03 太陽の代わりに唄を By Boy
高1の夏休み。俺はコイツと一緒に旅に出た。課題は親がうるさいから早々に片付けたけど結局10日かかってしまった。
カントーなんかじゃ10歳ぐらいになればパートナーポケモンを連れて旅に、なんてのがまだあるらしいけど俺が住む地方では少し廃れ気味だ。
けど母さんがポケモン研究所で働いているだけあって旅に出たいと言ったらなんかすげー喜んでた。
旅立ちの日は晴天。ピカチュウにお気に入りの帽子を被せて出発だ。カントー地方の伝説のチャンピオンがかぶっていたのと同じデザインの帽子。俺もコイツも憧れる伝説のトレーナー。
普段歩き慣れた道も旅してるって気持ちだけで違って見えるのは不思議だな。
真夏に降る雨は冷たくて気持ちいい。流行りの歌を口ずさめばコイツも尻尾を揺らして答えてくれる。
雨と、コイツと俺。俺とコイツと世界が奏でるメロディ。太陽の代わりとか言っちゃうとちょっと烏滸がましいけど、なんか世界と一つになれたようなそんな気がした。