
そう思ったら学校にいけなくなった。
朝起きて、ぼんやりと外を眺める。お腹が空いたら何か食べてまたぼんやり外を眺める。眠たくなったら寝る。
そんな毎日の繰り返しがしばらく続いたけど、ブイちゃんは変わらず笑顔で側にいてくれた。
ブイちゃんの気持ちだけはわかった。笑顔だけど私を心配してくれてる。こんな私を必要としてくれてる。
そう思うと嬉しくて、申し訳なくて、泣き喚きながらブイちゃんを抱きしめていた。
夏のある日、パパが突然旅を勧めてきた。表面上は元の私に戻れていたけど、まだ学校には行けていない私の気分転換にってことらしい。
学校に行くのはまだ怖い。でもいいきっかけになるかもしれない。そう答えるとパパも喜んでくれた。
久々に外に踏み出した1歩は私にとっては大きな1歩だ。でも立ち止まっていたから小さな1歩もしれない。
そんな私の前に小さな体でたくさん足跡をつけてブイちゃんが立った。ブイちゃんの数歩も私にとっては1歩だ。
すごく遠い1歩。先は何も見えない真っ暗闇じゃないから怖くない。また1歩踏み出してブイちゃんと並んだ私はパパからもらった帽子をブイちゃんに被せた。
ガラル地方の絶対王者と呼ばれたチャンピオン・ダンデが被ってるのと同じデザインの帽子。
私にとってはブイちゃんがチャンピオンだから。