ポケモンリーグ
ジュンと別れたハンサムは223番水道にいた。
223番水道の先には全てのポケモントレーナーが憧れる場所、ポケモンリーグ本部と、シンオウ地方のポケモン連盟本部がある。
一日に数便だけナギサシティから船が出ているが、船に乗るにはリーグ開催時期以外はリーグ関係者とジムバッジを全て集めた人間しか乗ることはできない。
ハンサムは船のデッキから遠くに霞んで見えるポケモンリーグ本部の建物を眺めていた。
到着したハンサムは国際警察の手帳を受付の女性に見せてポケモンリーグ本部に入っていった。
一人の若い職員に案内されながらある部屋の前でハンサムは足を止めた。
いくつも扉はあるが、その扉だけなぜか雰囲気が違う。
ハンサムがノックをすると、中から男のものらしい声が返ってきた。
案内の職員を帰して、ハンサムは部屋に入る。
特に装飾品もない、簡素な部屋では、男性三人と、一人の女性が真ん中置かれた机を囲んで座っていた。
ここにいるのはポケモンリーグの四天王だ。
むしタイプ使いのリョウ、じめんタイプ使いのキクノ、ほのおタイプ使いのオーバ、エスパータイプ使いのゴヨウの四人で構成されている。
ポケモンリーグ予選を制覇したトレーナーだけが挑戦することのできる特別な存在。シンオウの最高峰のトレーナーだ。
そしてその四天王をさらに凌駕するのがチャンピオンで、シンオウ最強のトレーナー。四天王を連続で倒すことのできたトレーナーだけが挑戦することのできる存在である。
ハンサムが入ってきたので、四天王全員がハンサムの方を見た。
「どうも、ハンサムさん。急に僕らに集まっていてほしいだなんて何かあったんですか?」
一番手前に座っていた緑色の髪の青年、リョウがハンサムに尋ねた。
「ええ、我々だけでは解決できないような問題が発生したので、四天王の皆さんに集まっていただきました……ところでチャンピオンはどこに?」
「連盟の理事に呼ばれて少し前に出ていきました。もうじき戻って来ますよ」
四天王の中で唯一の女性であるキクノが口を開いた。
「では先に四天王の皆さんだけでも話をしておきます」
「あなたが来たということはギンガ団絡みの問題ですか?」
読みかけの本を閉じながらゴヨウがハンサムに尋ねる。
「はい、先日の湖の件はご存じですね。そこで湖の三神がギンガ団によって捕らえられました」
「……湖が襲撃されたのは知っていましたが、まさか湖の三神が捕まったのですか?」
全員が驚いてハンサムの方を見た。
「奴らの目的が何なのかはわからないが、捕まったことは確実だ」
「少しもわからないんですか?」
「次に奴等が事を起こすとしたらテンガン山であるということくらいです」
ハンサムはギンガ団の動向を探る内に、現在彼らがテンガン山について重点的に調べている事を知った。
「テンガン山?湖の三神にテンガン山、シンオウ神話と何か関係がありそうですね」
「シンオウ神話ね、ボクはそこら辺あんまり詳しくないんだよなぁ。ゴヨウは何かわかる?」
リョウは横に座っていたゴヨウに聞く。
「私もよくわからない。こういうことはチャンピオンのほうが詳しいだろう」
「戻ってきませんね」
全員が扉の方を見る。一向に開く気配はない。
「それも重要なことなんですが、もうひとつ大きな問題がギンガ団にはあります」
「大きな問題?湖の三神よりでっかい問題があるのか?」
オーバが髪を掻きながら尋ねた。
「あそこの幹部は皆強い」
「それは知ってるよ。何かあるのか?」
「ギンガ団には……」
ちょうどその時に扉が開いた。
ハンサムはいったんそこで言葉を止めて扉の方を見る。
黒いドレスに身を包んだ女性が扉の脇に立っていた。