弐 成人の儀
「ふ、ぅ……はぁっ…まに、あった…?」
杏の目線の先には、広場の中央に置かれたステージのようなもの。周りには大勢の人、人、人で埋め尽くされている。
「…っ」
一歩、たったそれだけが踏み出せない。彼女は人混みが苦手なのだ。理由なんてなく、ただただ苦手。
(こんなんじゃダメだ…折角、今日を機に自分を変えていきたい、って思ったはずなのに…)
何も変わることができていない自分に腹が立つ。同時に、悲しくなる。
「ねぇねぇ!」
その時だった。俯いていた杏の頭上から、声が掛かる。驚いて頭を上げれば、そこにはブースター、リーフィア、グレイシア、そしてシャワーズがいた。
「キミも、今日成人なの?」
その中のブースターが明るく話しかけてくる。
「おい、勝手に走り出すな。俺や凌羽なんかはお前より体力がない」
「大丈夫だよっ…氷乃君、大丈夫。ついて、来てるからっ」
「凌羽ほんとに大丈夫か〜?」
後から、残りの三匹が声を出す。どうやら、四人は気のしれた友人らしい。
「あの…」
「あぁ、すまないな。俺は
氷乃雪蛍という。こいつは
朝未朱李、バカなんだ。ゆるしてやってくれ」
雪蛍と名乗るグレイシアはブースター―朱李