クリスマス 〜レオの思ひ出〜
"東国"に出発する前のレオは荷物整理をしていた。要らない道具は処分するためである。
そんなときにふと、"大切なもの"を見つけた。
「これは……」
何故か入っていたペンダント。どこで手に入れたものか覚えが無く、レオは考え込んでいた。要らないものなのかの分別しがたい。レオはペンダントを適当に触れているとペンダントはパカッと開いた。
「ありゃ?写真がついてるぞ」
レオはペンダントが開いた後に上側の方に写真がついているのが見えた。その写真を見てみるとレオにはこのペンダントがどういうものか思い出した。
「あぁ、そう言うことね……。これは確か……」
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「お父さーん!」
まだ幼き頃のレオは、母を生まれてすぐになくし父のシシマイの手によってすくすくと育っていた。レオはまだまだ父に甘えたがる年頃だった。
「レオ!迎えに来てくれたのか〜!」
レオの父、シシマイは幼いレオが迎えに来てくれた事にほほえましく思いレオを抱き寄せる。シシマイにとってレオが真珠の様に輝く大切な息子で手塩をかけて育てていた。甘やかし過ぎず、厳し過ぎずといったバランスが難しくて苦難していたが今は大体要領がつかめてきた様子で、周囲からもよい父親と評価されていた。
家に帰る道でレオとシシマイは手をつなぎながら帰っていた。その道中にレオ達は出ると村の村長のカイリューのリュー(あくまで称号であり、本名は不明)と出合う。シシマイは軽く挨拶をして通り過ぎようとしたがそれは阻まれた。
「おお!そうじゃ、そろそろクリスマスじゃぞ。用意は出来ておるか?」
リューはシシマイに準備が出来ているかと尋ねる。シシマイはそれを聞いて「はい」と答える。リューは"leading"の副指令。自分はその組織の"導きの六柱"である。つまり、上司と部下の関係なのだ。
しかし、リューの言う用意はそんな堅苦しい事が関係しているのではない。クリスマスが近い時期に用意するものといえば、サプライズやプレゼント等である。今年はプレゼントを渡したいと思い、渡す物は決めていた。レオがずっと望んでいるものである。
「じゃあの。レオ君もじゃあの」
「じゃあね!」
リューが別れ際にレオに別れの挨拶をするとレオは元気よく返しうきうきとした表情でシシマイに振り向く。そして、こういったのだ。
「プレゼント楽しみだなぁ〜」
レオは期待を寄せた目でシシマイを見る。シシマイは困ったような表情をしながらも「楽しみにしてなよ」と言った。用意できているプレゼントは子供が喜ぶ様なものではなく、あるペンダントだった。
そのペンダントはシシマイがレオの母に対してクリスマスプレゼントとして買ったものである。開くと彼が生まれてすぐに死んでしまった母の写真がある。実はシシマイは彼女が死んだ際に彼女の写真はすべて処理してしまったのだ。悲しみのあまり顔を見たくないから、と言ってだ。
しかし、彼は後に後悔する事になる。何故ならレオは執拗に母の事を聞くようになったからだ。レオに母の事を質問されるのにシシマイは返答に戸惑っていた。
レオは母が死んでしまった事は分かっているので説明は容易いのだが、問題は別にあるのだ。
そう、レオは母の顔が見たいと言ったからである。
それ故にシシマイは困り果ててしまった。自分の事だけを考えて処理してしまったので母の写真はもうない。彼女が使っていたものならあるが写真は無いのだ。せめて一枚だけでも取っておくべきだったとシシマイは後悔したのである。
だから、クリスマスに渡そうと考えていた。
写真は彼女の親から自分と結婚する前のものをくれたので用意は出来ている。
わざわざクリスマスに渡すのはプレゼント代を浮かす為なのであると、レオは一生知る事は無い。
―――クリスマス当日、
「メリッィィイィィクリスマス!!」 村長であるリューがクリスマスの夜にそんな奇声を発しながら冬の空を飛んでいた。村人は大笑いしながらそれぞれのクリスマスを楽しむ。
ある者は村長をばかにしたり、村長が壊れたとのたまい、村長は変態と囁いたり……、これでは駄目村長ではないだろうか。
「レオ!こっちおいで」
シシマイはアルビダと一緒に居るレオに呼び掛けプレゼントを渡す準備をする。レオは待ってましたと言わんばかりにシシマイに駆け寄り、プレゼントを受け取る気でいた。
「プレゼントちょ〜だい!」
レオはシシマイがまだプレゼントのプの字も言ってないのにプレゼントと確信していた。実際そうなのであるが。
「今年はこれだ!じゃ〜ん!!」
シシマイはレオのその反応を待ってましたと言わんばかりにプレゼントを取り出す。それは蒼のペンダントだった。それを見たレオは不思議そうな表情をする。
「これなぁに?」
「実はねほら!」
レオが問いかけるのを見てシシマイはペンダントを開く。そこに映っているのはレオの母の写真。レオはこれ又不思議そうにシシマイに誰なのかと尋ねる。
「この人はねぇ、お母さんだよ」
シシマイは笑顔でレオに説明する。その言葉を聞いてレオは心底驚き、その後は嬉しそうにしていた。
「お父さん、ありがとう!!遊びに行ってくるね!!」
プレゼントを嬉しそうに受け取ったレオは早速首にかけてアルビダのもとへ走った。それを見たシシマイは安堵し、クリスマスを楽しむ事にする。
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―――そうだ、こんな事があったなぁ……。
あの時は嬉しくてたまらなかったけど、暫く立つと身につける事は無くなり大事に自分の部屋に保管していた。
水晶の主として旅に出るとき、忘れられずカバンに入れて旅に出たが戦いが続いて傷がついては嫌なのでつけてはいない。ましてや、今まで忘れていたのだ。
今はまだ付けられないけどこの闘いが終わったらまた使おうかな……。