part3
レオ達が戦いを終わらせた頃――――、ムサシ達はというと……。
「ここは何処でござる?」
「水晶遺跡のどこか……としか言いようがないわね」
ムサシとマロンは水晶遺跡に飛ばされてバラバラとなった仲間を探していた。前回の探索でもあまり深く調べていない為初めて来た時と違いがないのである。
しかも、今回は敵の手によって飛ばされたのだ。敵の罠があると考えていい。おまけに今いるところは前とは違う場所である。待ち伏せ、配置型罠等色々な手段で襲ってくる恐れがある今、ムサシ達は仲間を探しながら辺りに注意を向けていた。
「ムサシ、そういえばムラサメとフリーズ以外の”六皇”がいなかったわね」
唐突にマロンはムサシに他の”六皇”についての話しをふっかける。マロンの言う通り、他の奴らはアジトにはいなかった。ここの制圧に向かっており、既に完了したのだろう。わざわざ、スイクン達という強敵がいるところに悠長にマーキングテレポートをしかけるのは可笑しい。マーキングテレポートは特定の場所に誘い込む為の物ではないだろうか、ムサシはそう考える。
「ウィルがこの遺跡にいるのでござるな…」
ムサシは自分とマロン、それぞれの父の仇であるフーディンのウィルの事を思い出し、歯ぎしりする。あの時は何もできず父の無残な姿を見るだけだった。それが歯がゆくて仕方が無いムサシはウィルに対して闘争心を湧き上がらせる。
わざわざ誘い込んだとするともしかしたらウィルが襲ってくるのだろうか、マロンはそう考えながら辺りを見渡してため息をつく。ムサシはウィルの事になると憎しみが溢れ出て少しブレーキが効きそうにない。マロンも勿論それほどウィルの事を憎んでいる。
しかし、相手はとてつもない強敵である。冷静さを欠いては一瞬で決着がつきかねない。東国での戦いではなんとか渡り合ったムサシだが、次もそううまくいくとは限らない。そもそも相手がウィルなのかもわからない。
ゴゴゴゴゴゴゴッ!
しかし、不意に何かが始まりムサシ達に轟音を響き渡らせる。これがなんなのか、そんな事を考えることをせず、ムサシはホタチを二つとも取り出し”シェルブレード”を形成する。
次の瞬間、大量の岩がムサシ達に向かって襲ってきた。ムサシはそれを見ると一気に駆け出して大量の岩をスパスパと切っていく。
マロンはそれに少し遅れて尻尾を緑色に光らせ”、リーフブレード”で岩を切っていく。ムサシとマロンはここで岩が技によって発生した物ではないと判断する。これは技によって襲ってきた岩だと判断したのだ。
このような事はエスパータイプぐらいしか出来ない。それはつまり、ほぼ奴しか出来ないということである。その相手はムサシ達にとって宿敵である者である。
「ほう、覚醒しなくてもこんなに早く凌がれるか…。二人とも東国の時より強いな」
その者の声がムサシ達の耳に響く。ムサシはその声がする方を睨んでいた。マロンもまた同じように睨んでいた。
「ふん、二人揃って睨みつけるか…。そんなんで私の防御は下げれんぞ」
睨んでいるムサシ達をその憎き者がくだらない茶々を入れる。
「寒いギャグはいらないわよ」
「お主に合ってないでござる」
ムサシ達はそんな奴の寒いギャグを適当に返して戦闘態勢をとる。相手は確実に自分たちより格上。気を抜けないのである。
「ムサシ、マロン…貴様らの水晶を回収する」
「やってみるでござる、ウィル」
ウィルは先程のようにふざけた様子ではなく真剣に殺し屋としての目をしていた。迷いなく殺すことを遂行する悪魔の顔になる。
対するムサシは挑発地味たようにウィルに返す。いつでも、斬りかかれる様にホタチはまだ技を形成したままである。
「ムサシ、いくわよ!」
「あぁ!」
マロンの掛け声と同時にムサシはウィルのいる方へかけて行った。
★ (ムサシサイド、戦闘態勢)
「”シェルブレード”!」
先手必勝と言わんばかりにムサシは青いエネルギーを纏ったホタチを勢い良く振り下ろす。ウィルはそれをバックステップして紙一重で避けるーーー、ように見えたがバックステップの着地後に頬に血が流れていることにウィルは気づく。まだ覚醒していないムサシの攻撃でこれなのでウィルは表情をより厳しい物にさせてスプーンをムサシに向けた。
「させないわよ!”リーフブレード”!」
マロンはその間に紫色のオーラを纏い覚醒して身体能力を伸ばしてから攻撃する。ウィルはこの攻撃をムサシに向ける筈だった”サイコキネシス”を自分にかけて宙に浮いて避ける。
ムサシの様にかすり傷を負わせられはしなかったが、中々危なかった。ウィルにとってこれは厄介極まりないことである。だが、歴戦の暗殺者は焦りを見せず自分にかけた技をといてマロンにスプーンを向ける。
「”サイコキネシス”」
ウィルは冷静に判断して得意の”サイコキネシス”をマロンにかける。そのままマロンを自分の元に寄せる。いざという時に盾として使えると判断した為である。
しかし、今度はムサシが紺色のオーラを纏いものすごい速さの”アクアジェット”でウィルに接近する。ウィルはこれを見てマロンにかけた”サイコキネシス”をあっという間に解除して手に素早く緑色の球を形成する。そのまま”エナジーボール”をムサシに向けて発射する。この間僅か数秒である、前から決められていたかの様に滑らかな動きでムサシに有効打を放ったのである。
ムサシは驚いて無理やり軌道を修正する。だが、間に合わず”エナジーボール”はムサシに当たった。
「ぐあぁぁぁっ!」
ムサシは思わぬ反撃を避けきれず遺跡の中で派手に転がる。骨などは無事だがダメージはでかい物だった。いきなり敵に深手を負わされる羽目になったのだ。
「ムサシ!」
マロンは心配そうにムサシを見つめる。その視線の先ではまだ戦える様子であるムサシが立っていた。覚醒したことで耐久力も上昇している。とはいえ、もう1発食らうのはよろしくない。
「余所見してていいのか?”シャドーボール”!」
ウィルはムサシを心配するマロンを見てチャンスと見たか大量のミニマムシャドーボールを形成して放つ。
これを見たムサシは思いっきり走り”シャドーボール”を片っ端から切って行った。
「ムサシ!あまり無茶は…」
「拙者はまだ一発くらっただけでござる。次は危ないでござるが」
マロンはムサシを心配そうにしながら注意して、ムサシはまだ大丈夫だと言い張る。
「”冷凍ビーム”!」
ムサシはそう言って普段あまり使わない遠距離技を放つ。それは呆気なくウィルがマロンの方へ”サイコキネシス”で返す。
「強がるのはいいけど、考えなさい。”グラスミキサー”!」
マロンはムサシに注意しながら、大きな木枯らしをムサシの”冷凍ビーム”に向けて放つ。木枯らしと冷気をまとったビームがぶつかると段々木枯らしが冷気を纏い、ウィルに向かって行った。
「何!?」
ウィルはこれには驚いたのか、珍しく表情が強張っていたのが緩んでいた。それが仇となり冷気の木枯らしを避けることが出来なかった。
「”氷葉嵐”!」
マロンは冷気を纏った木枯らしの技名らしきものを叫び、ガッツポーズをする。初めから作戦だった様だ。
「あんたの特殊技弱いからね」
マロンはムサシに笑いながらそう語りかける。これにはムサシは苦笑いをせざるを得なかった。
「やってくれたな…」
だが、まだウィルは倒れておらず前よりも力を強めて二人に”サイコキネシス”をかける。その力は先程よりも強固な物だった。
「ぐぅ!…まだここまでの力を…」
ムサシはウィルの底力を見て少し萎縮する。すぐに振りほどこうともがく、が、出来るわけがなかった。
「ハアッ!」
ウィルは大きな掛け声を出して両手を勢いよく叩くと、ムサシ達は勢いよく衝突する。
「「かっ……」」
二人は勢いよく身体がぶつかり合い、痛みを味わう。
「まだだっ!”気合玉”!」
ウィルはそれに続いて怒涛の攻撃を見せる。ムサ達は”サイコキネシス”から解放された途端に目の前にエネルギー弾が迫ってきていた。
「ぐあぁぁぁっ!」
「きゃあぁぁっ!」
二人にエネルギー弾は直撃し勢いよく吹き飛んで行った。
それからすぐにウィルは”サイコキネシス”で周りの岩を浮かしてムサシ達に向けて飛ばす。早くて尚且つ大量に出来る。攻撃を受けて少し怯んだばかりのムサシ達には凌げないと判断されて放たれた。
だが、ムサシ達はそんなウィルの予想を裏切るかの様にすぐに起き上がり、最初の様に岩を切り刻んでいく。
「なっ!…」
またもやウィルは驚き段々と焦りを募らせて行った。それが仇となる。
ムサシ達は何かをしかける気か勢いよく駆け出す。それを見たウィルはさせまいと”シャドーボール”を連射する。
その攻撃は難なくかわされ、ムサシは両方のホタチで”シェルブレード”を形成して二つとも投げつけた。
ウィルはそれを紙一重でかわしていき、これでムサシの攻撃力が下がったと思い余裕が出来る。だが、マロンの攻撃がまだ残っているのである。
マロンは尻尾を緑色に光らせる”リーフブレード”でウィルの元へ向かう。ウィルはそれを避けようとするが、予想だにしなかったことが起こった。
マロンの”リーフブレード”はウィルの顔面に当たらず空振りしたのである。ウィルはこれに疑問を覚えた。
その間にマロンは落ちているホタチを”蔓の鞭”で拾い上に投げる。それからすぐにウィルの手を巻きつける。
「これは…!しかも、ムサシがいない!」
ウィルはここで二人の狙いに気づき後悔の念にかられる。手まで封じられ”テレポート”も封じられたのだ。
「ウィル!お主は我が父とマロンの父の仇!お前は今ここで拙者が倒す!」
ウィルはムサシの声が聞こえた。この声は怒りに満ちたものであった。
そして、その声はウィルの頭上から聞こえていた。手には”シェルブレード”を形成したホタチがあった。
「くらえ!”シェルブレード・一刀両断”!」
ムサシは身を重力に任せウィルに向けて水の刃を振り下ろす。その威力は絶大で一撃が恐ろしかった。
「ぐわあぁぁぁぁっ!」
ウィルは勿論絶えるわけなく戦闘不能になる。それと同時にマロンは”蔓の鞭”で縛ってた手を解放した。それにより、ウィルの身体はゆっくりと倒れた。
大怪我はしたが死んではいない。だが、それで十分だった。
「勝った…、勝ったでござるよ!」
ムサシはこれ以上とない表情で喜んでいた。