ロトムの悪戯な1日
01
その日、ガラル地方は全域で大混乱に陥った。
「一体どうなってるんだ!マクロコスモスに問い合わ・・・あぁ!ロトムホンも使えない!誰か!直接シュートシティに行ってこい!」
突然ガラル地方中のロトム達が仕事を放棄し、ロトムを動力にする全ての電化製品が機能を停止したのである。
「ダメっす!アーマーガアタクシーが捕まんないっす!」
ガラル地方はロトムを利用した電化製品で溢れている。それが一斉に停止したものだから街は大混乱だ。
当然ガラル地方の主な産業の集合体であるマクロコスモスへの問い合わせが殺到。
ロトムホンが当たり前になって電話も使えず地方中から直接問い合わせに集まるため、普段は呼べばすぐに捕まるアーマーガアタクシーも大忙しだ。
平和なのは地方でも田舎なハロンタウンぐらいである。
「えぇ!今その件は調査中ですので原因がわかるまでもうしばらくお待ちを・・・」
前代表のローズが捕縛され、新たな代表となったダンデはカリスマはあるものの実務はまだまだだ。
結果的に実務の面は副社長であるオリーヴに集中することとなり詰めかけた人々の対応にてんやわんやだ。
警備スタッフに後を任せて社長室に戻ったオリーヴは扉を閉めるとがっくり肩を落としため息をついた。
「ローズ前社長のことがようやく落ち着いてきたってのになに?オリーヴキレそうだわ・・・」
言いながらも殺到する人に疲れたせいか声に力があまりない。
「お疲れ様。コーヒーでも入れようか?」
そう労いながらもまだまだ元気そうな新社長に余計心労が重なる。本来今彼女がしてきたような会見は社長である彼がすべきなのだがどうもとんでもないようなことを言いそうで出せないのだ。
「結構です。それよりも何かわかりましたか?」
仕事に関してはまだまだだがポケモンの事に関しては長い年月無敗でチャンピオンについた彼だ。期待ができる。
今も相棒であるリザードンに手紙で彼が懇意にしているソニア博士へ調査を依頼していた。
彼女の元には彼の弟も研究員として働いているので調査の手も広がるだろう。
「さっき一次報告が届いたよ。ただそれほど進展はないみたいだ。電化製品に入っていたロトム達は電線を伝って何処かに行ってしまったらしい。
ただモンスターボールに入っているロトム達は何も変化がなくて彼らは何も知らなさそうらしいんだ。」
彼の報告までは既にマクロコスモス内でもわかっていた。一時的にバトル用に育てたロトムを電化製品に入れて使う事も考えたが、バトル用に育てたロトム達は電化製品で使うには育ちすぎており、機械の方がもたなかった。
「一体どこにいったのでしょうね・・・」
ため息をつきながら、彼女も自席につき、書面で積み上げられたガラル地方中の報告書類に目を通し始めた。

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調査は難航をし続けた。定期的に調査報告や現況報告が届くものの一向に解決の糸口が見えない。
もうどっぷりと日が暮れて夜更の時間帯だ。流石に押しかけていた人々も大半は帰路についている。
しかし一抹の不安がよぎった。このまま朝になっても事態が変わらなかったら・・・そんな最悪な事態を考えていたその時。
「・・・・・・ロトト、時刻は午前4時30分ロト。」
使えずに放置していたロトムホンが突然起動しそう時刻を告げだした。
途端に内線用のロトムホン等がけたたましくなり始める。
「・・・まったく。お前達のせいで大変だったんだぞ?1日中一体どこで何をしてたんだ?」
電話応対に追われるオリーヴを横目にダンデはため息をつきながら尋ねるがロトムは我関せずとふわふわ周りを漂うだけだ。
「ロトト、何のことロト?よくわかんないロト〜」
無邪気にそう言うロトムに苦笑しつつも察する。当たり前のように人々の言うことを聞いて生活の役に立っているロトム達だが、彼らは持ち主にゲットされたわけではないいわば野生のロトムだ。
こうして文句も言わずに手伝ってくれているのは我々が彼らにとって住み良い環境を与えて友好的な関係を結んでいるだけなのだ。
「なるほどな。とりあえずソニアの意見も欲しいところだな久しぶりに会いに行くか。」
「社長?お出かけはこの事態を終息させて下さいね?」
そんな独り言もオリーヴに耳聡く阻まれる。しかし終息といっても何をすればいいのだと彼は独りごちた。電話応対を手伝おうとしても、
「社長!電話はオリーヴが対応しますから触らないでください!」
なんて言われて触らせてももらえないのだから。やれやれと彼はいつも通りとなったシュートシティを窓から眺めため息をついた。

■筆者メッセージ
ロトムの図鑑説明を見てて思いついた作品。こんな日もあったら面白いなーと思って書きました。
きょんきち ( 2020/06/17(水) 10:07 )