part8
すごい力でござる。水晶から力を貰ったのか拙者はウィル達と互角に渡り合えているでござる。
ガキィィン!
拙者のシェルブレードとウィルのスプーンがぶつかり合う。ウィルがシェルブレードをスプーンでガードしたのだ。
「いきなり……強くなるとは…」
拙者がいきなり強くなったのに大分ウィルは驚いていた。それもそうだろう。さっきまでは優勢でありながら、いきなり強くなった拙者によって流れが変わった。
「ムサシっ!!」 今のは……、レオ殿?まさか気がついた!?何とも嬉しい知らせだ。これなら確実に……。
しかし、謎の強化は水晶の暴走とは何が違うのかはわからないでござるが……このまま押し切れば……!?
「がっ!……あ゛あ゛あ゛!」
何故か途端に痛みが拙者の身体中に走る。なんだこれは!?急に起こるなんて……、これはデメリットなのだろうか?
「副作用でしょうかね……、それともまだ使いこなせていないのか?」
ボルトは拙者が痛み出したのを見て冷静に分析する。ボルトの言う通りでござろう。現に痛みが拙者を襲っているのだ。
「どちらだろうと……ここで消す」
ウィルは先程、拙者が急に強くなったのを見て危険だと思っているのか禍々しい殺気が拙者を襲う。今まで本気ではなかったのだろうか!?さすがに本気は見せているかと思ったのだが……。
拙者はそれからはヤバいと感じ、クレメンス殿に目配せして逃げようと考えた。クレメンス殿は言いたい事が目配せだけで分かってくれ、逃げる機会をうかがった。二人だけなら逃げるという選択肢はないが今は別だ。仲間が来たので逃げ切れる自信はある。ハッキリ言って悔しいでござるが仕方ない。
「逃がさん!!」 しかし、ウィルは拙者のアイコンタクトをとる様子を見ていたのか逃げると分かったようでスプーンを前に出して技を放つ用意をしていた。早く逃げ切らないと捕まってしまう。またサイコキネシスに捕まるといっかんの終わりだ。さっきみたいにボルトに止めを刺されることになる。
拙者とクレメンス殿は一目散に走り出した。敵に背を向ける事は恥で恥で仕方ない。だが、生きなくては……。
だが、ここで残念な事にいきなり現れた大軍がレオ殿達を襲っているのだ。これでは逃げ込めない。横に逃げるしかなかった。すぐに逃げ道を左に選び走り出した。
「させませんよ」
ボルトは拙者達が逃げる道を高速移動で先回りしたのか拙者達の目の前に居た。これにより前も後ろも左もふさがれ、右に逃げる以外道はなかったがここで止まった時点で終了でござる。
「く、くそ……」
「万事休すでござるか…」
もう無理でござろう。ウィルのサイコキネシスによって拘束された。レオ殿達はよりによっていつの間にか現れた大軍を相手どっていた。もう拙者達が生き残れる可能性は万一にもなくなったでござろう。マロンの代わりも果たそうと思ったのにこの様。悔しいでござる。まさか、マロンに気持ちを伝える前に死ぬのだろうか。つい最近に伝えようとして出来なかった。一番の悔いだ。
「グラスミキサー!」「目覚めるパワー!」 だが突然、木枯らしとエネルギー弾がウィル達に向かう。突飛すぎたのかボルトは避けきれなかった。ウィルは拙者達に使う少し念力を抑えて紙一重でかわす。
「良かった!間に合ったよ」
「あら、珍しくへばってるわね。また治療しなきゃね……」
技を放ったポケモンの声は間違い無く知っている声だ。後者は特に。
「アルビダ殿!マロン!」
どうやら絶望するにはまだ早いようでござった。
☆ (レオサイド)
「ちっ!また大軍かよ……コイツ等は数で押すのが好きだな」
俺達は現在大軍相手に苦戦中だ。ムサシ達を助けるつもりだったが読まれていたのだろう。誰かが外に出た時から仕掛けられた罠だったのだ。原因の根本は団子配達であることは考えてはいけないのかもしれない。
「ほら!そんな事言わずにさっさと敵を倒しなさいよ!」
テンコさんは苦言を呈していた俺に一喝いれながら敵を倒していく。その姿はなかなかだ。マロンさんとアルビダより実力は上かもしれない。
「その通りだ。苦言を吐く暇があるなら手を動かせ、手を」
アムネジアはテンコさんの言い分に賛同しながらインファイトやブレイククローで次々と敵を片づけていく。未だに刀は抜いていない。雑魚には必要ない、という事だろう。
「これくらいなら倒すのは簡単だ。
ただ、時間がかかるがな」
フォックスさんは最低限の動きで攻撃をかわしながら話す。こちらは剣を抜いており次々とポケモンを切っている。よく見ると切られた相手に切り傷すらないため峰の方を使っているのだろう。打撃に近い事をしている。本気なら血祭りも夢じゃないだろう。
しかし、"東国"のポケモンは強いなあ。モリやコイツ等、ムサシにマロンさん。流石に全員が強いとは言えないが、正に修羅の国。平和的だから他の三国も戦わずにいる。確かに四大陸中最強だ。そんな事はまーいーか。
「さて、俺もいくか」
俺は敵の渦中に走り込みはっけいをかましていく。それだけで倒れるわけではないが次にローキックを当てる。あまり強くはないが仕方ない。波動は出来るだけ使わないでいこう。ルワールと戦う可能性がある。今は夜なのでこちらがだいぶ不利だ。せめて力を温存しないと太刀打ちどころか、一発くらわすのも出来ないかもしれない。
大軍と一括りしているが、案外一人一人は強い。大軍だととんでもない戦力だ。そのとんでもない戦力を相手に戦うのはやはり一筋縄にはいかない。
今はムサシとクレメンスを助けなきゃいけないのに出来ない。近くにいるのに許されないのだ。
しかし、意外なことでその心配はなくなった。
「ハァ…ハァ……ムサシ!」
胸騒ぎでもしたのだろうか、マロンさんが本気でムサシを心配しながら走っていったのだ。早く走り過ぎなのか息をきらしている。
その隣では黄色い木の実好きもといアルビダが走っていた。どうやら待つのにウンザリしているらしい。でもこれでムサシとクレメンスに救いの手がさされる。
「助かるな、後は……!!」
俺はムサシとクレメンスは大丈夫だろうと思い、戦いに集中しようとすると何かが迫っていることに気付いてしまった。まさか……!?
「そのまさかだ」 背後から急に声がした。この声は間違い無く奴だ。俺が最も憎むポケモンだ。父さんが俺を生かすために自殺した原因を作ったアイツだ。俺はあれから本気で強くなろうと思ったのだ。
「何をそんなに恐い顔をしている?」
アイツはわかっている癖して尋ねてくる。この回りくどさが憎かった。こんな下種がのうのうと生きていることが許せない。
「そうか。
さっそくだが……リベンジさせて貰おうか、ルワール!」
俺は言い終えると同時に足で"空波動"を放つ。ルワールは突然の事に対処できず諸にくらう。見破るはすでに使っている。問題はない。ルワールは派手に吹っ飛び大軍から離れた。俺もこの機に抜け出そう。
「これでもくらいな」
俺はルワールが"空波動"に当たるのを合図にはっけいを繰り出す。これは決まるはずだ。
………と、思っていたのが甘かった。
ルワールはきっちりと俺の腕を掴んだのだ。迂闊だったか?
「貴様は全力で叩き潰そう。
トリックルーム!」
ルワールを中心に四角の空間が広がっていった…………。