参 最強の二人
「あっ!見て杏ちゃん」
凌羽に言われ彼の指差す方向を見てみると、先程会ったジュプトルと横にもう一匹、バシャーモがいた。
「あの二匹がどうかしたの?」
「えっと…ジュプトルの方は霧矢慧さん。国軍直属夜警隊一番隊隊長を務めてて、二つ名は「断罪の射手」。バシャーモの方は、鬼龍火焔さん。同じく夜警隊一番隊の副隊長を勤めてるんだ。二つ名は「業火の打ち手」だよ」
「え、二つ名とかあるの?」
「おう、かなり有名だからな。新聞とかじゃ二つ名で呼ばれることのほうが多いらしいし」
「二匹合わせて最強と言われるぐらいなんだよ。その二匹が揃ったところを、しかも間近で見られるなんて…僕達って幸せだなぁ」
そう話す凌羽の顔はキラキラ輝いている。そういうところは男の子らしいのだ。
「まぁ、こんな国を挙げての一大イベントだしな」
といいつつ真緒も、とても嬉しそうな表情だった。
成人の儀の後――
「いやぁ〜」
四人はそれぞれの感想を口にする。
「疲れた〜」
「いや、お前は何もしてないだろう」
「でもでも、緊張はしたよね〜」
「ははっ、そうだな!」
「よし!」
そんな中、朱李が大きな声で音頭を取る。
「職探し行くぞーーーっ!!」その声に対し、凌羽はごく普通に、
「おー!」
雪蛍はバカバカしいといった様子で
「おー(棒)」
真緒はそのノリに少し戸惑いつつ
「お、おー?」
と、各々のやり方で応えた。
それを見ていた杏は言う。
「ごめんね、私…ちょっと行く所があるから…」
すると、くるりと朱李が振り向き、満面の笑みで
「そっか!でも、お別れは言わないね!」
それに応じるように杏も笑顔でこう言った。
「「またね!」」