part2
「ふん、ただ波動弾を二つ作っただけではないか。恐るるに足らん」
ジャネールは俺にそう呟く。
「まぁ、そうだな。ただの波動弾なら」
俺はジャネールに意味ありげな発言をする。
ハッタリではあるが、その言葉はジャネールを警戒させるには十分だった。
「発射っ!」
俺はそう言って二つの波動弾を放つ。
第一弾はジャネールは軽く避ける。
第二弾はジャネールの鱗にかすっただけだ。
「まともな狙いが定まってない……ぞ?」
ジャネールは言葉を途中で疑問形に変える。
なぜなら、俺は目の前に立っていないから。
ジャネールは「何処だ!?」と叫びながらあたりを見わたす。
「俺はここにいるぞ」
俺はジャネールの上空で巨大な波動弾を作っていた。
ジャネールは心底驚いたようで表情はこわばっていた。
すぐに冷静さを取り戻し尻尾に水を纏わせた。
そして、尻尾を思い切り地面に叩きつけて思い切りジャンプした。
だが、これで俺の思惑通りだ。
「“炸裂波動弾”!!」
俺は技の名前を叫ぶと同時に巨大な波動弾にたくさんの亀裂ができる。
そして、大量の波動弾となった。
ジャネールは「しまった」と言って大量の波動弾をすべて受け切った。
俺は技の反動で疲れたが受け身を何とかとった。
「ぜぇ、ぜぇ……。この技は疲れるぜ」
俺は息を荒くしながらクローを睨みつける。
当の睨みつけられたクローは笑顔で拍手していた。
「いやぁ、凄いね。……さすがシシマイさんの御子息ですね」
俺は笑顔で拍手していたクローの発言に驚かされた。
「父さんを知ってるのか?」
俺はクローに問い掛ける。
「えぇ、僕と彼は同僚ですからね」
同僚?
仕事仲間だったとでもいうのか?
「お喋りはここまでにして集中しないと。ほらほら後ろ」
クローは呑気に俺に注意する。
俺は気になって後ろを振り向くとまだまだピンピンとしたジャネールがいた。
「今のは聞いたぜ、小僧。」
ジャネールは余裕綽々としており俺は一瞬絶望する。
「さてと、終わらせるか」
ジャネールは尻尾に水を纏わせた。
"アクアテール"がまた来る!
あんな一撃出来れば喰らいたくない。
「それならば、お前を倒すだけ」
でも、どうする?
雷パンチを喰らわせたいが警戒されていて当てづらい。
しかも、相手はまだ"竜の舞"と"アクアテール"しか技を見せていない。
まさかの事態も考えなくてはいけない。
―力を貸そうか?
まただ、誰かの声に似ている。
そうだ、父さんだ。
でも、それだとこれは……。
―幻聴ではない。
なんなんだ、こいつは?
俺の心をよんでいるとでも言うのか。
しかも、力を貸すって具体的には何をする?
―こうするのだよ。
謎の声はそう言って聞こえなくなった。
その代わりに今の俺には力が湧き上がってきた。
「そういうことかっ!!」
俺は手を前に出し“アクアテール”に備える。
「何をする気かは知らんが受け切れるのか?」
そう言って、ジャネールは尻尾を俺に向かわせる。
俺は掌に蒼い波動をためる。
「受け切ったりはしないよ!!!」
俺はそう言って掌に大きく力を込める。
「“空波動”!!」
俺は技名を叫ぶとともに俺の掌から見えない波動が放出された。
見えないためかジャネールは気付かずにもろに食らってしまった。
そのおかげでジャネールの尻尾は俺に届かなかった。
「何……だ、今のは!?波動なのか!?」
ジャネールは驚きを隠せないのか表情はとても強張っていた。
「シシマイさんと同じ技だ今のは……、とするとどうやら俺達の期待以上らしいな」
クローは笑みを浮かべながらそう言った。
それと同時にアルビダに爪を向けるのをやめ解放する。
「どういうことだ?」
俺はそう言ってアルビダを見るとなんだかニコニコしている。
そして、アルビダを口を開く。
「ただの実力試しだったんだよ。まぁ、ついさっき教えてもらったことなんだけどね」
アルビダはそう言って笑った。
その言葉を聞いたとたん俺は急に疲れがにじみ出てヘナヘナと膝をついた。
アルビダはそれを見て「大丈夫!?」と問いかけてくる。
それをクローは笑ってみていた。
「俺を忘れんなよ……」
だがそれも急に聞こえてきた言葉により消え去った。
「……っう。しかし、お前は見事水晶に主として認められた、よくやったな」
少し傷が痛んで苦しそうだったがジャネールはそう言った。
しかし、話を聞いていた俺には何のことか分からなかった。
「因みにこの勝負は実力試しを兼ねた水晶に主として認めてもらうための通過点だよ」
クローは笑いながらそう言う。
もう、何が何だか分からん……。
「俺達は秘密結社の組織、“leading”だ。7つの水晶の主を導くために出来た組織だ」
ジャネールは淡々と説明する。
説明からして俺達の味方だという事は明らかだった。
でも、なぜそんな組織を立ち上げなくてはいけないんだ?
それは7つの水晶に任せれば済むのではないだろうか。
こいつ等が導く必要はない。
「なぜ、こんな組織があるのか……。そんな疑問を抱いているね。じゃぁ、教えるね」
クローは俺の思考を読み表情を一変させた。
そして、ジャネールがあるものを取り出した。
それは無色透明の水晶で俺とアルビダはそれをみて驚いた。
そして、透明の水晶は光輝きだした。
『聞こえるか?蒼の水晶の主と同行者のピカチュウよ』
何処からか少し年老いた声を出すポケモンの声が聞こえた。
何処から聞こえてるのか最初は分からなかったがすぐに分かった。
「この水晶、映像を映せるみたいね」
アルビダが水晶を見てそう言う。
「そうだよ、じゃぁ説明を黙って聞いててね」
クロー呑気そうに答える。
『さて、まずは7つの水晶について説明しよう。この水晶は巨大な憎しみが詰まっている。この水晶の主となるものにはある共通点がある。それは、強い憎しみを持つもの。それがこの水晶を持つ者の条件だ。』
おいおい、なんだこの水晶は。
呪いの儀式にでも使えとでも言うのか。
『この水晶には全てを揃えてある儀式を行うと世界を滅ぼす力を得ることができる』
は?なんて言った……?
この水晶が7つ揃えて儀式を行うと世界を滅ぼす力を得られる!?
『だから、お主たちに7つの水晶を守ってほしい。話は以上だ』
年老いたポケモンはそう言って映像を切ろうとする。
「ちょっと待てよ!!話がいきなりでかすぎる。あと名を名乗れ!!」
俺は怒声混じりに年老いたポケモンにそう言った。
それを見たジャネールは「なんて恐れ多いことを……」と呟いていた。
なんだ、こいつは偉い方なのか!?
それとも、創造主のアルセウスとでもいうのか!?
『ふむ、そうだな。では、名乗ろう。わが名はアルセウス。世界を作りしものだ』
な……何だと!!?