part2
僕、クレメンス。今は遺跡の番人と夜通しで戦ってるんだけどなかなか決着がつかない。夜通し戦う事で僕も疲れてきた。番人のシックルは技を多用せず、相手を待つカウンターを得意としているようだ。他にも技ではなく基礎的な攻撃で攻撃の基本を作り多技を叩きこむという戦術を見せたのだ。
「ハァハァ、キリがないね……。実力が互角なんだろうね」
「ぜぇぜぇ、その様だな。だが、それもこれまでだ。俺はまだ切り札を見せていない」
僕達は息を荒げながら会話する。シックルには切り札があると言った。ハッタリなのか?でも、ハッタリでない可能性の方が高い。なぜならば、あいつはまだ3つしか技を使っていない。
「それは、ハッタリで無ければ良いんだけどね!」
所詮そんなものだろう。僕はそんな風に思いながらシックルに接近する。切り札はあやしいが、これ以上長期戦は無意味だ。シックルの特性は"強運"と攻めに強いものだ。アブソルにはもう一つ"プレッシャー"と言うものもあるがシックルは間違いなくこれだ。コイツの攻撃は……。
「大文字!」
シックルは口から炎を吐きだしその炎は大の字となって僕に近づく。効果はいま一つだけどシックルを相手にする場合じゃ侮ってはいけない。僕は確実に避ける事にする。特性によって急所に当たって隙を見せればシックルの言う切り札を食らってお陀仏だ。こちらは切り札を打たせないように接近しつつ、僕の切り札を使う。隙がでかいから失敗したら負けだ。
「っと!しまった!!」
だが、僕は完全に油断してしまった。僕は羽に冷凍ビームが直撃してしまった。大文字に気を取られて、シックルが何をしているのか見えていなかった。あれは目くらましなのだ。おかげで、羽が凍ってしまい飛べなくなり空中から落下する。ここに来て凡ミスをし過ぎな気がする。
「やっと、そのまどろっこしい動きを止めてやったぞ」
シックルはそう言ってゆっくりと僕に接近し始めた。止めを刺す気だろう。これでは終わりだ。遠距離からの冷凍ビームを使わないところを見るとPP切れみたいだけど。それが本当なら幸いなのだが僕にはもう、対抗する力が残ってない―――。
「と思ったかい!」
僕は最後の抵抗に僕の切り札、――"逆鱗"を出す。ドラゴンタイプのトップクラスの技だ。不意を突くにはこれで十分。決まれば勝ちだ。後はただ当たるのを祈るしかない。正直に言うと苦しくて仕方がない。
「"緑の水晶"の主なだけあるな。だが――、」
ボゴッ!
僕の体にきつい一撃がいきなり入ってきた。僕の体に当たったのはシックルの右足。いきなりすぎて反応できなかった。逆鱗をしているから避けようはない。どうやら、僕は立て続けに失敗してしまうようだ。シックルが放った技は間違いなく――、
「この"不意打ち"では意味がない」
僕はその言葉を聞いた途端に、意識が薄くなっていく。
くそう、負けるなんて……。切り札て言うからもう少し大げさなものだとばかり思ったのがいけないんだ。だが……、
「お前は、水晶の主だからな。このままにはしないさ」
と言ってシックルは僕に木の実を投げてきた。それは"オレンの実"だ。回復量はなかなか多いし、助かる。でも、番人なんだからそこんところに情けをかけるのは良くないんじゃ……。
「今の闘いは実力を試すものだ。俺が本気になったし充分だ。じゃ、奥に居るから回復したら来るんだな」
シックルは僕にそう言って去っていった。遺跡が揺れ始めた。もの凄い轟音を立てながら遺跡の壁に一部が下にさがっていく。その部分は完全な通路へとなった。シックルはアブソルなので念力などは使えるようには思えない。と、なると間違いなくこの遺跡には最低でももう一人が居る。行く時の罠もそいつがやったんだろう。この遺跡の中でどうやって生きてるのかは知らない、でも、先程シックルが気軽に僕にオレンの実を投げたところから木の実を栽培できる場所でもあるかもしれない。
「じゃぁ、それが嘘でないと信じてお言葉に甘えさせてもらうよ」
僕はそう言ってオレンの実にかじりつく。夜通し戦って疲れてしまったので、急にお腹が減ったような感覚だ。毒入りなんて考えもあったけど、僕の頭にそんな考えなど無い。いまはただ食べるのみ。
それよりも……。
「"7つの水晶"の伝説は本当にあるかもな……」
★ (レオサイド)
「さて、今から波動を使って探知するから少し止まろう」
俺はある程度、ムサシ達から逃げた後にアルビダにそう提案する。アルビダも「お願い」と言って止まった。俺はそれを聞いて房を立てて集中する。
「あ、お父さんの種族は"ライチュウ"だよ」
それはさっき見たとき分かってたんだけどな。まぁ、確認と言う事で良いか。確実だし、後ムサシ達も何処に居るか判断しないと。僕は半径約5qまでならギリギリ感じ取れる。遠いほど怪しくなるんだけどね。
「よし、アルビダの父さんは……まだ、約3q内に居る。ムサシ達は範囲外だな」
よし、アルビダの父さんは何とかできそうだ。ムサシ達はどうなるかは知らない。バーンも俺ほどじゃなくても波動が使える。せいぜい2qが探知の限界だろうが。それでも、凄いのは変わりないけど。
「じゃぁ、急ごう!絶対にとっちめたいんだから!!」
なんか手を貸してはいけなかった気がしてきた。どうせ、これ以外にチャンスが来るとは思えないけど……。
俺達は走り出した。アルビダの父さんを捕まえるために。どうしても、会いたいという気持ちを走らせているアルビダの足はいつもより早かった。これが、想いの力だろうか。それだけ、会いたいという気持ちを思い切り前面に向きだしているという事だ。
―君は、さっきのライチュウをどう思う?
不意にアイツは話しかけてきた。俺はもう既に引っこんでいたとばかり……、いやコイツは俺の周りを幽霊のように飛び回ってるんだ。引っ込むなんてありえないんだ。
―どう思うって……俺の心は分かるんじゃないのか?
コイツは確か分かるはずだ。さっきだって完全に俺の心を見透かしていた筈だ。
―完璧には無理だよ。僕は時々君が時々何を考えてるのか分からないからね。
さすがに、完璧には読み取れないのか。良かった……、でも時々と言う事は大体は読めているという事だよな。
―へぇ〜、そうかい。それよりもさっきの質問だけど、俺は何か隠し事をしているんじゃないかと思う。
俺はアイツに率直な意見を述べた。単調だけど分かりやすい言葉だ。立っている時、悲しそうな感じがすごいしたけど、それに隠れて何か思いにふけっていたようにも見えた。コイツもそう思ってるんだろうか。
―そうか……、君も同じ考えなんだね。あと、僕をアイツコイツと呼んだりしないでよ。僕にも名前はあるんだから。
コイツも俺と同じ考え見たいらしい。そう言えば……、コイツの名前は知らなかったな。水晶の精みたいな感じで名前は無いかと思った。て言うか、名前があるなら早く名乗ればよかったものを……。
―僕の名前はシンドウ アユムていうんだ。シンドウって呼んでね。
長い名前だな。しかも、シンドウと指定するならアユムはいらないだろ。ポケモンじゃないから名前のつけ方が違うのか?
―さて、僕達の話も長くなったしこれで終わりにしよう。僕は水晶に戻るよ。もう、目的は目の前だしね。
シンドウはそう言って話しかけてこなかった。水晶の中に入れるんだね。出来ればずっと中に閉じこもってほしいよ。
「……てば……」目的……?あぁ、アルビダの父さんか。そう言えば、時々黄色い体が見えるな
「レオってば!!」「うぉ!?……ビックリさせるなよ」
俺は器用にシンドウとほぼテレパシーで話しながら、アルビダの父を追っていた。その間はアルビダの声は俺に聞こえていなかった。実際に話し終えて聞こえたんだからそうだ。これから気をつけないと。それよりも、あまりにも大声出したら逃げられるんじゃ……。
「レオ、止まって」急にアルビダは俺を引き留めた揚句、俺の頭を掴み無理やり下ろした。それにより俺達は近くにあった茂みに隠れる。痛いんだよな、これは……意外と。何故、止まるに至る理由があるのか俺はその時は分からなかった。あまりにも一瞬だし。俺はこっそりと茂みの奥から覗く。
「成程な……」
アルビダの父さんは止まって辺りを見わたしているのだ。気付いたのかな?だとしたら原因はアルビダ、いや……間接的には俺か。でも、まだ理由は分からない。
しかし、暫くしたら赤めの鎧(?)を来ているようにも見えて両手の甲辺りには白い刃があるポケモンが来た。待ち合わせ?
「来たか……、イナズマ。決着をつけようではないか」
誰かがアルビダの父さん―、イナズマに決闘を申し込んだ。ライバル的な関係なのか?でも、それではイナズマさんが何故アルビダ達の前から姿を消した理由が分からない。まさか、浮気!?それならば、アルビダの「とっちめてやる」は分かるが、違うと思う。それならば、アルビダは怒りの表情を少なくとも、一回でも浮かべる筈だ。だけど、今は明らかに心配そうな表情をしている。だから、違う。少なくとも慕っている。
「元"leading"の幹部のイナズマが今や逃げ回る身とはな」
相手はそう言って心底残念そうな表情を浮かべる。相手の種族は"キリキザン"だろうか?それよりも、逃げ回るとはどう意味だ?
「……フゥ、"導きの六柱"と言うのが正式名かな……。いまや、3人欠けて一人入って四人だ。随分と戦力がガタ落ちだ。とは言っても、俺は副指令からある理由で一時的にその称号を剥奪されたんだけどな」
イナズマさんは溜め息をついて、そう呟く。そんな正式名称があったんだな。それよりも、ただならぬ雰囲気が漂い始めた気がする。
「そうか……、俺とお前とアイツで3人か。しかし、その入った一人と言うのは恐らくモリというんだろ?あいつは如何しているやら。さて、"Samsara"の六皇であるこのムラサメがお前を倒してやる」
おいおい、六皇だって?これはまずいな……。俺達だとまだ勝てるかどうか分からない。いや……、待て。ムラサメは今さりげなくとんでもない事を口にしなかったか?モリを知っている?そして、導きの何チャラの一人だった……ということは裏切り者……?だから知り合いなのか?
もう俺の頭の中は疑問符で埋め尽くされてしまった。まるで、訳が分からんぞ!
「瓦割!」
「辻斬り!」
俺がそうこう考えるうちに戦いが始まってしまった。どうする、俺?
「暫くは様子を見ましょ」答えは、アルビダの提案に乗るしかなさそうだ。