01
ー某月某日のワイルドエリア。
普段は様々ポケモンで溢れるこの場所だが、今日は何故か極端に少なくなっていた。
「おかしいなぁ、いつもは避けるのも大変なぐらい溢れてるってのに。」
マサルは一休みにとテントを広げてキャンプの準備をしながら訝しげに呟いた。
「あれ?知らなかったのか?毎年何日か、こうやってポケモン達が巣穴の奥からあまり出てこなくなる日があるんだぞ?」
マサルを手伝っていたホップが何気なく答える。
毎日多忙な2人だが、今日は珍しく休みがあったのだ。だから今日は1日2人でバトルして野生のポケモンを捕まえてキャンプしてでのんびり過ごそうと考えていたのだ。
「そういえばバトルした時もなんかみんな乗り気じゃなかったね。」
きっと気が乗らなかったのだろうと深く考えていなかったがマサルのポケモン達もホップのポケモン達も仕方なくしたがっている感じであった。
ザシアンとザマゼンタに至ってはお互い指示を無視して座り込んだぐらいだった。
「たぶんそうだぞ。」
言いながら周囲を見回すが本当にポケモンの姿を見かけない。
「なにかポケモン達にとって特別な日なのかな?」
「さあなぁ、ソニアの研究所に入って色々調べたけど何も文献には残されてないみたいだぞ。」
その時、ボールから出していた彼らのポケモン達が一斉に遠吠えを始めた。
「え!?なに!?」
共鳴するように少ないがワイルドエリアに出てきていた野生のポケモン達も一緒になって鳴き声を上げる。
何度も、何度も。何かを訴えるように、何かに祈りを捧げるようにポケモン達は鳴き声を上げ続けていた。
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それは遙か昔の話。世界は沢山の人々で溢れていた。発達した文明をもった世界は小さな亀裂で崩壊し滅びてしまった。
それを嘆いた神は1匹の獣を地上に降ろし、世界を再生させた。
その獣こそ、アルセウス。アルセウスは生き残った様々な獣達に力を与え進化させた。そして人々から科学文明の記憶を奪い何処かへと去っていった。
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今日はそんな世界が再生した日。ポケモン達は遺伝子に刻み込まれてそれを理解している。
この日だけは静かに、死んでいった過去の人々に哀悼の想いを送る。そして、世界を見捨てなかった神とアルセウスに感謝の祈りを捧げる。
数分鳴き声を上げてたポケモン達は示し合わせたように一斉に鳴き声を止めた。騒がしかったワイルドエリアに再び静寂が訪れたのだった。
「なん・・・だったのかな?」
「さあ・・・」
呆気にとられたマサルとホップは目を白黒させ、しばらく茫然と佇んでいた。