テンガン山
前日
数日後、例のモノが完成したという知らせがサンのもとに届いた。
明日にはテンガン山に向けて出発するそうだ。
「もうすぐ終わる……」
サンは誰にともなく呟いた。
アカギがなにをするつもりなのかは気にしていない。目的が達成されればそれでいい。
(アカギが目的を達成させたら、私はなにをすればいいんだろう。目的が達成されれば私がここにいる理由もなくなる)
彼女の膝ではリーフィアがその顔を乗せてサンに頭を撫でられている。
それを羨ましげにグレイシアが同じようにサンの膝に頭を乗せる。
『あなたたちはどうしたい?』
『サンの行くところに着いていくよ。前に言ったみたいに』
『サンと一緒にいれればぼくらはそれでいいよ』
サンに頭を撫でられ満足げな表情でグレイシアとリーフィアは言う。
『ぼくらとサンはずっと一体のだよ』
『約束する?』
『約束?』
そういう単語は知っていたが、でも意味をあまり深く考えたことがなかった。
とにかく、守らなくてはいけないもの、そう思っていた。
『ぼくらとサンはずっと一緒、約束だよ』
『ずっと……』
『だから、私たちの前からいなくならないでね』
彼らは無邪気にそう言った。
契約したわけでもないのに、破れない、曖昧だけど固い繋がりにサンは身体のどこかが暖かくなるのを感じた。
(離れたくない)
不意にそんな言葉が現れる。
『ありがとう』
サンは穏やかな笑みを浮かべていた。

アリデーハン ( 2014/07/21(月) 09:29 )