やりのはしら
きっかり二時間後にギンガ団は出発した。
時刻は既に真夜中、しかし暗闇のせいで時間感覚が失われた彼らには時刻なんてどうでもよかった。
山頂にたどり着くことだけを考えてひたすら先へ先へと進んでいく。
どれくらい歩いただろうか、不意に通路内に一筋の光が差し込んできた。
岩の割れ目からわずかに差し込む光はか細く、微かだったが夜が明けたことを彼らに知らせる。
さらに進んでいくと、曲がり角が妙にはっきり見えた。
曲がり角の奥から光が差し込んでいる。
先ほどのか細い光とは全く異なる、出口から漏れる光に間違いなかった。
誰かが光だ、と呟く声が聞こえた。安堵のあまり隣の者と顔を見合わせる者もいる。
マーズとジュピターの二人も思わずお互いの顔を見合わせている。
そんな様子に目もくれることなく、アカギは曲がり角を曲がった。
テンガン山の山頂に広がっていたのは巨大な遺跡だった。
何本もの巨大な柱が天に向かって伸びていて、折れた柱は天に向けられた槍のように見える。
「やりのはしら、か。あながち間違いではないようだ」
「やりのはしら?」
「お前に読ませていなかったな。古代の文献に一度だけ書かれていた場所だ。テンガン山山頂、それに準ずる神話の地名のどこかにあるとされた幻の遺跡。やはりここにあったか」
とても不思議な場所だ。
最高峰の山とされるテンガン山の山頂であるにも関わらず、全く寒く感じない。むしろ真冬であるのに春の高原のような爽やかな空気だ。
したっぱや研究員が物珍しそうに遺跡を眺め回している。
アカギはしたっぱに出口を見張るように指示すると、サンと幹部、研究員を連れて遺跡の中心部へと歩を進める。
中心部へ向かうにつれて折れた柱が増えていく。
まるでこの先で何かが暴れたかのように、根元からぼきりと折れた柱もある。
中心部を囲うように立っている柱は全て折れ、一段と鋭く尖っていた。
アカギは中心部に描かれた巨大な模様の廻りをぐるりと回るとある一点で立ち止まった。
アカギは研究員を呼び何かの指示を出し始める。
サンとマーズとジュピターは黙ってその様子を眺めていた。
研究員が厳重に縛って持っていた袋から出てきたのは二本の赤い鎖だった。
その赤色はサンがギンガ団の研究室で見た物体と全く同じ色。あの時は全く定まっていなかった形が出来上がっていた。
「時空の鎖、螺旋を描くように常に横にある存在。世界の基盤を、根本から創り変える」
次々に機材を取り出していき、それを複雑に配置していく。
その時、遠くで何かが崩れる音がした。
「何が起きたの?」
マーズとジュピターが音のした方を見た。
先ほど彼らがやって来た方向、テンガン山の通路の出口の方からだった。
「追い付かれたみたいね」
「しかもやられたのかしら。ずいぶんド派手な登場じゃない」
そうしているうちに人影が中心部に向かって走ってきた。
九人の人影、シロナたちがギンガ団に追い付いた。