赤い髪のやつに突き飛ばされたので一生根に持つことにした
1階から自分を呼ぶ声がする。しかし生憎と私は二度寝という至福の時間を過ごしているので応えてやる気は、ない。ないったらない。私は満足するまで寝ると決めた。
「いつまで寝てるの!もう昼よ!」
「じゃあ夕方まで寝る」
「なにがじゃあよさっさと起きなさい!」
意外と近くで聞こえた声に驚く暇もなく、私の掛け布団が奪われてしまった。
「あああちょっともう何してくれちゃってんすかー!」
私の呼び止める声も虚しく、我が家の大王様母上は掛け布団を干しに行ってしまわれた。恐らく後で敷布団も持ってかれるので、寝床がないなら二度寝もできないということで起きることにした。
カーテンを開けてみると、本日は快晴。
「ムカツクくらい晴天だなぁ。太陽が登ってこなければ私はまだまだ寝れていたのかと思うと腹が立つ」
理不尽な怒りだと思うだろうけど、これで私がどれだけ寝たいのかを察してほしい。
・・・
適当に着替えを済ませてリビングに降りると、ちょうど私のかわいい掛け布団ちゃんを憎き太陽の下に晒し上げ終えたであろうお母さんがベランダから戻ってきた。
「そういえばフウカ、あなたに伝言があるんだけど」
「へぇ、誰から?」
「お隣のウツギ博士。あなたに頼み事があるんだって」
「お使いと見た」
というわけで、とりあえずウツギ博士の研究所へと行くことにした。お小遣い貰えるかな。
・・・
「よーし博士んとこいくグッフウ!!?」
家を飛び出し意気込んだところで腹部への衝撃。女子らしからぬ声が出た。
「ててて…いきなりなんなんだよ…」
『おはようフウカ!かまって!』
「かまわん私は忙しい!ご主人のところへ帰りなさい!」
目が合うやいなやかまえと言ってきたのは、友人であるヒビキのマリルだった。まさかこんな、腹部にタックルを仕掛けてくるような子だとは思わなかったのでびっくりだ。
『だってヒビキ、葉っぱで冠作るのに夢中なんだもん』
「女の子かアイツは」
『だから私をかまうがよいぞフウカ!』
「だから!!かまわん!!忙しい!!ゲットバックヒアー!!」
そんな言い合いをしていると、マリルのご主人もといトレーナーのヒビキがやって来た。
「ダメだろマリル、勝手にどっか行ったら!」
『ヒビキが女の子みたいなことしてかまってくれないからだもんかまえかまえー!』
「えっ何ちょっと、顔押し付けてグリグリするのやめて、くすぐったい!」
イチャついているヒビキとマリルを放置して、研究所へと向かうことにした。末永く爆発してろ!
・・・
研究所に入ろうとすると、赤いものが見えた。不審に思って寄ってみると、それは男の子だった。
こちらには気付いていないらしく、「ここが有名なウツギ博士の研究所…」などとぶつくさ言っている。
「おーい、そこのキミ、覗きかね?ストーカーかね?」
「なっ、うわっ!?」
見つからない自信でもあったのか、相当びっくりしていた。いやごめんバレバレ。
「なんだよお前、あっち行けよ!」
「わっ…!?」
バレバレだよー馬鹿じゃねーのーなどと思っていると突き飛ばされた。
「あいったたた…」
覗き見している奴のくせにいっちょ前に人を突き飛ばして逆上してみせるとは如何なものか。
めちゃくちゃ頭にきたので一生根に持つことにした。