その頃
ハンサムたちがテンガン山に到着したのはアカギが壁画を破壊してすぐの頃だった。
テンガン山一帯はギンガ団によって占拠されたようになっていて、テンガン山に向かおうとするハンサムたちを足止めしてくる。
集まることのできたデンジ、マキシ、スモモ、ナタネの四人のジムリーダーと四天王とチャンピオン、ハンサムの選び抜いた国際警察の精鋭たちもしたっぱの多さに苦戦している。
「数だけは多いな」
誰もがそう思っていた。
このままでは時間がかかりすぎる、ハンサムはそう判断した。
「全員作戦4に変更する」
チャンピオン、四天王、ジムリーダーだけでもテンガン山に向かわせる。
「あなた方に全てを任せる」
したっぱを全て倒すのではなく、多少被害を受けようとある一点を集中攻撃し突破する。
ハンサムたちはただがむしゃらに進んでいった。
ハンサムたちに後ろを任せ、シロナたちは進む、テンガン山の入り口にいたしたっぱを倒し、中に突き進む。
狭い空間で戦いづらかったが、それはどちらも同じ、彼らは破壊された壁画の部屋にたどり着いた。
「これは……」
シロナは無惨に破壊された古代の壁画を呆然と見た。
彼女が幼い頃からよく見てきた馴染み深く、美しい壁画。
破壊された壁画の先には真っ暗な穴が空いている。
「何てことを」
キクノも思わず口に手を当てて驚きで目を見開いている。
「早く行かないとまずいんじゃないか?」
真っ先に立ち直ったオーバがそう言って呆然としている全員に活を入れる。
その言葉にはっとしたように破壊された壁画の向こうの通路を見る。
シロナだけがまだ呆然として、オーバの声も聞こえていないようだった。
「シロナさん、行かないと」
リョウもシロナを先に進むよう促した。
「ええ……そうよね」
なおも魂が抜けたような表情をするシロナに、キクノが言う。
「シロナ、チャンピオンのあなたが一番腑抜けにされてどうするの。サンって子を助けるんじゃなかったの?」
この場で最も年長者のキクノが叱りつけるような口調でシロナを責める。
その言葉にシロナは先程とは違って、力強くうなずいた。
「チャンピオンとして。いいえ、一人のポケモントレーナーとして、生まれ育ったこの地方を守る。そうよね、当たり前のことじゃない」
「それでいいのよ。それにあなたは一人じゃない、私たちもいる。このシンオウの全ての人達が応援してくれている。それだけは忘れないで」
シロナが再び力強くうなづくと、皆と一緒に真っ暗な通路に向かって歩き始めた。