01
とある日のナックルシティ駅。
「おや珍しい。無人島に引きこもってるジジイがいるじゃないか。」
駅から出て来た人物にポプラは驚きの声を上げた。
「げぇ、ポプラ!?」
駅から出て来た人物、マスタードもポプラの顔を見て驚き顔をしかめた。
「はぁ・・・なんだいその顔は。それにしてもどうしたんだい。孤島で何やら道場をやってるのは聞いてたよ?」
引きつった顔をするマスタードにため息をつきつつポプラが尋ねる。
「ポプラさん。こちらの方は?」
「あぁ、あんたはまだ行った事がなかったね。この老いぼれはマスタードっていってね。昔はちょっと名が通ったポケモントレーナーさ。
今はすぐ近くの孤島で道場を開いてるらしいよ。」
付き添いでポプラの横にいたビートの問いにポプラが答える。
「おんや?独身ピンクババアが若い子連れてどうしちゃったんだい?」
途端にからかう材料を見つけたとマスタードが悪い顔をする。そんなマスタードにポプラはまたため息をついた。
「この子はうちの後釜のビートだよ。今はアタシも裏方にまわってアラベスクジムはこの子に任せてるのさ。」
「へぇ、じゃあその子がローズくんの秘蔵っ子て言われてた子かい。ふーん・・・確かにいい目だ。」
ポプラの説明にマスタードはビートの顔を覗き込んでふむふむと何かを納得する。
見られたビートは小さく「ひっ」と悲鳴を上げてポプラにしがみつく。
「なんだ、知ってたのかい。」
「話だけはの。今日はそれで新しくリーグの委員長になったダンデくんに挨拶に来たってわけ。
それにしてもババアもようやく引退する決心がついたみたいでよかったわい。」
けっけと笑い揶揄うマスタードにポプラは大きくため息をついた。
「まったくこのジジイは・・・ちょっと久々にお灸を据えてやろうかねぇ。」
「ほっほ、ピンクババアの甘々なお灸じゃ腰痛もとれんわい。」
不穏なオーラで睨み合う2人にビートはオロオロと戸惑うだけであった。
----------
その日、ナックルシティの一角で繰り広げられた一戦は昔からのファン達を騒然とさせた。
かつて伝説と言われた18年無敗のチャンピオン・マスタードとそのライバル・ポプラの一戦はお互い現役を退いたとは思えない凄まじさで、ダイマックスが見られないのが勿体ないと誰もが思ったものだった。