part4
拙者は今、ラムパルドと戦っているのでござる。良い機会だから技を試しているのでござるが、少し外れてばかりでござる……。
「彼奴め!さっきから受け流してばっかりではないか!しかも、技を外すばかりな臆病者め!」
ラムパルドは拙者の行動が気に食わずに激怒している。これ以上はあまりにも失礼でござろうし、決めに行かなくては……。
「分かったでござる。お主には誠意を持って拙者の新技で沈めてくれようぞ」
拙者は一気に2本のシェルブレードを形成する。つまり、シェルブレードを利用したオリジナル技。
「では、見せて貰おうかその技を」
ラムパルドは拙者の新技を迎え撃とうと、頭を拙者に向けて力を溜め出した。今から放とうとしているのは恐らく、"諸刃の頭突き"という技だろう。威力が破格的に高い分、自分も反動を受ける技。拙者ではとても耐えられないだろう。
互いに勝負を決めようと様子を窺う態勢に入った。それにより互いが動かなくなりいつ勝負を仕掛けるのか決めかねていた。
侍として鍛えられた拙者はその場面をよく知っていた。故に、緊張感も適度に保ちつつラムパルドをじっと見る事が出来る。つまり余裕でござる。
対するラムパルドはいつ仕掛けるか決めかねているようで冷や汗をかいているように見えた。じれったい様で今にでも飛びだしそうだった。
ここで集中を切らしてはいけない。"諸刃の頭突き"をくらってお終いになってしまう。侍としては恥ずかしい限り。
バシンッ!
バシンッ!
バシンッ!
バシンッ! だが、そこで何か音が聞こえてきた。その音が何か気になったのかラムパルドはその音がした方へ視線を向けている。この音の理由は容易に想像がついてしまっている自分がなんとなく情けない気がするでござる……。
とはいえ、これは拙者から見れば隙だらけでここで技を叩きこめば勝利だ。
しかし、これでは言い終わり方ではない。最後はちゃんと技をぶつけ合って決めたいものでござる。これは勝負なのでそんな事を気にしていけはいけないのだが、正々堂々と戦いたいという姿勢が見えるあのラムパルドを不意打ちで終わらせるのはもったいない。
「行くぞ」
ブワッ! ラムパルドはそう言って一気に殺気を放つ。もしかするとこのラムパルドがバーン殿が言っていた"六皇"の次に強い存在なのかもしれない。
そしてラムパルド……、いやラムパルド殿は自分の最高火力である"諸刃の頭突き"を拙者に放つ。その時の速度は速く拙者のその速度ではかわしきれなかった。
「"アクアジェット"!」
拙者はそれをギリギリアクアジェットを使って避けた。これ以上この相手に戦いを長引かせるのは良くない、そんな感が拙者の脳裏によぎる。
「見るでござる。これが拙者の新技―――、
"水流双閃"!」
拙者は一気にラムパルド殿の足を狙って一瞬で2本のシェルブレードの太刀を浴びせる。実際の刀の様に切って血が吹き出るような事は無い。あくまでも"シェルブレード"である。
ドォンッ! ラムパルド殿は喰らって大きなダメージを受けて地に伏せる。その表情はやり切ったものであった。
「お見事、素早い太刀筋だっ……た……」
「そちらこそ、見事な一撃でござる」
拙者がそう言うのには理由がある。さっきの"諸刃の頭突き"のエネルギーが倒れたことで行き場を失ったのかラムパルド殿に残っていた。ラムパルド殿が倒れるとその頭にあったエネルギーが頭が地面に当たると同時に放出された。これにより頭の周りのは大きなクレーターが出来ていたのだ。
喰らっていたらと思うと恐ろしい。
★ (クレメンスサイド)
「"砂地獄"!」
「"ダストシュート"!」
僕とアーボックは互いに技を放ちあっている。さっきから決着がつかないのだ。恐らくコイツはバーンさんが言っていた"六皇"の次に強いポケモン達の一人だろう。直ぐに終わると思って余裕でいた僕は既に消え去っていた。
ダストシュートと砂地獄の衝突は威力の関係でダストシュートが勝っていた。砂地獄で威力と速度を小さくしたのでかわすのは容易だが、それなしだと不安が残る。
「ヘンッ!大したことは無いな!"氷の牙"!」
アーボックは僕がダストシュートを避けている間にある程度距離を縮めていたようで、僕が最も食らいたく無い技を使っていた。
「"守る"!」
僕は仕方ないのでバリアを作り攻撃から身を守る。しかし、連続で出されるときつい。守るの成功確率が減っていってしまう。
つまり、僕は一撃で倒さないときついのだ。一応、強い一撃は習得している。まだコントロールに難があり使用するか躊躇ってしまう。
「"龍の息吹"!」
僕はバリアが解けると同時に牽制の為に群青色の息吹をアーボックに放つ。アーボックは避けようとした結果、当たりはしなかったが紙一重で避けていた。
ここで、少し勝ち目が見えてきた。奴は龍の息吹の速度について行くのが精いっぱいらしい。あれを当てた隙に"あの技"を放てば勝機はあるのでは?
まだ確実とは言えないが他に策は無い為、これで行くしかなさそうだ。あの暴走の時に僕が放っていたという技ならいける可能性は十分ある。
「"ダストシュート"!」
アーボックは勝負を決めようとダストシュートを放ってくる。一撃で倒れるわけではないが決まったら流れがあちら側に行ってしまう。
それを避けるために僕は羽を使って飛んだ。ダストシュートは綺麗に避けられ、森の木々に当たる。それはあまりにも臭いにおいを発して、この世のものとは思えなかった。
「逃がすかってんだ!"氷の牙"!」
アーボックは飛んでいる僕に当てるために、どうやったかは知らないがジャンプして突っ込んできた。これはうれしい誤算だ。
「"龍の息吹"!」
僕は空中で僕に迫っていて絶対に身動きが出来ないアーボックに対し、群青色の息吹を放つ。これにアーボックはしまった、と言いたげな表情でいた。自分のミスである、今更遅い。
「グガァァ!」
アーボックは僕の龍の息吹を食らい苦しそうだった。何と急所に当たり、ダメージがでかいようだ。おまけに麻痺状態となる。ここにきて運まで付いてきた。
僕はアーボックが痺れて動けないうちに"あの技"の準備を始めた。
まず、とびっきりでかい砂地獄を作るがまだ放たないでいた。次にその砂地獄に龍の息吹を当てて竜の力を砂地獄に加えた。多分これぐらいで大丈夫。
「喰らえ!"竜巻砂漠"!」
僕は水晶が暴走した時に放った技、"竜巻砂漠"をアーボックに放った。まだあの時ほどではないらしいが、威力は信用できる。
「は?」
アーボックは突然出てきた多技に麻痺しながら素っ頓狂な表情で驚く。今は機動力が奪われ避けられる術がない。段々冷や汗をかき、焦り出した。
そして、無情にもアーボックに"竜巻砂漠"が当たっていた。すぐに竜巻に飲まれダメージを受ける。
「グアァァァ!ック……貴様あぁぁぁぁ!」 アーボックは大声で悔しがりながら無惨に僕の大技を食らう。
中々強かった……。氷の牙が決まっていたら間違いなく僕の負けだった。
★ (レオサイド)
「グアァァァ!ック……貴様あぁぁぁぁ!」 俺の耳に何やら叫び声が聞こえて来て、若干嫌な気分になったがどうやら皆勝利したらしい。あまりにも早く終わった俺は退屈で、皆の闘いを見ていた。
アルビダとマロンさんの闘いは戦いではない、と言っておいた方がいいだろう。アルビダまであんな事をするのは俺は見ていられなかった。何せ、俺より呆気無い闘いだ。
ムサシとクレメンスはどうやら強い相手と戦ったらしく苦戦していた。恐らくは"六皇"の次に強い奴だろう。二人とも本気でやると直ぐだったので、まだ弱い部類かもしれない。
「レ〜オ!終わったよぉ!」
アルビダは笑顔で俺に飛びついてくる。あまりにも突然だから俺は受け切れず押しつぶされる。
そして、それに続いてマロンさんは何やら水色のポケモンを蔓の鞭で捕まえて引きずっていた。恐らく何らかの被害者、怖いのでそっとしておこう。
「レオ殿!そっちは大丈夫でござるか?」
「ムサシ君、そんな心配はなさそうだよ」
そして、ムサシとクレメンスがやってくる。この二人は強い相手となってなかなか苦戦したのだろう。傷があちらこちらに見えている。
「取り敢えず、皆は勝ったんだな」
俺はそう言って楽な姿勢を取ろうとするがそれは突然現れたあいつによってしなかった。
「ほぉ……、お前達は私が思う以上に強くなったみたいね」
アイツが来たのだ……。決着をつけなくては。
「ヘッ!そりゃあどうも。ルワールさんよ!」
現れたのは俺の父さんの仇、ルワールだった。口調がなんかおかしいが気にする場合ではない。
「ここで……貴様らを倒してやろう」
ルワールはそう言って拳に黒色のオーラを纏わせる。シャドーパンチでも放つつもりだろう。
「ここが!貴様らの墓場だぁ!」
ルワールはそう言ってシャドーパンチを放つ。前の様に放ってたまるか!
スパッ!
だが、ルワールのシャドーパンチは俺達の前で真っ二つになっていた。この光景には見覚えがあった。あの時は確かモリが……。
「水晶の主達だな」
「初めまして」
聞こえてきたのは二つの声、どちらもモリのものではない。初めて聞く声だった。一体どういう事だ。
その答えはすぐに分かった。こいつ等が首からぶら下げているものは俺達のものと良く似ていた。
前者の声の方はオレンジ色の水晶、後者の方は赤色の水晶。これを見るとすぐに味方だと分かる。
「さて、自己紹介が遅れたな。俺の名はアムネジア」
オレンジ色の水晶の主―、色違いのザングースは低めのトーンで自己紹介をする。モリと同様の強さがアムネジアというザングースにはあった。しかも、手元には剣が握られていた。それとどことなく感じた事のある気配だった。
「そして、私はテンコです。宜しくお願いします」
赤色の水晶の主―、テンコと名乗るロコンはアムネジアとは違って丁寧な口調だった。
そうか、さっきの殺気はあのアムネジアが――、
俺はやっとその事に気付き、納得する。何とも頼もしい仲間が出来たものだ。俺達の中ではだれよりも強い。テンコという奴もなかなかの強さが窺えそうだ。
「まさか、欠番以外がすべて揃っただと!?」
ルワールは驚きながら俺達を見つめる。これであと一人、欠番は誰なのか気になるところだ。
「さて、今はお前の相手をしている場合ではないからな……」
「という訳で……」
ピカッ!
不意に光が俺達を包む。俺達はいきなりとういうことになったのか分からなかった。分かるのはこいつ等が出したという事だけ。
そして次の瞬間には俺達の前からルワールが消えていた、否、俺達が消えていた。