part1
「父さん……」
俺はなんて無力なんだろうか。
あの時俺は怯えるだけで何にも出来やしなかった。
周りの皆は仕方がないと言って俺を励まそうとした。
あれから七年たった今でもあの出来事は俺の心に深く染みついていた。
当時の俺はまだ六歳。
世間が見たら仕方がないと思うだろうか?
俺は思わない。
現に結果は俺が無力だと示していた。
だから、俺は強くなる。
大切な人を失わないためにも−。
「レ〜〜オっ!」
突然俺を呼ぶ声が聞こえた。
俺は声がした方に顔を向ける。
そこに立っているのは尻尾の先がハートの形に見えるポケモン、ピカチュウだった。
「アルビダじゃないか、どうしたんだよ」
今のアルビダはニコニコとした表情でこっちを見る。
何だろう……、嫌な予感しかしない。
「村長さんが呼んでるよ!!」
そう言ってアルビダは楽しそうにスキップをしながら帰って行った。
全くあいつは何を考えてやがる。
とりあえず村に戻るか……。
ちなみにここはデルトの森と呼ばれている。
この森は広くもなければ小さくもない感じだった。
特に変わった森ではない。
しかし、
「ん?なんだありゃ……」
俺は特に変わったものがない森で謎の丸いものを拾った。
それはとても綺麗な蒼色の水晶だった。
きれいな水晶だな、こりゃ。
こんなのなかなか見ないし持ち帰っちゃうか!
俺は水晶を拾い上げ持ってきていたカバンにしまう。
俺は水晶が入って重くなったカバンを背負い、歩き始めた。
村まではそう遠くはない。
俺は全速力で足を動かし確実に村へと近づいて行った。
道中、村の住人に何人か会い軽く挨拶をしながら去って行った。
☆
「遅いわね……」
レオは何をしているのかしら?
女の子を待たせるなんてひどいわね。
「まぁ、そう気にするでない」
そう言い放って出てきたのは大きな体つきをしたカイリューだった。
「でも、村長。来るのが遅すぎません?」
私は村長に同意を求めるような発言をする。
それに村長は「まだ君が来てから5分だよ」と呟く。
これだから男は……。
私は心の中でそう呟く。
とりあえず私は気長に待つことにした。
だが、私がそこまでに至る心配はいらなかった。
「遅くなってすいません!!」
私は声が聞こえてきた方に振り向くとレオが立っていた。
☆
とりあえず、着いたな。
なんだかアルビダが鬼のような形相で待っていた。
「お主ら旅に出ろ」