part5
俺達はいつの間にか、畳の部屋に寝ころんでいた。理由は言うまでもなくさっきの光に違いない。
「一体何が…」
俺は突然のあの光に呑まれてからなんにも覚えてはいない。光に包まれ、俺の視界からルワールは消えたのでどっちかが瞬間移動したのだろう。
俺達が光に包まれてからここにいるので、俺達が瞬間移動した方の可能性が高い。疑問があるが、取り敢えず今は皆を見つけよう。
俺が周りを見渡してみると、アルビダとマロンさんはグッスリ寝ていた。ムサシとクレメンスが見当たらない。先に起きていたみたいだ。
俺は二人を起こさないように、忍び足でその部屋から出ようとした。俺が戸に手をかけようとすると、後ろから肩を軽く叩かれた。
「ッ!誰だ!………ってアルビダかよ」
「実は起きてたよ〜んだ」
俺が勢いよく後ろを振り向くと、呑気にしているアルビダがいた。俺はつい、なんだ、と呟いたらアルビダは恐い顔をして頬から電気をバチバチと放出していたのですぐに謝った。俺の素早さはガクッと下がった!……なんてふざける場合では無かった。
「さて、アルビダちゃんとレオも起きてるみたいだし…ムサシ達の所に行きましょうか」
俺が再び戸に手をかけようとするところで、マロンさんの声が聞こえた。口振りからして、ムサシ達の行方を知っているらしい。コイツ等は狙ってやっているような……。
「あぁ、起きてたんですか。ムサシ達は今どこに?」
取り敢えず、気にせずにマロンさんにムサシ達の行方を尋ねてみる。知らないとか言い出したらどうしようか……。
「え〜と……」
マロンさんは答えをひねくり出そうと頭を捻っていた。この様子だと、覚えてないというのが返ってくるかもしれない。
「やっと、起きたな。オイラは自己紹介したっけな?」
俺はマロンさんの回答を待つ最中、どこから現れたのか、さっきのザングースに尋ねられた。自己紹介は確かされて無かった筈だ。
「してないです」
俺はアムなんとかだったと思うザングースに答える。名前はチラッと聞いた気がする。
「じゃあ、させて貰おう。オイラの名前はアムネジア。ここ東国では王様の親衛隊として働いている。お前は?」
アムネジアと名乗るザングースは年下と思われる(というよりほぼ確実に)俺に少し丁寧に自己紹介した。それに続いて俺についても聞いてきた。
「俺の名前はレオだ。宜しくな」
俺は年上だろうと構わずにタメ口が飛び出しているので、普通は叱られる。アムネジアにそんな事はなく、手を差し伸べた。握手だろうか?
俺は握手の為と思われる手を握る。だが、違ったのだ。
力強く手を握られ、俺は手が痛くなった。なんて握力何だろう。
「年上には気を遣え、いつか足下をすくわれるぞ」
アムネジアはそう言ってから、黙って手を離す。彼の言う事には一理あるので反論はしない。仲がいいならともかく、互いについさっき名前知った仲だ。今後は気をつけなくては。
「彼らなら、配達に向かわせてる。すぐに戻ってくるだろうな」
アムネジアはムサシ達が何処に行ったのかは教えなかったが、配達をしているらしい。何を配達しているかは知らない。
「御主、起きたみたいみたいだな」
今度は少し年老いた雄の声が聞こえてきた。何やら甘いものらしき匂いがする。配達はこれが関係しているのか?
「御主、もしやデルト村の出身かな?」
ここに来てその単語を聞けるとは思わなかった。何で分かるのだろう。
「もしかして、村長をご存知で?」
アルビダは珍しく敬語で尋ねる。そういう考えに俺は気づけなかった。
それに、アルビダがそう思うのは無理はない。今目の前にいるのは村長と同じ種族のカイリューなのだ。家族かなんかだろうが……。
「その通りだ、私の名前はリュー。彼は私の父だ」
「え…ほ、本当ですか?」
アルビダはどういう訳なのか分からず困惑していた。だが、俺はこれで逆にピンときたのだ。
「成る程、"神速のリュー"ですね」
俺の口からは他の皆からすれば、分からない単語が飛び出す。
「その通り、リューと言うカイリューから神速を伝授して貰い強さを認められたミニリュウは"リュー"という名前を授かるんだ。小さい頃に父上から教わったんだ」
リューさんは"神速のリュー"について説明する。内容からして本名は違うのだが、聞くところによると大抵はリューの名前を名乗るそうだ。強さの証明とも言えるからというのが、一番の理由らしい。どうやら家系で受け継がれているらしい。
つまり、このリューも俺のよく知るあの老いぼれ(デルト村の村長)は単純に言うと強いのだ。なので、俺は一度神速を教えて貰おうと頼んだが、断られた。
「私の本名はハンだ。まぁ、そんな事は放っといて……後で私の作った団子でもご馳走しよう。アムネジアにはやらんがな」
「いや、オイラにもくれ……じゃない、ください」
リューさんもといハンさんは会話が終わると団子のご馳走を約束し、アムネジアをいじる。それにアムネジアはタメ口で反論するが、さっき俺に注意したのを思い出したのか訂正していた。
ポケモンの事は言えないとはこの事だろうか。
ハンさんが去った後、若き頃のハンさんと思われるカイリューとジュカインとまだ産まれて間もないキモリが写っていた写真を見つけた。 家族の写真だろうか?写っているキモリはどこかで見たことがある気がした
☆ (???サイド)
"leading"の本部で、あるやり取りがなされていた。
プルルルルルッ!
辺りに電子音が響く。連絡が来たサインだった。
「副司令、たった今バーンさんから通信入りました」
そう言ったのはマニューラのクロー。今は本部に戻って準備をしている最中だった。
「分かった、繋げ」
副詞令と呼ばれたポケモンはそれを聞くと、冷徹に命令を下す。クローは言われるがままに回線を繋げる。それによってバーンが立体映像で現れた。
『欠番以外の水晶の主が揃いました。
それよりも、まさか東国にこんなに沢山の秘密があるなんて…。モリに行かせて真実を知って貰っても良かったのでは?』
バーンは連絡が繋がるやすぐに現状の報告と知ってしまった事について尋ねる。
「多くは無いぞ。良かったのじゃが、刺激が強すぎる。まさか、本人が叶わぬ願いと思っていたことが叶っているのじゃ。あやつの子分に父親は生きておる」
『そう……ですか』
バーンは正直、この返事にガッカリしていた。どうして恐れるか分からなかった。
「出来れば儂も知って欲しいとおもうのじゃが、なんだか恐いからのう」
副司令も本人に知って欲しいらしいが、恐くて一歩すら進まないみたいだ。
「一体どういう事だ?」
ここで嬉しい誤算が起きてくれた。どうやら会話を聞いていたみたいでバーンは心の中でガッツポーズを掲げる。
「モ、モリ…!?」
不意に現れたモリの登場に副司令は驚きを隠せず、呆然としていた。元暗殺者のモリからすれば気配を隠すのは造作でもないだろう、とバーンは考えていた。
「最初から気付いていた癖にしらばっくれるな。俺が東国に行くように仕向けようとしたんだろう?
―――デルト村の村長さん…いや、おじいちゃん」