part7
その頃、クロー達の闘いは完全に決着がついていた。
「くそ!まともにダメージすら与えられないのか…」
クローはボロボロになって愕然としていた。相手は伝説のポケモン二人。対するこちらは四人。良い勝負になると踏んでいたがそんなに甘くはなかった。彼らは強過ぎたのだ。基本的なスペックから大きな差があったのが今回の敗因であろう。つまり相手が悪いといったものである。
他の三人は戦闘不能で、その内の一人であるモリはは直ぐに助けないと死にそうであった。
「この程度か……」
ギラティナの姿をしたルーツは無様にやられた"leading"の幹部達を見て呟く。この闘いで彼らは全く本気ではなかった。奪ってあまり使わなかったこの体に慣らす余興として彼らは挑んだがその余興にすらならなかったようである。
「どっちか一人だけとかなら余興以上の期待が出来たかもね〜」
フリーズはクローを睨みつけながら呑気に言う。フリーズの言うとおりわざわざ二人で掛からなくとも簡単に勝てるのだから、二人で共闘する意味はない。つまらない闘いをするだけである。
フリーズは欠伸をしながら周りに冷気を放つ。その冷気はどす黒い殺意のこもったもので、氷タイプのクローですらその冷気には思わず凍えてしまうほどである。隣に居るルーツも寒い為か震えだす。自身の体はドラゴンタイプなためか、クローより影響が強い様である。
フリーズの放っている冷気はクローに止めを刺す為に放たれた。その冷気はクローの周りに氷柱を作っていった。それを見たクローは覚悟を決めた表情になる。彼に反撃の手立てが無いというなによりの証拠であった。
「消えなよ……」
フリーズは呑気な雰囲気から一転、氷タイプの様に冷たいまなざしでクローを見つめ、止めの技を放つ。"凍える世界"―――、その技は一気にクローを狙う。彼には反撃できるほどの体力はない為目を瞑り、自らの死を受け入れる。ここまでか、クローはそんな風に思い次に来る痛みにへと備えた。
しかし、思いもよらぬ事でその光景は成立しなかった。
「……ホウ」
ルーツは興味心身にまさかの光景を見ていた。
いつまでたってもクローに痛みは襲ってこない。痛みを味合わずに死んでしまったのだろうか、とクローは思い目をあける。その先に見える光景で分かるものは自分の死ではなかった。そんなバカな、クローはただそれだけを思った。
目の前に見えた光景は、アルセウスがクローをかばっている姿である。どうして急に現れたのかは分からない。それでも確実に分かる事がる。アルセウスが自分をかばってくれている事だけは。
「どうしてですか!何故私如きを助けるなんて!!」
クローは"凍える世界"を食らってしまったアルセウスに向けてそう言い放つ。創造神がいきなり現れ自分を守ってくれたのが、悔しかったのである。
「"私如き"か……、それは逆だぞ。"私如き"と言うべきは私の方だ。命は尊いものだ」
アルセウスはクローにそう答える。創造神であるからこそ言えるのであろうか、誰にも分からなかった。
「"命は尊い"?!貴様が言えた台詞か!!我々の家族は尊くないというのか!!?あの時の事を私は忘れぬぞ!!絶対にだ!!!」 ルーツは突然、アルセウスに対して怒りをぶつけた。隣に居たフリーズもアルセウスをキッと睨みつけた。
「貴様は葬り去らなくてはならないようだな、ならば!」
ルーツは突然アルセウスに飛びついた。いきなりの事にアルセウスは抵抗できず吹き飛ばされる。吹き飛ばされる先には何やら穴が開いていた。
「っ!!クロー、すぐにバーン達の治療を行え!!」
アルセウスは事態を察したのか直ぐにクローに指示を出す。それを聞いたクローはただはい、と言う事しかできなかった。
「フリーズ、行くぞ!奴との決着は"反転世界"でつける!!」
ルーツは大声でそう言いながらアルセウスと共に穴の中に入っていく。フリーズもそれに続き入っていった。そこで穴は閉じてしまい、穴があった場所はただの壁ととなった。あの穴が"反転世界"だろう、とクローは推測していた。
しかし、こうなってしまった以上今は三人の治療の方が最優先である。
「治療できるかな……」
今はそれだけが不安だった。
☆ (レオサイド)
アルビダはガッツポーズしてから、レオ達に近づく。
「アルビダ!よくやった!!」
レオはアルビダが水晶の奪還を達成してくれたことに喜んでいた。これで水晶の主は全員揃った。これで真の力を発揮できるようである。
キィィィン!
突然全員の水晶が輝きだし、共鳴を始めた。それと同時にレオ達には力が湧きでるような感覚を味わった。
レオは蒼いオーラ、ムサシは紺色のオーラを纏う。二人は以前にもこのような体験をした事がある為それ以上はなかった。驚く事は残りの皆もそれぞれの水晶の色のオーラを纏っている事である。
「これが完全覚醒……」
イナズマはこの光景を見てそう呟く。口ぶりからして知っているようであると、アムネジアは気付く。
「知っているのか、この事を」
アムネジアはイナズマに尋ねる。アムネジアにはイナズマの言う"完全覚醒"と言う物に気がかりを思えたからだ。
「水晶の主がすべて揃った事で全ての水晶が本来の力を発揮する、それだけだ。でもその"それだけ"が強力なんだ」
イナズマの説明にレオ達は成程と思った。すべて揃う事で全員が覚醒するのだろう。既に覚醒したレオとムサシにはあまり関係はないのである。
「これなら私も役に立てる、いける!!」
テンコは湧き上がる力を感じて妙な実感がわいていた。彼女はあまり役には立てていないことがネックなのかとてもうれしそうだった。
「私もこれで戦力ね!」
アルビダは完全に自信満々であった。
「分からなくもないけど落ち着きなさい二人とも」
変わらず冷静であったマロンである。
「僕もこれで奴と対等に戦えるかな」
嬉しそうに呟くクレメンス。
「良い力だ、正しく使わないとな」
あくまでも、無暗に喜びはしないアムネジア。
次第に光が収まっていき、湧き上がった力はなくなっていった。完全に光が収まって、ちょっとした後に衝撃な事が再び起こった。
カァァ!
今度はレオ達を縛る鎖が輝きだしたのだ。さすがに今度は水晶ではないと誰もが気付いた。
「これは確か……、"マーキングテレポート"だったでござるな?アムネジア殿」
ムサシは輝く鎖を見ながら、アムネジアに尋ねる。アムネジアはただ黙って縦に頷いた。"マーキングテレポート"は飛ばすものと同じマーキングがされている所にテレポートするものである。以前はこれで寸前だったルワールとの戦いを避けたのである。
「……行先は"南国"の"水晶遺跡"だ」
不意に倒れていたムラサメが立ちあがり、レオ達に言い放った。彼の言った行先に誰もが驚いた。スイクン達が居る"水晶遺跡"に飛ばして何の意味があるのかさっぱり分からないからである。
―第二の創造神、つまりは僕が目覚めるのはあそこでしかできないからだよ。
不意に水晶からアユムの声がその場に居る全員に聞こえた。その内容はさらなる衝撃をレオ達に与えた。
「うそ!!私の水晶も!?」
アルビダは"黄の水晶"に"マーキングテレポート"が施されている事に気づく。それはつまり水晶の主が全員一気に"水晶遺跡"に贈られるという事である。
「そんな!!という……こ……と……………」
レオが何かしらを言う前にテレポートされてしまい、牢獄に居たレオ達とアルビダは綺麗に転送されてしまった。