part1
私達は今、船に乗って南国に向かっている。1日かけた船旅だ。しかし、その船旅もあいつには苦痛らしい。
「うぅ〜」
レオはずっと下を向いてあんな調子だ。周りの誰にも見られていないのが原因なのだろうか。遠慮無く吐きそうに見える。
「アルビダ〜、横になっておくから外にいっていいぞ」
レオは私に親切のつもりかそう言って、ベッドに入る。私はレオの看病で来ているのだが、やっている事はレオが船酔いしているだけだ。
「うん、じゃお言葉に甘えて」
後はレオが勝手にやるだろう。
私は勝手にそう解釈し、レオの部屋から出る。
「しかし、まさかこんな事が出来るなんて……すごい組織ね」
私がそう言う理由はこの船が貸切状態だからだ。その代わり、中型らしいが。それでも、充分過ぎるくらいだ。
「当たり前だ。全世界の裏社会を見張るためにもこれくらい屁の合羽と言えなければ困るからな」
バーンさんは私の小言を聞いていたのか当然と言わんばかりに"leading"の事を言う。裏社会て……、一体何がしたい組織何だろうか?
それよりも波風が気持ちいいなぁ。波乗りが出来たらこの海でサーフィンしたい。そう言えば、何か忘れているような……。
「あれ?ファルコンさんとムードさんは?姿が見えないけど……」
私はここで二人の事に気付く。もしかして、私達をハーバータウンに運んだら終わり?
私は気になって周りを見渡す。
「私達はここにいるザマス」
「バカンス最高〜!」
私の問い掛けをあの二人は聞いていたのか問い掛けに答え……、いや、ファルコンさんは聞いていない。これがバカンスと言えるのだろうか?
一応サングラスをつけてゴロゴロしているのだが……。これじゃ、バカンスじゃなくて、ただ単にだらけているだけなのでは?
「今日はゆっくりと休むが良い。明日は大変だろうからな」
バーンさんは私にそう言って自室に向かって行った。
確かに明日は大変になるかもしれない。行く先は水晶遺跡というところだ。もしかしたら、そこで"Samsara"の六皇と遭遇するかもしれない。そうなったら戦闘は必至だろうし、こちらに被害が及ぶかもしれない。
それに、父さんがいるかもしれないのだ。もしかしたら、会えるかもしれない。会えたら、私と母さんをおいてフラついている事を責め立てないと……。そして、聞かなきゃ!
―『どうして、居なくなってしまったの?』―、と。
私はただ、ただ……寂しいよ。
★ (クレメンスサイド) 〜レオ達が船に乗った日の夜〜
僕は今とてつもない達成感を味わっている。なぜならば……、
「やっと、着いたぞぉ〜!!水晶遺跡!!!!」
僕はたった今水晶遺跡の入り口に着いたのだ。さて、調査しないと。
僕は水晶遺跡に入って行く。この遺跡にはどんな発見があるだろうか。この"緑の水晶"の秘密が分かれば一番だ。おっと、ナイトスコープをつけないと。
僕は遺跡に入って直ぐに目に付いたのは沢山の骸骨だった。その数、万は越えてるじゃないんだろうかと思わされる程あった。だが、この位難関な遺跡ではよくある事だ。それが、怖いのに変わりはないけど。
取り敢えずゆっくりと遺跡の中を僕は歩き始めた。
「何だ、これ?」
歩き始めて直ぐに石壁に出っ張った部分を見つけた。罠だろうか?命取りになりかねないから押さないけど。
僕は出っ張った部分を無視して再び歩き始めた。罠には気をつけなけなければ。
ガチャン!!
不意に何かが作動する音が聞こえた。
「何!?」
しまったと言いたいが余計な一言を言うより次来る危機を対処すべく全神経を働かせなくては……。
ガラガラ!
案の定罠のようだ。上から大量の瓦礫が降ってきた。この位屁でもない。最小限の威力の技で瓦礫を出来るだけ多く砕いて穴を作ればいい。
僕は砂地獄を放って瓦礫と瓦礫をぶつけさせ砕いていく。やがて、殆どが砕け散ると僕は一生懸命に羽を羽ばたかせ一気に切り抜ける。楽なのだがやっぱり怖い。矛盾しているような気もするけど冒険はそういうもの。何だかんだいってこの遺跡の探検も楽しくなりそうだ。
「……っと!意外と危なかったな」
僕はそう言って瓦礫が落ちたところを見る。殆どを粉々にした為に塞がれる様な事はなかった。僕はそこで気になったあの出っ張った部分を見てみると少しずつ凹んでいった。それと同時に瓦礫が落ちているところに穴があき瓦礫が落ちっていった。
「まさか、誰かがこの遺跡の仕掛けを動かしてるのかな?」
恐らくあの出っ張りはセンサーか何かではないだろうか。間違いなく罠だと踏む奴の裏をかくためだろう。僕の推測が正しいとすると次には誰かが要るからこそできるエグイ仕掛けが待ち構えているだろう。例えば……。
「番人が要る部屋へ誘ってボコボコにしたりとかかな」
ガチャン!!
またもや何かが作動する音が聞こえてきた。まさか……?
ゴロゴロッ!!
僕は音がした方を見ると巨大過ぎる岩が綺麗に転がってきていた。大きさと勢い的に技でぶち壊すのは僕じゃ無理だ。となれば、選択肢は逃げる。これに限る。
「うおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
ただ、僕は逃げる事のみ考えながら飛び出した。さっきまで冷静に居た自分は何処に行ったんだろうか、と後で思うかもしれない。でも今は逃げるしかない。
僕は暫く飛んでいくと前には二つの道があった。穴の大きさ的にあの大岩は入れない。しめたと言わんばかりに僕は全速力で飛ぶのだが、もう片方は段々閉まっていった。こうなると確実に入れるもう片方が良い。恐らく、誘っているのだろう。まぁ、だからと言って無理してしまって行く方に行っても罠はありそうだけど。
「さて、番人だろうと何だろうと突破していくだけだ!」
僕は迷いなく閉まっていかない方に直行する。岩の転がる速さは後ろを振り返ってみると、そこまで速くはない。突破は確実だろう。ならば、問題はこの先だ。取り敢えず、戦闘用意は必要だ。まぁ、それはこの状況を何とかしてからだけど。
ブゥン!
僕は余裕で仕掛けを突破し、見事に先へと進めた。危ない、危ない……。
「さて、戦闘用意を……イテッ!!」
僕は持ってきたポーチを開こうとすると後ろに何か固いものが当たる。振り返ると岩がぶつかって砕けた時の破片が当たったのだ。そこまで、考えられなかった……。
僕は気を取り直して誰でも通れるくらいの穴から様子を見るために、ポーチから双眼鏡を取り出す。僕は手を使って器用に見るのが難しいので組み立てる必要があるのだが……、結構重宝している。さてと、この先には僕の読み通り番人が要るのかまたは何もないと見せかけての罠かな……。
僕はそんな風に考えながら双眼鏡を立てようとするがすぐに止めた。いきなり、冷凍ビームが飛んできたのだ。威力は氷タイプとは違って低めに見える。しかし、これで僕は達周りを気をつけなくてはいけなくなった。4倍弱点なんてくらったらひとたまりもない。ただこれで分かった事は僕の予想通り番人がいたという事だ。
「そこに居るんだろ、姿を現せ」
番人は僕に話しかける。あの罠のおかげで侵入者が何処に居るかなんて分かるんだろう。よく考えれば分かるのに僕とした事が……。僕は正直に降りるしかない。
「さぁて、戦闘開始ですかね……」
僕は穴から飛び出し相手を見る。種族は"アブソル"の筈だ。白い毛並みを持ち頭には鎌のような角(?)がある。僕が下りる間にあのアブソルは冷凍ビームで攻撃しなかった。性格はどうやら正々堂々と戦うのを好むタイプらしい。さっきのは僕を試したんだ、きっと。
「俺の名はシックル。この遺跡の番人だ。」
やっぱりね、番人が居る部屋だったか。声的には雌だね。どうだろうと、手加減は無しに決まってるけど。僕は持ってきていたポーチを投げる。戦いのときは邪魔だ。それと同時に僕とシックルと言うアブソルは互いに睨めあった。
ボフッ!
「砂地獄!」
「冷凍ビーム!」
僕のポーチが落ちると同時に、互いに技を放ちあった。
★ (レオサイド)
「あぁ〜、気持ち悪かった」
俺は船を出てそう言う。本当に気持ち悪かったのだ。酔い止めを買わないといけないな……。暫くは船旅が続きそうだし……。
「貴方は船から出た途端いつもの調子ね……」
「取り敢えず、寝泊まりする場所を探さなければ……」
マロンさんは俺の様子を見てそう呟き、ムサシは珍しくまじめな意見を言う。あれ……?ムサシの様子が……!?何でもないようだけど。
「それなら、ここから暫く歩くでござるが"leading"の小基地があっちにあるザマス。」
ムードさんはそう言ってその小基地のある方角を固い羽で指す。その方角を見るとあるようには見えないのだから、少し遠いだろう。別に疲れてはいないし問題はないだろう。
「バーンさん、この街はなんて言うんですか?」
アルビダはそんな事を何故か今バーンに聞く。まぁ、知っておいて損はないだろうし。ていうか、船に乗る時に何処に行くとか言わなかったっけ?もしかして、言ってないかも……。
「ここは、咽かなところで良い街だよ。クリスタルタウンってところでな。古くから"7つの水晶"の伝説が語り継がれてきた街だ」
バーンはこの街の名前を俺達に教え、それに加えて詳細まで話してくれた。その詳細によるとここは間違いなく"7つの水晶"に関わってるみたいだ。来る意味は断然とある。
俺達はバーンから話を聞いた後、俺達はムードさんが言った小基地の方へ歩いて行った。ファルコンは「先に行って、待ってるぜ」と言って全速力で飛んでいった。その後には最高だぜ――!!、と叫ぶ声が聞こえて来て俺達は苦笑いをした。もう慣れてしまったのかバーンとムードさんは苦笑いすらしていなかったのだが。
そんなこんなで歩いて行くと何やら誰かが居るのか、誰かの影がポツンと浮かんでいた。何やら悲しそうな背中をしていた。
「なんか、悲しそうだな」
―君もそう思うかい?
だが、ここで不意にアイツが話しかけてきた。水晶に何かが居る事は誰にも話してはいない。何故か話す気にはなれなかった。
―お前、見えてんのかよ。
俺はアイツに何気なく聞いてみた。水晶は一応、バックに入れて外の光景なんて見えていない筈なんだが……。
―僕はね、実際は水晶の中に居るけど精神は水晶の周りを漂ってるからね。
それって、幽霊じゃね?もしかして、俺はこの水晶を持つ限り、声だけ聞こえる幽霊と一緒なのか?
―勿論、その通りだよ。
オマケに俺の心を読む無駄機能付きとはこれから大変になりそうだ。
「まさか……、父さん?」
だが、アイツとの会話はこれで終わりだ。アルビダがまさかの事を呟いた。因みに、あのポケモンはどこかに行ってしまった。アルビダはどこに行ったというのが分かってるのか、走り出そうとしていた。
「待て、アルビダ。ダメだ。今追っても、もう見つけられないかもしれないぞ」
俺はアルビダに一言忠告する。まぁ、怒声もなければ、覇気もないため、なんとも弱い忠告だけれども。俺の本音は決まってる。
−君ってなかなか正直じゃ無い時もあるんだね。
五月蝿い。黙ってろなんて言いたいが今はそんな場合じゃない。アルビダの返事を待ってるんだ。
「それでも……、私は行く!」
アルビダは断固として意志を変える気は無いみたいだ。そうだよな、やっぱり家族は大事なんだろうな。ならば、俺がやることなすことは一つだけだ。
「そうか……、俺も分かるさ」
僕はそう言って手先に意識を集中し始めた。大分強めに、そして早くしないとダメだ。
「お前の気持ちがなっ!」
俺は言い放った言葉と同時に地面に空波動を放つ。その場には煙が立ちこもる。皆には悪いが、ここは一旦目くらましさせて貰う。
俺はアルビダの手を引っ張って走り出した。勿論、アルビダの父さんを捕まえる為に。アルビダの葛藤に決着をつけるためにも。
「キ−!!あのガキ共め、どこに行くザマス!」
ムードさんの怒りの一言が聞こえてきたが気にしてはいけない。それでは、逃げ出した意味が無くなってしまう。
「レオ…………、ありがとう!」
アルビダは俺の突然の行動に驚いていたが、すぐに感謝の言葉を告げる。べ、別にお前の為じゃないからな。
−柄にも無い事思っちゃって。
−一回やってみたいと思わないかい?
俺は走りながらアイツとそんな会話をする。我ながら、似合わないと思ってるのは事実何だけど。
−君のキャラは不安定だね。
Q
お前を殴り飛ばしても良いですか?選択肢は次の3つだ。
A
1 はい
2 勿論
3 どうぞ、殴ってくれ
−駄目だからね。あと、触れないじゃないか。
チキショー!
俺はアルビダと走りながらアイツと話していた。何故だろう、この虚しさ。