part3
俺達は今、目標の敵のいる場所にいる。綺麗に5人集まっていて丁度良かった。早く倒して情報を聞き出そう。
「あいつらか?」
俺はみんなに確認する様に尋ねてみる。その質問を聞いた皆は縦に頷く。種族も一致しているから間違いない。
「さて、それぞれが得意な相手と戦っていく事にしようか」
クレメンスは皆が俺の質問に無言の返答を示した後作戦を提案する。ぶっちゃけ、作戦もクソもない基本なのだが。
「早く終わらせたいから賛成よ」
「私も同じく」
マロンさんとアルビダはクレメンスの提案に賛同する。
「しかし、苦手な相手と戦ってこそ意味があるのではないでござらんか?」
ムサシはクレメンスの提案に少し抵抗があるらしく、異論を唱える。ムサシらしいのだが……。
「ダメだ、時間がかかる。
丁度良いことにそれぞれの得意が揃ってるんだ」
俺はムサシに時間的な意味で駄目だと答える。理由はそんなお告げがあるから……、などでは無く時間短縮の為だ。
「分かったでござる」
ムサシは俺の意見を聞いて納得したらしく、ラムパルドを睨みつける。早速獲物が決まった様である。
「私はヒヤッキーを倒すわ」
「じゃあ、私はゴルバットで」
「僕はアーボックだね」
上から順にマロンさん、アルビダ、クレメンスが相手を指名する。それを聞いた後誰にしようかと悩みかけたが既に消去法で決まっている、相手はエネコロロ。
「じゃあ、決まったし"波動弾"」
俺は皆の相手が決まった瞬間に波動弾の準備を始め、大体出来たところでエネコロロに放つ。その動作に前は10秒だが、今は8秒で溜まりきる。この短縮は大分大きな成長となったはずだ。
俺の放った波動弾は見事にエネコロロの顔に直撃し、大ダメージとなった。突然の奇襲で困惑しており、オロオロしていた。
その隙を皆が逃す事はなく、奇襲を始める。いきなりの襲撃は相手の力を大きく削ぐ効果がある。
「く、曲者!」
ラムパルドはいきなりの襲撃に怯みながらも、果敢に攻めようと戦闘体制に入る。他の皆もそれに続いて戦闘体制をとるが遅過ぎた。
それからも、作戦通り綺麗に分断出来て勝利はほぼ確定したも同然だった。
「アンタね!?ハァ……、私の可愛い顔にぃ、ハァ……、傷を付けたのは!」
綺麗に分断出来ているところを見ていると、今にも怒りが爆発しそうなエネコロロが俺の前に立っていた。怒声を俺に浴びせるが正直大したことは無かった。
しかも、フラフラでキツそうにしているので説得力みたいなのも無い。すぐにトドメをさせそうだ。
「"猫騙……」
「"波動弾"!」
エネコロロは俺を怯ませようと、猫騙しをしようとするが、俺が波動弾で牽制を図る。それにより、エネコロロは技を中断し波動弾を避ける。
「ちっ!危ないわね!」
エネコロロは今の攻撃を避けきった後、俺に愚痴を零す様に吐き捨てる。避けきったから、大分反応が速いのだろう。
「でも、残念だけど終わりだ」
俺はエネコロロに終わわせると宣伝し、波動を溜める。新技でトドメを刺すことにしよう。
「な、なな、舐めてんじゃないわよー!」
エネコロロは遂に堪忍袋の緒が切れてしまったのか俺に勢いよく突撃してくる。恐らくは"ギガインパクト"だろう。食らうのはよろしくない。
だが、所詮は簡単に頭に血が上ってやった技―、つまり単調で避けやすい。俺は軽く右に跳ぶ事でかわす。
その後も攻撃が続いて来て、俺は波動を溜めながら気楽に避けていく。たまり終えるまでこれが続く。この間、大体3分位だ。
まだ、フルパワーじゃ無いが十分だ。約五割の力だ。効果は抜群で、虫の息とも言えるエネコロロには十分すぎた。
「"烈波"!」
俺は新たな技をエネコロロに放つ。この技は"空波動"の威力強化版。難点としては範囲の狭さと溜める時間があった。"空波動"は範囲がとても広いが、威力は低い。反対に"烈波"は威力が高い分、範囲が狭い。接近戦向きかもしれない。
「があ゛ぁぁ!」
エネコロロは綺麗に腹に空圧に似た波動をくらい、苦しそうにしていた。
どう見ても戦闘不能だった。
☆ (アルビダサイド)
「凄い技だね、コッチに衝撃波が来そうだったよ」
「大分余裕みたいだし、まだ力を隠しているわね」
私とマロンさんは先程のレオの戦いを見ていたのだが、完全な圧勝で流石と言わざるを得なかった。まだまだ新技を隠し持ってる、とマロンさんは予想しているが流石に無いと私は思う。
……まさかねぇ…。
「オイ!そこの糞ネズミと糞ヘビ!」
「さっきから俺らを無視しやがって!」
突然、私達にヒヤッキーとゴルバットは怒鳴り散らした。レオを見てた私達はその声を聞いてヒヤッキーとゴルバットを睨みつける。勿論、言った内容にイラッときた。
「アンタ達……今何て言った?」
刹那―――、私の隣から殺気が立ちこめていた。意外と沸点が低いから恐い。
「そりゃあ、糞ネズミと糞ネズ……」
此処でヒヤッキーは知らぬまま墓穴を掘る。今から見える光景が恐い。それ以上は言わないのが身のためだと言いたいが……、敵だしいっか。
「分かったわ、アンタで遊んであげるわ。
そこのゴルバットを感電死でもさせてなさい。私はアイツを今日限りの玩具にしてくるわ」
あ、完全にスイッチが入っている。あのヒヤッキーは今日で地獄を味わうだろう。
「"グラスミキサー"!」
「"10万ボルト"!」
マロンさんと私はそれぞれの狙いの相手に技を放つ。ただ単調に出すだけなので避けられるが、綺麗に分断出来た。
私達の狙いは邪魔がされないように分断することである。実際そう思っているのは私だけかもしれない。マロンさんは静かな怒りを表していてただあのヒヤッキ―をぼこぼこにしたいだけかもしれない。
ある意味、分からないから私が分断できるように利用したというのが正解だろう。
「"リーフブレード"!」
マロンさんはジャンプしていて身動きが不自由なヒヤッキ―を尻尾の鋭利な刃で切りつけようとしている。もちろんヒヤッキ―は焦って何かを考えだした。
そう言えば、ヒヤッキ―は水タイプだ。水タイプには大抵が覚えられるあの技があったような……。あの体制でも放てるよね?
「"冷凍ビーム"!!」
ヒヤッキ―は気付いたのか私が想像した通りの技を放つ。あの技は草タイプの弱点を突く。頭に血が上っているマロンさんにはまずいんじゃないかしら。
「よそ見してんじゃねぇ!」
ゴルバットはマロンさんの戦いを見ていた私に大声で注意を向け技を放とうとする。忘れてなどいない、ただ少し溜めながら見ていただけだ。
レオの戦い方を見て思いついたのが今から放つ技。実践ではどこまで力を発揮するか見ものだ。
「"雷槍"!!」
私は溜めていた電気エネルギーを一気に槍の形にして解き放ちゴルバットに放つ。実際は10万ボルトと見た目が似ているが、先を一転に集中させており威力に特化させた10万ボルト。
まさかの反撃だと思ったのだろう、ゴルバットは避けようとしていたが間に合わずにその大口に電気が流れ込む。体に流れるとかじゃなく口から入ると言うのは本当に辛いのだ。無事でいられる筈がない。ましてや、10万ボルト以上で効果は抜群だからたえられる要素はまず無い。
「アボボボボボボボボボボ!」
ゴルバットは謎の奇声を放ちながら電気に苦しめられている。そんな様子を見るとさすがにやり過ぎだと私は気付いてしまった。おまけにレオが酷く怯えた目で見ている。案外ああいう姿は可愛いのだが、普段は何と言うかパッとした特徴が無い。どうにかしてほしいものだ。
ひどく話が脱線しているが、今は関係ない。マロンさんの闘いがどうなっているのか気になるのだ。以前、敗れて辛かったが何処まで強くなっているのだろう?
「ぜぇ、何という強さだ……」
そう言って息を切らしていたのはヒヤッキーだ。マロンさんの攻撃をいくつかくらったみたいだ。
対するマロンさんはやはりというべきか、全然余裕でいた。頭の中でどう虐めるのか考えていてもおかしくなさそうだ。
「終わりにしましょうか。"グラスミキサー"!」
マロンさんの放つ木枯らしはヒヤッキーにトドメをさすのは言うまでもない。ただ、それからが恐怖の始まりなのだ。
案の定、マロンさんは鞭を取り出しニタニタと笑っていた。
ヒヤッキーはこの行動を見て何をされるのか察したらしく、すぐに逃げようとする。
だが、それはマロンさんの蔓の鞭で出来なかった。それにより手足が封じられてしまっていた。
その技が出来るならその鞭は要らないじゃないのかな?ポケの無駄使いだ。
「アルビダちゃん、蔓の鞭が出来るからこれは要らないと思っているみたいだけど……、これは良い道具なのよ。
叩いた時の音がたまらないわ」
マロンさんはサラッと笑顔で恐ろしい事を言う。どうしてこんな性格なった。
「でも、コイツはアルビダちゃんの事も言ったからこの鞭はアルビダちゃんが使いなさい。
心配はいらないわ、私は蔓の鞭の片方で縛り、もう片方で叩くだけですし」
私が今、心配なのはマロンさんの性格何だけどね。この事は口にしない方が良いだろう。
それに私も糞ネズミと罵られたし、仕返しはしたい。良い機会だ。
「じゃあ、お言葉に甘えてお借りいたします」
私はつい敬語でマロンさんに頼むようになっていた。何でだろう、恐怖心が体中を駆け巡ってる様な気がする。
「いいわよ、じゃあ……やりますか」
そう言ってマロンさんは片方の鞭を強く地面に叩きつける。ビタンッ、と鈍い音が聞こえるものだからレオがまたしても引きつった表情をする。
された事は違っても、ひどい目にあっていたのだ。無理もない。
私はレオを哀れむ様に思いながら、ヒヤッキーを鞭で叩いていた。マロンさんもそれに続く。
最初は正直楽しかったのだが、何回もやると飽きるし可哀想に見えてくる。マロンさんはどうして……。
そう言えば、マロンさんはイース村では医者として働いていたのを思い出した。
果たしていいのか、コレは。