part1
「お腹空いた〜」
気の抜けた声でアルビダは俺に呟いた。
広大な森の中で俺とアルビダは旅をしていた。
ちなみに、昼をとったのは30分前の話である。
旅をしているのにこれでは食糧が心配になる。
案外、アルビダ母の「アルビダをしっかりリードしてね」という言葉は当たっているかもしれない。
「まだ、30分しか経ってないぞ。それじゃぁ、旅は続けられないよ」
俺はアルビダに注意を促す為にあえて言ってみた。
だが、奴の反応はそれを聞いているのかどうかすら疑問が残る表情だった。
まぁ、反省してないな。
俺はそう思いアルビダのぼやきを無視しながらひたすら歩く。
あてというものはなく、ただ放浪している。
このままだと、俺達はただの流浪人だ。
「なにか、手がかりが欲しんだがな」
俺の呟きはアルビダには自分のボヤキでかき消されていた。
★
―別地点、レオ達を監視する者たちが居た。
その者たちは2匹組で1匹はとても巨大な蛇の様で赤い鱗をしている。
対するもう1匹は体のほとんどは黒っぽい灰色でそれに耳には赤い羽のようなものがついており足と手には鋭い爪があった。
「あいつが、蒼の水晶の適格者か?」
蛇のようなポケモンが鋭い爪を持ったポケモンに問いかける。
「その様だな、レーダーはあいつが持っているという結果を出している」
鋭い爪を持ったポケモンは手首につけている腕時計のようなものを見てそう判断する。
2匹は顔を見合わせ作戦の打ち合わせを始める。
「………………ていう作戦だ。今回の目的は実力を測るものだからな」
鋭い爪を持つポケモンは相方に作戦を話し終える。
「分かった、じゃぁ手筈どうりに頼むぞ。クロー」
蛇のようなポケモンはクロ―という相棒に期待の念を寄せる。
「じゃぁ、行くよ。ジャネール」
クローは相方―ジャネールに作戦開始を促す。
「あいつが我ら“leading ”の導くべきものなのか見ものだな」
クローは不敵な笑みを浮かべて走り出す。
★
「いやぁ、自分で作るとやっぱりおいしいわ」
「オヤジかお前は」
アルビダは自分で作った野菜炒めを食べて呟く。
それに俺は軽くツッコミを入れる。
まぁ、旨いから文句はいえんが……。
グギュルルルルゥゥゥゥ!
「でも、やっぱり足りない……」
だが、なおもこいつの腹は食物を求めていた。
本人いわくこの程度ではまだ我慢の許容範囲内だという。
こいつに女のプライドというものがあるのか……。
恥ずかしいという思いは無いのだろうか……。
でも、それがときには長所にもなる。
短所が目立ってほしくはないがな。
ちなみに今は午後6時、晩飯の時間である。
ガサッ!!!
ガサッ!!!
ガサッ!!!
ガササッ!!!
不意に草むらの方から誰かが動いた証拠の音が聞こえてきた。
俺はアルビダの方に見る。
アルビダはブルブルと震えていた。
意外と臆病な奴だな……。
俺はそのことは口には決して出そうとはしなかった。
出したら後で10万ボルトの刑に遭うのは明らかだからだ。
でも、今はそんな場合じゃない。
なんせ、見えない敵に集中しなくてはいけない。
こんな時に便利なのは当然の如く波動である。
俺は目をつむり周りの波動を読み取ろうとした。
2つの強大な波動が俺には感じられた。
盗賊だろうか―。
俺の頭にはそんな考えが浮かんだが、それならもっと早く襲ってもいいような気がするし数が少ない。
だが、気がつくと1つの巨大な波動は前感じていた所から離れていた。
「しまったっ!!アルビダ、後ろにいるぞ!!!」
俺は必死にアルビダに叫ぶ。
だが、当の本人は「へ?」ととぼけていた。
そんな事もあってかアルビダはいきなり現れた奴に背後を取られ鋭い爪を首に向けられる。
「不用心にも程があるんじゃないのかい?」
鋭い爪を持ったポケモンは余裕を持ってアルビダにそう言った。
そのポケモンは見たところマニューラのようであった。
「このっ、離しなさいよ!!」
アルビダは威勢よく10万ボルトを放とうとするがそれはすぐに止まる。
マニューラはもの凄い殺気を放ちアルビダの動きを硬直させていた。
「お前、いったい何者だ!!」
俺はマニューラに怒声を浴びせ問いかける。
「そりゃ、いえねぇな。蒼の水晶の適格者さんよぉ」
だが、それは中断させられた。
察知していたもう一つの波動をしていたポケモンがレオの後ろでぶっきらぼうに呟く。
「俺達の要求はただ一つ、バトルしろ」
は?金寄こせとかじゃないの!?
わけのわからない要求で俺は少し混乱した。
それはさっきまで殺気に怯えていたアルビダもそう思っているに違いない。
先入観が強すぎるのかな……。
「バトルするのは俺だけだ、いいな?」
もう1匹のポケモンがそう言った。
こいつの種族はギャラドスだろうか……。
しかも色違いで体の鱗が綺麗な赤色をしている。
「なんだか、しらねぇが売られたケンカは買うか……」
そう言って俺は両手にエネルギーをためる。
それはリオルでは覚えられないはずの技―波動弾であった。
それを見て2匹は驚いた表情を見せるがすぐに冷静な表情を取り戻す。
「“波動弾”っ!!!!」
俺は蒼い弾丸を放つ。
それはギャラドスに当たらず地面に直撃する。
蒼い弾丸は地面に激突してから砂煙をあげていた。
ギャラドスは「むぅ」と言って辺りを見わたす。
マニューラはそんなことになっても慌てず冷静だった。
「俺は後ろにいるよっ!“はっけい”!」
俺は余裕を持って後ろに回り込んでいた。
そして、俺ははっけいを放つ。
それは威力より体をより大きく振動させやすいように表面を強くこすったものであった。
痛みを感じず不思議に感じていたギャラドスだが、すぐに苦しそうな表情に変える。
麻痺しているのに気付いてか表情には焦りの色が見られた。
そして、俺は手に電気を帯びさせてギャラドスに向かって走り出した。
「“雷パンチ”っ!!!」
俺は電撃を帯びた拳をギャラドスにたたきつける。
それを食らったギャラドスは「ぐぁぁっ!!」と呻いていた。
「くっ、だがいい気になるのもここまでだ。“アクアテール”!!」
ギャラドスは電気のこぶしを耐え切り水を纏わせた尾で俺を叩きつけた。
「なにっ!?はや……」
「い」と言おうとした瞬間に強靭な尻尾は俺に当たっていた。
そのまま俺は近くに遭った気に叩きつけられた。
しかし、ギャラドスという種族にしては速すぎる気がする……。
少し考えた末に俺はある可能性に気づく。
「砂煙が待っている間に竜の舞を積んでいたか……」
俺は推論でそう呟く。
それを聞いたギャラドスは満面の笑みで「ご名答」と答えた。
「へぇ〜、なかなかやるじゃないか」
ここにきてバトルが始まって黙っていたマニューラが喋り出した。
勿論、アルビダに殺気を放つことを忘れはせずに――。
「そりゃ、どうも」
俺はアルビダを人質に取っている奴に何を言ってるんだろう、と後ですぐに思った。
しかし、なんて一撃だ……。
体がもう重く感じてきた。
「見破いた褒美に俺達の名前を教えといてやろう。俺はギャラドスのジャネール」
「俺はマニューラのクローだ」
自己紹介を悠々としているところを見るとこいつ等はまだまだ余裕があるみたいだった。
「じゃぁ、お返しに俺も名乗ります。リオルのレオです」
俺は自己紹介を返し両手で蒼き波動をため始めた。
そして、それを2分割しさらにそれぞれ大きくしていく。
「行くぜ、“二連波動弾”っ!!!」