part7
「モリ、確か"東国"最強の暗殺組織の主力だと聞いたことがある」
ルワールはモリの名を聞いてある話を少し話しながらしかめ面をしていた。
「その通りだ」
モリは余裕そうにしており雰囲気はとてもレオには恐ろしく感じた。ムサシはこの光景を見ながら武者震いしていた。
「凄い殺気だ。今にも私に噛みつこうとする獣のようだ」
ルワールはそう言いながら指をモリに向けて「貴様を先に殺してやろう」と挑発的な発言をかました。
「俺に挑発しようが無駄だ。なに……逆刃で相手するから命はとらん」
対するモリは挑発など効いている様子は無かった。しかも、逆に刀の刃を使わずに勝つと宣言し始めた。
「刃を使わずに倒すって……」
勿論レオは驚きで呆然としていた。
一体どうやって倒すつもりなのか……。
ムサシも「なんと……」と驚いていた。
肝心のルワールはこれで表情がレオがよく覚えている狂気に満ち足りた物になっていた。
「面白い、その余裕を消し去ってやろうじゃないか」
ルワールはそう言って笑みを浮かべる。それはレオとムサシを圧巻とさせた。
「早い内に切る−」
モリは言い切ったら地面を強く蹴り消えた−いや、見えなかった。
これにはルワールも唖然とせざるを得なかった。直ぐに意識を周りに向け始めた。
「遅い」
だが、ルワールの対応も無駄であり、気がついたら右側に立っていた。すかさずルワールはガードの体勢をとるがモリの剣の峰は既にルワールの脇腹に直撃していた。
「何て速さだ……これじゃあ瞬間移動だ」
レオは今のモリの動きを目視すら出来なかったのである。ルワールは微かな音で気づいたみたいだが反応を間に合わせられなかった。
「"神速"でござる」
ただムサシはモリの今の動きを分かっているようだった。
「"神速"て言うと目で捉えきれない速さだっけ?」
−まぁ、俺には消えているようにしか見えないけどな。
俺は心の中で正直な気持ちを呟く。恐らく一番格下の俺にはそんなモンだと思うけど……。
「ふん、貴様の神速は技ではないだろ?」
ルワールは何か策があるような口振りで語りかける。
そして、ルワールは両手で紫色で正方形の形をしたエネルギー体を作った。それを見てモリは急いで刀をルワールに振りかざす。だが、ルワールは体でその一撃を受け止めた。
「貴様は速いがイマイチ攻撃力が私には足りん。身体で受け止めればどうとない」
ルワールはそう言って「クククククッ」と不気味な笑みを浮かべた。
「"トリックルーム"!」
ルワールは技名を叫ぶと同時に紫色で正方形の空間が広がっていった。
★(アルビダサイド)
「きりがないですね」
「どうしよう……」
「このままじゃ大分時間くうな……」
「だけど、今は目の前の敵に集中しないと」
今現在、アルビダ達は500もの軍勢を30分で300まで減らしていた。
「くそ、思ったより強いぞ」
下っ端軍団のリーダーはこの状況下に戸惑っていた。
「さぁ、来るよ!」
クローはアルビダ達にそう言ったのを機に大群が襲い掛かって来た。
「冗談じゃないよ!」
「全くですわ」
アルビダとマロンはこの軍勢に気圧されていた。
だが、容赦なく軍勢はアルビダ達を襲う。
次の瞬間、放電で周りを一掃するアルビダとリーフブレードで1匹1匹を確実に倒してゆく鬼神がジャネール達の視界に移っていたようである。
★
「トリックルームって確か……」
「遅いものの行動が早くなる空間を作る技でござる」
俺とムサシはトリックルームについて大まかな効力を探り当てた。
「だから、どうした」
モリはこの状況になっても冷静にルワールを睨みつける。それはまさに暗殺者に相応しい風格を放っていた。
その余裕さを見てルワールは少しイラッと来たのか炎を拳に纏わせモリに接近した。
効果抜群の技で一気に決着をつけようとしているのだろう。トリックルームの効力で先程のモリ並みの速度で俺達には見えなかった。
「ふん、寝言は寝てから言え」
ルワールはモリの背後をとると余裕そうに発言する。この時、俺はマズイと思い紫色の空間に入ろうとするが弾かれてしまう。
これでは、駄目だと思ったがムサシは相も変わらず冷静だった。
「師匠は、東国の元暗殺者でござる。それがどういう意味か今すぐ分かるでござるよ」
「ムサシ、余計な一言が多い」
モリはムサシが俺に大丈夫だと伝えるのを余計だと言い剣を後ろのルワールに振りかざす。
その速度はトリックルーム下で速度が落ちているはずなのにまるでものともしなかった。それにはルワールも気付けずに刀の峰が腹に直撃する。
これは、間違いなく強烈な打撃となった。
「グッ……ガァァ、なんだ………今のは?」
ルワールは今の太刀筋を見切ることが出来ず大ダメージを食らった。
この出来事は俺の頭の中の疑問符を大量発生させるには十分であった。
「ただ、お前の行動がハッキリと見えていただけだが」
モリはそう言って刀を鞘にしまう。それと同時にルワールは地面にひれ伏した。
★(???サイド)
ここはとある場所、そこには2匹の巨大なポケモンが立っていた。
「ルワールが倒されたか……、まさかの部外者だな」
その内の1匹が茶色の水晶を通してモリとルワールの闘いを見ていた。
「仕方がないであろう、奴とルワールの相性は最悪ではないか」
もう1匹はこの闘いでルワールが負けた事を“相性が悪い”と言う。
「まぁ、今回の目的はあのレオというリオルに復讐心を根強くするためのものだ。他の奴との勝ち負けは関係ない」
「そうか……。しかし、この体は力は強いが慣れぬな」
2匹は何気ない会話を繰り広げていたが1匹は体に慣れないという不自然な言葉を放つ。
「仕方がないさ、我ら一族の目的達成のためにも、な……」
対するもう1匹はなにか思いつめた表情でそう言いよる。
「当たり前だろ、全ては―――、」
「「我らの腐った人間界の為に――」」
★(アルビダサイド)
「全くてこずらせてくれたね……」
クローはそういうと敵に爪を向けるのをやめた。それに続き、ジャネール、アルビダ、マロンは警戒心を解く。
その周りには先程まで優勢に見えていた500もの軍勢が倒れていた。あれからさらに15分で全滅させたのである。
だが……、
「もう無理です……」
「私も」
「こんなに、疲れるとはな……」
上から順にマロン、アルビダ、ジャネールが疲れ切った表情でだらりとし始める。
「じゃぁ、君達はここにいて。俺がレオ君達を見に行く」
ただ、クローだけは余裕そうで唯一体力が残っていた。そして、クローはマロンの家に行こうとするがある問題に気付かされた。
「そう言えば……、
マロンちゃんの家ってどこだっけ?」
この言葉にアルビダ達は圧巻とさせられたそうである――。
★(レオサイド)
「さて、“leading”本部に連れて行くか……」
モリはそう言って2つ輪のあるものを取り出す。明らかに手錠なのは間違いないだろう。
しかし、レオはモリが言った“leading”に反応を見せた。
「あれ?モリさん“leading”って今言いましたよね……?という事はクロー達の仲間?」
俺は相手に恐ろしさを抱いてしまったのか珍しく丁寧語を使っていた。
「その通りだ、話は以上か?」
モリはそう言ってルワールに手錠をかける。この時のルワールは絶望しきった表情をしていた。
なんとも心強い味方が居る、この情報は俺に安堵感を取り戻させる。そして、俺はルワールを見る。
「なんだ、憂さ晴らしでもする気か?」
ルワールは俺に尋ねる。そう聞かれるのは無理はない。俺の父さんを目の前で殺したのは紛れもなくこいつなのである。
「あぁ、俺はお前が憎いよ」
俺はそう言って波動弾を作りルワールに向けて放つ。それは抵抗の出来ないルワールに直撃する。弱っているのかさらなる大ダメージを食らっていた。
「俺の大好きな父さんを……目の前で奪い、そして薄気味悪い笑みを浮かべながら今俺の目の前に現れた!!!これほど嫌らしいことはないよ!!!!」
俺はこの時怒りのあまりに波動弾を大量に作った。ルワールをどこか静かな所へ波動弾で吹き飛ばした。
「あれほどの憎しみとはな……、“7つの水晶”は確かに呪いの水晶と恐れられるだけはあるな」
モリは今のレオを見てそう発言する。それは、まるで“7つの水晶”がどういうものか具体的に知っているようにムサシは思えた。
「お前なんてこうなればいい!!」レオは大声で叫び狂乱しながら手錠で縛られ無抵抗なルワールを殴っていた。
その光景をムサシは恐ろしいものを見たといわんばかりの表情でいた。
モリはこの光景をまるで憐れむかのように見ていた。
「消えろ、消えろ、消えてしまえ!!」
もう、レオはいつもの様子ではなくなっていた。だだ、復讐を果たそうと躍起になる鬼神だった。
「悪いが、そこまでにしてもらおう」
しかし、それは不意に聞こえた声で中断させられた。
声の主は全体的に黄色を基調とし黄色い髭のようなものを生やし、スプーンを二つ持ったポケモン―、フ―ディンだった。
「お主は!!何故ここにいるでござる!!」
ムサシはそのフ―ディンの登場を見て先程のレオと似た表情を見せる。モリはこの表情のレオを見て相手のフ―ディンを見る。
「お前は、確か東国のフリーの暗殺者だな」
モリは相手の正体に気づく。面識があるのだろうか……。
この殺伐とした雰囲気をこの場にいる誰もが固唾をのんで動きを止めていた。
しかし、突然の乱入者によってその雰囲気は難なく崩壊した。
「私の名はウィル、“Samsara”の六皇の一人。あなたはそこにいる六皇の一人のルワールを倒すとは……厄介ですね。いずれ消させて貰いましょう」
ウィルと名乗ったフ―ディンはそう言って消えた。俺達は何処に行ったかと思い、辺りを見わたすとルワールまでもが居なかった。
「くそ!消えたか」
俺はルワールが姿を消した事を残念に思った。
「絶対に復讐してやる……」
俺は煮えたぎる思いを胸にそう言い放った。
「レ〜オ」
しかし、そんなレオの煮えたぎる思いは聞き覚えのある声にかき消された。
アルビダである。ジャネール、マロン、クローも一緒にこちらに向かってきていた。
「いや〜、ムサシ君だったんだね。報告にあった6番目の水晶の主は」
クローはいつもの呑気な感じで俺に話しかける。
ていうか、水晶の主に順番があるの?
「これで、水晶の主は三人だね。やったね!!」
アルビダは自分の事の様に喜んでいた。ていうか、もう1人は……マロンか。
でも何はともあれ、仲間が着実に集まり俺はさっきまであった憎しみをあさっりと抑え込んでいた。
……、仲間っていいもんだな