第壱部
弐 成人の儀
「ふ、ぅ……はぁっ…まに、あった…?」

杏の目線の先には、広場の中央に置かれたステージのようなもの。周りには大勢の人、人、人で埋め尽くされている。

「…っ」

一歩、たったそれだけが踏み出せない。彼女は人混みが苦手なのだ。理由なんてなく、ただただ苦手。

(こんなんじゃダメだ…折角、今日を機に自分を変えていきたい、って思ったはずなのに…)

何も変わることができていない自分に腹が立つ。同時に、悲しくなる。

「ねぇねぇ!」

その時だった。俯いていた杏の頭上から、声が掛かる。驚いて頭を上げれば、そこにはブースター、リーフィア、グレイシア、そしてシャワーズがいた。

「キミも、今日成人なの?」

その中のブースターが明るく話しかけてくる。

「おい、勝手に走り出すな。俺や凌羽なんかはお前より体力がない」

「大丈夫だよっ…氷乃君、大丈夫。ついて、来てるからっ」

「凌羽ほんとに大丈夫か〜?」

後から、残りの三匹が声を出す。どうやら、四人は気のしれた友人らしい。

「あの…」

「あぁ、すまないな。俺は氷乃雪蛍(ひのゆきほ)という。こいつは朝未朱李(あさみあかり)、バカなんだ。ゆるしてやってくれ」

雪蛍と名乗るグレイシアはブースター―朱李

■筆者メッセージ
下の名前は朱李です。雪蛍は基本苗字で呼びます。
ストーリーは全くのオリジナルですが、キャラはとあるゲームをフィーチャーしていたりしています←
京花 ( 2016/11/04(金) 13:34 )