part5
今、レオ達はルワールを倒してから遺跡の奥へと向かっていった。そこでなら皆が集まれるかもしれない、そう信じて。
レオ達はゆっくり奥へと向かう途中敵が襲ってきたがどれも大したことはなく、簡単に蹴散らしていった。だが、少しずつ疲弊はしていく。狙いはそれであろう。
アルビダも神経を研ぎ澄ませ、前へ進んでいたがある光景を見てパァッと晴れた表情をする。
「あっ!光が強い!ここはやっぱり前に通った道だよ!」
アルビダは嬉しそうに今までにないぐらいの速さで明かりののあるところへと走っていった。レオもそれに追いつこうと軽く走る。
しかし、アルビダは部屋に入った途端、急に部屋から出てきた。急な事に互いに向き合ってるレオとアルビダは顔面衝突する。
「痛いな、オイ!お前の頭はトンカチかごらぁぁ!」
レオは急にぶつかってきたアルビダに大声で怒る。対する、アルビダは頬を赤く染めながら「静かにして」と小さな声で行った。
アルビダはレオを引っ張り奥の部屋の様子を見せる。その光景は思わず絶句するほどのものだった。
「すげぇな、こりゃ……。今までの雑魚軍団とは違い、精鋭が100人か……。波動で大体分かる」
レオはその光景を見て冷静に自分のお得意である波動を使い、状況をいち早く把握する。それは相手の力量をも読めるほどに発達していた。
「こりゃあ、皆が来るまでになるべく多く倒す必要があるな」
レオはそう言って、手に波動を溜め出した。アルビダもいつもならここは止めるのだが、今回は同意したのか頬から電気を散らしていた。
二人は向き合い、頷いたところで同時に敵に向かって走り出した。あまりにも堂々とした進攻に敵は動揺を隠せず、戦闘態勢をとる。
「"烈波"!」
「"雷槍"!」
レオは"空波動"の強化版を、アルビダは雷の槍を敵に投げつける。その攻撃で敵が一気に八人倒れ、さらに動揺が走る。
随分と派手な宣戦布告である。
★ (クレメンスサイド)
重症でもあるにもかかわらず、シェイドとシックルの二人のアブソルはボルトへと駆け出して行った。クレメンスは二人を信じて"竜巻砂漠"の形成を始めた。見え見えの陽動作戦である。
「行くぞ、シックル!」
「ええ、必ず成功させる」
二人は互いに声を掛け合い二手に分かれて挟み撃ちを狙う。二人の口には"冷凍ビーム"が形成され、いつでも攻撃できる準備は整っていた。
対するボルトはボロボロの二人など最初から無視をして、クレメンスを狙い"高速移動"をする。クレメンスの攻撃さえ当たらなければいいのである。ボロボロな二人の攻撃は軟弱だと高を括る。
二人は勿論そんな事など予測済みである。二人は急な方向転換を同時に行いボルトの行く道の地面を既に形成していた"冷凍ビーム"で凍らせる。
二人の狙いはあくまで時間稼ぎ。倒す必要性は全くない。二人の作戦勝ちで、ボルトは"高速移動"でクレメンスに対してまっすぐに向かっていた為、うまくブレーキをかけられなかった。ボルトは勢いよく氷上に転倒する。
クレメンスはそれを見てなるべく上空で作ろうと上に向かった。形成は簡単にできるが、当てるのが厳しい。当たるかどうかは二人に委ねられた今、クレメンスが出来る事はいち早く"竜巻砂漠"を形成し隙を見逃さないかである。
「"ワイルドボルト"!」
ボルトはいち早く二人を倒す為に自分のお得意の技で特攻を仕掛ける。電気を纏い一気に蹴散らすつもりである。こちらも当たれば勝ちである。
つまり、今の勝負はどうやって一撃を当てるのかが勝敗を分けるのである。この場に居るボルト以外の誰もが一撃で倒れる。そのボルトもクレメンスの"竜巻砂漠"さえ当たれば一撃である。
少しのミスも許されない。全員にその緊張が走っていた。一番シンプルで一番内容が深いバトルとなっている。
シックル達はボルトから距離を取り、特殊技で攻め立てようとしていた。ボルトは完全なる近接タイプ、間合いから離れる事は単純明快で一番効果的であった。ボルトも必死に距離を詰めようとあれやこれと仕掛けてきてはいるがシェイド達にひっかきまわされ始めていた。
「むぅ!これでは埒が明かないですね!」
ボルトは今の状況に焦りを感じたのか、声を荒げ攻撃が単調なものへと変わっていった。どれも攻撃が大ぶりで一撃の重みは最高であるが小技の効いたものではなくなり簡単に避けきれるようになった。
それをシックル達は見逃さず"大文字"でボルトの周りを火の海にした。分かりやすいサインが出来た事により形成が終わっていたクレメンスは遠慮なく"竜巻砂漠"を放つ。当たれば勝ち、それは間違いのない事であるが所詮は当たったらの話であった。
ボルトは待っていましたと言わんばかりの表情をし、"高速移動"で火の中に突っ込んで行った。肉を切らせて骨を断つ、とはこの事だろうか。完全に決まったと思っていたシックルに技を使ったまま接近し綺麗に"雷パンチ"を当てられてしまう。これにより、シックルはもう動けなくなってしまった。シックルはかすかな意識を保ちながら残りの二人を見る。
この時、ボルトは必死に辺りを見わたしクレメンスを探していた。やはり、先に倒しておきたいようであり、先程の"竜巻砂漠"が邪魔で見失っていたのだ。
勝負を急いでしまったのか、ボルトにわずかな隙を付け入られてしまった。せっかくのチャンスを無駄にしてしまった事にクレメンスはがっくりとする。それにより、ボルトへの注意が逸れてしまった。シェイドが走り出す、ボルトがクレメンスがしょぼくれていたのを見つけたのである。拳に黒い雷を纏い始め走りだした。
「貴様はまた大切な者を俺に殺されることになるな!情けない!」
ボルトは止めを刺すべく駆け出し、精神的にも追い詰める気なのかクレメンスのトラウマをえぐっていた。以前、ボルトに両親を殺されたクレメンスは今回もシックルとシェイドを守れない。そういう思いを植え付けるべく。
「危ない!クレメンスさんっ!!」
シェイドはありったけの力を振り絞りクレメンスを庇う為に走る。このままではクレメンスがやられる、そう思って走り出したが奇しくも間に合わなかった。無抵抗なクレメンスは
「「!!!」」
シックル、シェイドは拳を諸に喰らい、ボルトの言う通り情けなく吹き飛んでいった。希望はこれで潰えてしまった、二人は敗北を悟る。
「……、どういうことだ?手応えがない!?」
しかし、ボルトは思わぬ言葉を口にする。それを聞いて二人は辺りを見わたす。
すると、ボルトの後ろの上に希望が見えてきた。
「確かに、僕は情けないかもしれない。だから、お前を倒す為に今まで特訓を重ねてきた……。今、そのおかげでお前を討つことができるっ!!」
ボルトの後ろで大声で言っているのは勿論クレメンスであった。しっかりと"竜巻砂漠"を形成していた。先程、拳に当たったのは"身代わり"だったのである。失敗を見越して放った技を使って見えなくさせ、その間に作りだしたのである。
「ふんっ!また逃げ……、れないだと?」
ボルトは放たれる前に逃げ出そうとしたが、足元に冷たい感覚を覚え足を動かせなかった。シェイドが逃げるのを見越して足を"冷凍ビーム"で凍らせたのである。
「これで終わりだぁぁぁ!!」
クレメンスは因縁に対し、終止符に自身の最大の技を放つ。竜巻はあっという間にボルトを飲み込み、中に潜む竜がボルトを攻撃する。
「ちくしょおおおおおお!」
ボルトは竜巻の中で悲痛な叫び声を上げる。竜巻が終わったころにはボロボロな姿となり、何一つ動かす事が出来なくなっていた。
「……、勝っ……た」
バタンッ!
クレメンスは何かを成し遂げ、疲れ切ったかのように意識を失う。シェイドは急ぎ、オボンの実を三人分取りに向かった。