やりのはしら
やりのはしら2
動くわけにはいかないアカギの代わりにサン、マーズ、ジュピターの三人はシロナたちの方へ近づいていく。
いくらかの距離をあけてどちらも立ち止まった。
「シロナさん?」
一番先に口を開いたのはサンだった。
サンに見つめられシロナは表情を強張らせる。
短い間とはいえ一緒に旅をしたサンが今は敵として自分とは全く逆の位置に立っている。最大の壁だった。
「なに?知り合いだったの」
ジュピターはシロナの方をじっと見て、何かを思い出したように言う。
「どっかで見たと思ったらチャンピオンじゃない。それと四天王」
「なぜ知っているの?」
シロナは聞き返した。彼女がチャンピオンであるということはリーグでの不正を防止するため、一部の人間しか知らないはずの情報だった。
「こっちの情報収集力を嘗めないでほしいわね。リーグのデータベースに侵入するくらい簡単なのよ」
シロナと四天王は一瞬たじろいだが、すぐに言い返す。
「チャンピオンとして、シンオウを守るためにあなたたちを止める。どれだけ情報収集に長けていたとしてもそんなこと関係ないわ」
「残念ね、チャンピオンと四天王とジムリーダーごときに負けるくらいこっちも弱くないわ。止められるものなら止めてみなさい」
マーズとジュピターは挑戦的な笑みを浮かべた。
「待ちやがれ!」
馬鹿でかい声がやりのはしらに響いた。
「……ジュン」
こちらに向けて全力で走ってきたのはジュンだった。
一人でやって来たのか服も身体もぼろぼろだった。
「エイチ湖のときのトレーナーじゃない。少しは強くなったのかしら?」
「それを証明してやりに来たんだよっ!」
肩で息をしながらジュンはジュピターの方を睨む。
「リベンジのつもり?いいわ、受けて立つわよ」
ジュピターは戦闘体勢に入っていた。
「……マーズ、ジュピター、私に四天王とチャンピオンの相手をさせて」
サンがじっとシロナと四天王の方を見ながら言った。
「一人でやるつもり?」
サンは黙ってうなずいた。
「ジムリーダーだけは任せる」
「ふーんそういえばチャンピオンと戦いたいって言ってたわね、じゃあチャンピオンと四天王はあんたに任せるわ」
シロナと四天王はこのやり取りに驚いていた。
チャンピオンと四天王を全員同時に相手させることをこうもあっさり許したのだ。まるで負けるはずがないとでも言うように、何も疑うことはしなかった。
そして、今の状態のサンはほとんど誰の言葉も聞かないだろう。
シロナはそう悟った。
(全力でいくしかない)
「ジムリーダーはその子の援護と幹部をお願い」
シロナは四天王の方に向き直った。
「……私たちはサンを倒すわ」
力強くシロナが言うと、全員がうなずいた。


■筆者メッセージ
プロフィールイラスト変えてみました.。o○
限界を感じたよ(´・ω・`)
アリデーハン ( 2014/07/31(木) 00:25 )